表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
179/186

ラーシア王国

~勇者クラシア・ラーシア視点~


「私もそろそろ、そういう時期だと思っていたんだ。ラーシア王国は閉鎖的で、他国との交流もあまりない。立地的に魔族領とは接しておらず、人族の他の国とも現在は良好な関係を築いているので特に問題はないが、将来関係が悪化したときのことを考えると積極的に交易をして国力を高めることが・・・」


お父様が話始める。

お父様も新しく港湾都市を築くことは必要で、トルキオさん達が出資してくれることをありがたく思っていたらしい。しかし、国内では反対派も多くいて、その関係で王としての立場上、反対の立場を取らざるを得なかったみたいだ。


「クラシアのおかげで港建設は進めていけそうだ」


お父様によるとニューポートの開発が進んでいることで、ラーシア王国からの移民も増え、ラーシア王国からニューポートまでの移動時間が短縮されれば喜ぶ者は多いとのことであった。


「まだ反対しているものも少なからずいるが、無視していいレベルだ。それと是非、港建設の賛成に回ってして欲しい人物がいるので説得して欲しい」


その人物とはクラーラ・ラドクリフ公爵婦人だ。

クラーラ婦人は私達と同じ獅子族で、ラーシア王国で一番の有力貴族だ。現在のところ、特に興味がないという立場だが、賛成に回ってくれると本当に心強い。

それにブランの原料となる良質なリンゴの産地であるため、是非とも協力を取り付けたい。欲を言えば、ラドクリフ領から港までの街道を整備してもらえれば、かなり助かる。


「もちろん説得に行かせてもらいます。あそこには他にも行きたい場所があるので・・・」



作戦を練りつつ、先触れを出し、3日後にラドクリフ公爵領に向かうことになった。

公爵領に着くとラドクリフ公爵夫妻が迎えてくれた。因みに旦那さんが領主だが、婿養子でクラーラ婦人の尻に轢かれている。旦那さんは猫獣人で、ちょうどお父様とお母様と逆の感じだ。

公爵領の運営などは実質的にクラーラ婦人が行っている。


「クラシアちゃん大きくなって!!早くこっちに来て!!」


いきなりモフモフされた。歓迎はしてくれているようだ。

私はクラーラ婦人に事の次第を説明し、そして、港建設の協力をお願いした。

このときにラドクリフ領で取れたリンゴで作ったブランを手渡した。


「うちのリンゴがこんなに美味しいお酒になるとは思わなかったわ」


これにはクラーラ婦人も絶賛してくれた。


「リンゴを輸出することについては反対することもないし、港の建設も特に反対する理由はないわ。でも、積極的に港建設に携わるのはちょっと気が引けるわ・・・領民も今の生活が続けばそれでいいと思ってるし、リンゴの売り上げが増えるのは嬉しいけど・・・」


何とも歯切れが悪い。

言いたいことは分かる。今のままでも十分やっていけるのにリスクを冒してまで開発に協力する必要性はないということだろう。


「50年100年単位で考えれば開発に協力するほうが、ラーシア王国のためになるというのは、よく分かるんだけどね」


今回は無理に協力を求めず、反対されなかっただけで良しとしてもいいかと思う。


「分かりました。もし気が変わりましたらすぐに言ってきてくださいね。それで話は変わるのですが、例の場所に行きたいのですが・・・・」


例の場所と言うのは「モフモフ天国」のことだ。阿修羅&ゴブリンズの報告書によるとテトラシティに「モフモフ天国」に良く似たダンジョンがで出現したとあったので、久しぶりに本家に行きたくなったのだ。獣人はモフモフ好きが多い。かく言う私もその一人だ。

当然、一角兎ホーンラビット用にニンジンを持ってきている。


「そうね。せっかくだから私も行くわ。月に何回かは癒されに行ってるのよ」


クラーラ婦人も同行することに決まった。道中に「モフモフ天国」がダンジョンではないかという話になった。


「ダンジョンだと国の直轄管理になってしまうわね。それは困るんだけど・・・・」


そんな話をしながら目的地に着いた。

洞窟のような岩間を抜けると草原が広がっていて、多数のモフモフした可愛らしい魔物が寝転がっていたり、餌を食べたりしていた。

モフモフ天国は入口で入場料を支払うシステムで、中にはカフェや最近できた宿泊施設が併設されている。ここに来たことがあるのはクラーラ婦人を除いて、私とルナだけだったので、私が案内役を買って出た。


「まずは、好きなエリアに行って「推しモフ」を見付けてね!!」


みんなに指示をする。

自分に懐いてくれるモフモフの魔物と仲良くなれば、カフェまで着いてきてくれる。そこで、モフモフしながらお茶を楽しむのだ。


私は迷わず、一角兎ホーンラビットのエリアに向かった。

(あの娘元気かな?)


私には子供の頃に仲良くなった一角兎ホーンラビットがいる。その一角兎ホーンラビットは角が折れており、誰にも相手にされていなかった。子供のときの私が可哀そうになって、声を掛けたのが仲良くなったきっかけだ。群れからもいじめられていたように思う。

元気であって欲しいと心から願っていた。


「あっ!!ミミちゃん!!」


私はその一角兎ホーンラビットをミミと名付けて可愛がっていた。記憶より一回り以上大きくなっていたが間違いない。ミミちゃんも気付いたみたいでこちらに嬉しそうに近寄って来た。

ミミちゃんの周りにはミミちゃんの番の一角兎ホーンラビットとミミちゃんの子供と思われる一角兎ホーンラビットがいた。


「ミミちゃん・・大きくなって・・・」


感慨深い。

言葉は通じないが心は通じ合っている。持参したニンジンをあげると更に嬉しそうにすり寄ってきた。

ひとしきりモフモフした後は、ミミちゃん一家をカフェに誘導した。

一緒にロイは番や子供に懐かれていて、嬉しそうにしていた。


しばらく、ロイと私とミミちゃん一家とでお茶をしながらモフモフしていたところにみんなが帰ってきた。ルナとレイ兄は黒羊ブラックシープ、ガイエルとグリエラはタヌキみたいな魔物を連れて帰って来た。

一番驚いたのはシクスさんとゴブル管理官がフワフワ熊を連れて来たことだった。


「こいつの母親が熊獣人なので・・・テトラシティで、はまったみたいです」


ゴブル管理官が答える。

それからはそれぞれの推しモフに囲まれながら楽しい時間を過ごした。


しばらくして、ガチャ―ンと物が落ちる音が聞こえた。ウエイトレスがお茶をこぼしたみたいだ。


あれ?あのウエイトレスは?


そのウエイトレスは意外な人物だった。

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ