幕間 聖女(見習い)はつらいよ!!
~聖女候補フローレンス視点~
報 告
ニューポートに赴任して2年が経過する。当初の想定よりも、信者数は伸びない。理由として、龍神と水龍を信仰している地元民が多くいることが上げられる。ただ、龍神も水龍も宗教としての体をなさず、共存可能で、我が聖母教会の入り込む余地は十分にある。
収支については、治療院や子供向けの学校や魔法教室などの地道な活動が身を結び、協会本部の補助金がなくても十分に運営できている。また、ラーシア王国と海路が確立され、新鮮な果物が輸入できるようになり、果実酒の生産も開始した。売れ行きは好調である。
領主やギルド等の各機関との関係は良好で、大きなトラブルは起きていない。
今後の課題としては、やはり信者の獲得である。これはすぐに増えるものではなく、今後も地道な活動を続けていくしかない。
聖母教会本部への報告書を書き上げて、一息つく。
「シスターフローレンス。そろそろ、お時間です」
一緒にニューポートに派遣されているサキュラから声を掛けられる。彼女は神聖国ルキシアの聖女カタリナ・クレメンス様の側近ドラク・ランドルフ様の実妹で、血のイニシエーションも行える才女だ。聖女候補である私を陰ながら献身的に支えてくれている。
「ああ、もうそんな時間?すぐに準備するわ」
定例の神官会議に出席する。
神官会議とは聖母教会、龍神神殿、水龍神殿の代表者が集まり、情報交換などを行う場である。宗教による対立を無くすためという領主様の意向を受けて、始まった。特に宗教的な対立はない。なぜなら神殿側は宗教として教えを広めようという意思もなく、当教会に対しても、「お好きにどうぞ」という姿勢であるからだ。
また、会議の参加者も龍神神殿からはゴブリン族のクリン、水龍神殿からはリザードマンのリザラ、それに私という、いずれも若い独身女性であるため、会議とは名ばかりのお茶会になってしまっている。
「収支はプラスなんだけど・・信者数が増えなくて、その辺は本部から指摘がありそう・・・」
「それは大変ね。まあ、私達は龍神様のお世話と観光客への対応がメインだから、その苦労はないわ」
私が愚痴をこぼすとクリンが答える。
「信仰する神様的な方が神殿に来るなんて羨ましいわ。聖母様を降臨させることなんてできないし、お告げなんかも聞けないし・・・聖母様が来てくれたら信者なんてすぐ獲得できるのに。このままじゃ聖女候補から外されちゃうわ・・・」
「フローレンス。来たら来たで、けっこう大変よ。うちのリバイネ様なんて、かなり抜けてるところがあって・・・まあそこが可愛いんだけど。この前なんてケーキのクリームを口に付けたまま式典に出ちゃって、姉のリバイア様に怒られるし・・・・水龍様のイメージを保つのも苦労するわよ」
リザラの意見にクリンも「分かるわ」と相槌を打つ。
(みんな、大変なんだな・・・・)
「あっ!!今日は海兵の訓練日だったわ。もう行かなくちゃ。ところで今日の議事録は誰が作るんだっけ?」
「聖母教会の当番だから私が作るわ。「治療師の派遣状況の報告」くらいにして適当に書いておくから」
「いつもありがとうフローレンス。治療師で思い出したけど、レイモンドさんて、凄くカッコいいよね。こっちに多めに回してくれない?」
そんな会話の中、会議(女子会?)は無事終了した。こんな緩い感じで本当にいいんだろうか?そう思って会議でも話題に上がったレイモンドさんに相談したことがある。親身になって聞いてもらった。
「神官同士が仲良くするのが目的だからね。領主様も分かっていると思うし、このまま良好な関係をお互い築いていければいいと思うけど」
そんな感じで、色々と相談に乗ってくれる。
もしかして、レイモンドさんは私のことが・・・・駄目だ。変な妄想をしてしまっていた。
それはそうとあのルナって女はなんなの。シスターでもないのに教会の関係者みたいな顔して、レイモンドさんにべったりして・・・・学校や魔法教室の運営には、かなりお世話になっているし・・・ああ・・へんな妄想が続く。
もう寝よう。
なかなか寝付けない。最近買ったレイモンド人形でちょっと自分を慰めてから寝ようか・・・
しばらく集中していたら声がした。
「シスターフローレンス!!何をやっているんですか?」
サキュラだ。見られてしまった。
死にたい・・・
~サキュラ・ランドルフ視点~
私は聖女候補のフローレンスと一緒にニューポートに派遣されている。理由はフローレンスが聖女として相応しいかどうかを見極めるためだ。今のところ、地元のゴブリンや魔族、獣人やエルフ達とも上手くやっているし、問題はなさそうだ。
懸念事項としては、少し真面目過ぎるところだろうか。聖女となれば、きれいごとだけでは済まないことが多々ある。私達吸血族との関係においてもそうだ。その辺が解決できれば、聖女として十分にやっていけるだろう。
兄のドラクは「早く引退してカタリナと一緒に田舎で暮らしたい」と常々言っている。私のほうは兄からの引継ぎは終えている。
何とかして、吸血族との関係を理解してもらえないかと思っていたところ、絶好の機会に遭遇した。
フローレンスが自分で自分を慰めていたところに出くわした。ここぞとばかりに攻め立てる。
それからしばらくして、吸血族との関係についてもすんなりと受け入れてくれた。まあ、あれだけ快楽を与えれば私の虜になるだろう。ただ、毎晩求めてくるのはさすがに疲れる。
以前兄が部下たちに自慢していたのを思い出した。
「処女の血が一番だと思っている時点でまだまだだな。もっと旨いものがあるのに」
今度、兄に会ったら自慢してやろう。
「絶頂直後の処女の血は最高だ」
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