勇者になった理由3
~勇者クラシア・ラーシア視点~
勇者はラーシア王国が派遣すると私が発言したことで会議は進んでいく。当然、宰相と大臣は頭を抱えていた。
それからはどのような形で勇者を派遣するかという話になった。
「何人規模のパーティを考えているのですか?」
「時期はいつぐらいですか?」
「各国との連携は?」
など、矢継ぎ早に質問が飛び出した。私が答えに窮していたら神聖国ルキシアのカタリナ様が
「ラーシア王国は勇者を派遣するという任務の重要性を本当に理解しているのですか?」
と言ってきた。
さらに傭兵国家ラクスのヘラストが
「なんならうちで、腕利きの傭兵を何人か用意してやろうか?それなりの値段にはなるが」
と言ってきた。
私はヘラストには腹が立っていたので、
「必要ありません。すべてこちらで用意します」
と答えてしまった。
「そういうことなら、勝手にやりな。他の国も援助しないってことで」
そんなか、ドン!!とテーブルを叩く音がして、怒号が響いた。
「寄ってたかって若い娘をいじめやがって!!私があんたらにそんなこと教えた覚えはないよ!!」
「若い娘がやろうって言ってんだから応援してやるのが、大人の役割じゃないのかい?」
学園都市セントラルハイツの代表ウメック・ツダリス女史だ。こちらもスレンダーなハイエルフの美女で学園創設時から代表をしているらしい。会議に参加しているメンバーのほとんどが私を含めて、彼女の教え子だ。
年齢は・・・・ちょっと聞けない。
場は静まり返った。私は先生に感謝した。そして私に優しく
「けどねクラシア。こういう場において、王女で国の代表のあんたが発言したことは取り消せないよ。王女なんだから常に冷静でなくちゃいけないんだよ。まあ、やっちまったものは仕方ないからしっかりやんなさい。困ったことがあったら遠慮なく言いなさい」
私は大変なことをしてしまったと思った。
それから会議は終了した。恒例の会議後の晩餐会は欠席させてもらい、急いで帰国の途に就いた。
それから、王宮で国王であるお父様にことの顛末を報告した。
「ヘラストは悪い奴じゃないんだ。口が悪いだけだ。いつも晩餐会で飲むのを楽しみにしているんだ。儂が急遽キャンセルしたんで、腹が立って、八つ当たりしただけだろう。ほっとけばよかったのに」
とまず言われた。
それから宰相からの小言が続く。
「勇者は誰にするんですか?勇者を雇うとなると莫大な資金が必要になりますぞ。それに勇者パーティのメンバーは各国が何人か用意してくれるのが通例なのにそれをすべて自国で賄うなんて、一体どれだけ資金が必要かお分かりですか?」
見積書も見せられた。とんでもない額だった。
なので、各国ともにできれば勇者を出したくない。
オルマン帝国は国力に余裕があり、なによりも名誉を重んじる(平たく言えば見栄っ張り)気質なので、勇者の派遣率が高いらしい。しかし前回勇者がやらかした関係でしばらく勇者を派遣することは各国が許さないらしい。
「これで勇者を派遣するメリットがあればいいのですが、名誉以外にほとんどありません。いったいあなたは王女として、国王陛下の後継者としての自覚はおありなのですか?執務をほったらかして剣術や魔法にうつつを抜かし・・・・・」
宰相の小言は続く。
「クラシアよ。それでどうするのだ?」
お父様が質問してきた。
「私が勇者になる!!」