発表
~勇者クラシア・ラーシア視点~
「あのシスターフローレンス。どういうことでしょうか?家族を呼んできて欲しいと言ったのは?」
「こういうおめでたいことは、ご家族で分かち合ったほうがいいと思いましたので・・・」
(私が妊娠・・・。どうしよう?かなりヤバイ)
沈黙して俯いているとルナが沈黙に耐えかねて、質問してきた。
「あの・・・父親は誰なの?」
また一同が沈黙する。
「ぼ、僕です」
「「ロイが!!」」
一同驚いている。
「みんな心配かけてごめんなさい。こうなった経緯についてキチンと説明するわ・・・」
そして、私はみんなに今回このようね結果になってしまったことについて話始める。
あれは、ラーシア王国から帰還してすぐだった。ラーシア王国から珍しい果物が手に入ったので、ロイが新作のお菓子を作った。お裾分けで、レイ兄やルナに持って行ってあげようと教会を訪ねたところ、レイ兄とルナが抱き合ってキスをしていた。
ショックだった。前から二人は仲が良く、もしやそんな関係かもしれないとは思っていたが、実際に見てしまうと、何ともいえない気持ちになってしまう。昔、レイ兄を好きかもしれないと思う時期もあったが、よく考えてみると兄のような存在だったと思う。なので、二人を応援したい気持ちだったが、このタイミングで出て行くのは気が引ける。
結局そのときはロイの新作のお菓子は渡せずに領主館に戻った。そして、夜になり、約束していたロイとのモフモフタイムになった。ロイのモフモフは本当に気持ちがいい。その日は昼間にレイ兄とルナのキスシーンを見てしまったこともあり、何の気なしにロイに言ってしまった。
「今日はモフモフだけじゃなく、ペロペロもして欲しいニャ」
「本当にいいんですか?まあ、やれと言われればやりますけど・・・」
ロイが恐る恐るペロペロを始める。そして、ロイの舌が私の唇に触れてしまった。その時体中に電気のような感覚が走った。そこからは、もう理性が吹っ飛んでしまった。気が付くとロイを押し倒して、馬乗りになってしまった。
そして気が付くと朝になっていたのだ。ロイは私の隣で疲れ果てて、寝ていた。しばらくしてロイも目を覚ます。
「ろ、ロイ・・・ごめん・・これから・・・」
「謝らないでください。こういうことになってしまってから言うのも何ですが、僕と付き合ってください」
そんな感じで交際がスタートした。
「だいたいは分かったよ」
「というか、ルナ達もそんな感じだったんだな・・・」
グリエラとガイエルに対して、ルナが答える。
「そんなこと言ったら、グリエラとガイエルだって・・・・」
「最近、クラシアはロイに訓練でひどく痛めつけていたが、あれは喧嘩でもしていたのか?」
「レイ!!クラシアにそんなつもりはありません。僕が頼んだんです。強くなりたかったのもありますが、訓練の後に『辛く当たって、ロイは私のことを嫌いになってないニャ?』なんて言って甘えてくるんで、堪りませんよ。それにベットの上でも激しかったり、猫のように甘えてきたりで、もうメロメロです」
みんな赤面している。
「ロイ!!余計なことは言わなくていいから・・・」
「す、すいません」
しばらく沈黙が続く中、レミナ書記官が口を開く。
「甘い雰囲気の中で申し訳ありませんが、今後の方針はどうなさいますか?ノーザニア王国や魔国デリライト、ラーシア王国、それに龍神様への報告や対応を指示してください。素直に喜びたいところではありますが、ロイは一応ノーザニア王国の所属で、下手をすれば国際問題になるかもしれません」
まさにそのとおりだ。我ながら、浅はかなことをしたと思う。
レミナ書記官の強い口調にフォローを入れるようにゴブル管理官が口を開く。
「魔国デリライトとしましては、大丈夫だと思います。ディアス王太子夫妻を筆頭に理解もありますし、ニューポートの運営がしっかりできていれば、問題は無いものと思われます。ただ、報告はしないといけませんので・・・多分、かなり驚かれるでしょう」
「ギルマスやヘンリーさんにも伝えないといけないな。クラシアの体調が心配ではあるが、領主としての責任もあるし・・・」
レイ兄が優しく声を掛けてくれた。
「体調は大丈夫です。ゴブル管理官、レミナ書記官は残ってください。それとギルマスとヘンリーさんを呼び出してください。後の方は下がって結構です。それと今回の件は、指示があるまで、口外しないようにしてください。方針が決まりましたら正式に発表しますので」
でも本当に大変なことになってしまった。今後、いろんな人に迷惑を掛けてしまうだろう。本当に情けない。
~総務大臣アンヌ・ロータス視点~
ここしばらくは順調だった。心配していた魔勇者関係も上手くいき、新しい魔勇者パーティーを受け入れることも決まった。今回の魔勇者は魔国デリライトの軍関係の方だ。人格や実力に問題はないが、アルテミス王女にライバル意識を燃やしている点が少し気になるところだろうか。
それと決戦については、セントラルハイツ学園と魔王学院の学生同士の交流戦をすることで、話が進んでいる。上手くいけば、こちらはこちらで、定期開催をすればいいのではと思っている。クロスポートもかなり喜ぶだろう。
最近のクラシア様の勇者パーティーの活動については、レミナ書記官から定期的に報告を受けるのみだ。ニューポートは順調に発展しており、それに目を付けた財務大臣が、仕事が増えると言って、あれだけ開発を嫌がっていたのに、さも自分の功績だと言わんばかりにしゃしゃり出てきて・・・殺す!!・・・いや、落ち着こう。仕事が減るのはいいことだ。
そんなとき、レミナ書記官から緊急の報告があった。衝撃の内容だった。これは私では対処できないと思い、ベルク宰相に即報した。
「これはヤバいやつだ・・・陛下にも言わないと・・・とりあえず君はレミナ書記官から詳しい経緯を聞き取りをして欲しいのと今後の対応について、案をまとめておいてくれ」
後日、幹部会議で今後の対応について発表があった。財務大臣は「だから儂は反対したんだ」と言って、私に面倒ごとを押し付けようとしてきた。
(本当にこのクソジジイ!!)
「ダッカの奴らはクラシア王女ご懐妊の件でまた、一儲けしようと企んでいるみたいだ。こちらも負けないように頑張ろう!!」
ベルク宰相の言葉で会議は締めくくられた。本当にこんなときでも儲けようと考えるなんて本当に強かだ。
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