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ダッカへ

~勇者クラシア・ラーシア視点~


「これほどの味だとは思いませんでした。これなら王族に献上してもいい品です」


「このフルーティーな香りなら水や炭酸で割ればエルフや女性にも人気が出るな」


トルキオさんもヘラストさんもブランの味には衝撃を受けていた。

ここで私はすかさず、条件を提示する。ラーシア王国とニューポートの直接航路の協力を依頼する。見返りにトルキオさんには格安で、ブランを定期的に決まった量を納品すること、ヘラストさんには水夫や護衛を雇うことを約束し、さらなる融資と大型船のリースも頼むつもりだった。


「条件は分かりましたが、それならバッカンテさんをダッカに引き抜くほうが安く済むのでは?」


(相手に準備する時間を与えないためにすぐにダッカに乗り込んできたのに、鋭い質問をしてくるな)


「それは無理ですね。この味を出すには魔族領の気候がカギになります。詳しいことは言えないですが」


「そうですか。そういうことにしておきましょう。それでは具体的な話をさせてもらいましょうか」


ここからは激しい交渉になる。そのための準備もしっかりしてきた。トルキオさん達は時間もないし、交渉決裂なら他の商会を利用してもいいというブラフも用意している。

しかし、予想に反して交渉はスムーズに進みこちらの要求はほとんどが通ってしまった。

ここまで順調に進むと逆に怖くなる。何か別の思惑があるのでは?


その日は正式な締結は止めておいた。ギルマスのパトリシア婦人を交えて協議する。協議するメンバーは私、ギルマス、ロイ、ゴブル管理官、レミナ書記官、ケケル会長で行った。因みに他の勇者パーティーはダッカ観光をしている。それとここまで帆船の操縦などをしてくれていたリザド将軍とリザラはヘラストさんと傭兵や水夫のことで具体的に別個で協議してもらっている。


「あまりにもスムーズに行き過ぎて何か裏があるのではと勘ぐってしまいます」


「多分心配はないと思うよ。私の仕入れた情報によると・・・・」


ギルマスが入手した情報を話してくれた。

トルキオさんの真の目的はラーシア王国に大規模な港湾都市を建設することにあった。過去に何度も打診していたが、お父様に断られていたみたいだ。なので、今回のニューポートとラーシア王国の交易路の確立案に乗っかって、大規模な港湾都市の建設を再度持ち掛けようということだった。

それが建設できれば、ブランなんて関係ないぐらい莫大な利益が得られる。今ならダッカ、ニューポート、ラーシア王国と、3つの港を抑えれることができる。


「なるほど・・・そういう事情があったんですね。それなら問題ありません」


「ところで、なぜラーシア王国は港湾都市の開発を拒んでいたんですか?ラーシア王国にとってもいい話だと思うのですが?」


ロイが質問をしてきた。

ロイの疑問も当然だ。私は過去の経緯やラーシア王国の現状を説明した。


「ラーシア王国は、私が言うのもなんだけど、けっこう豊かな国なの。気候は温暖で農業も盛んで、海に面しているから水産資源も豊富に取れるの。国民の8割は獣人で、一口に獣人と言っても各種族ごとの独立意識が強いのよ。その辺はお父様も苦労しているところではあるわ。国民は総じてのんびりした性格で自給自足の村も結構あるのよ」


ここまではラーシア王国の現状だ。


「だから無理に国を発展させて大きな富を得ようとする思いがあまりないの。港を開いたところでその有用性については疑問が持たれ、賛同が得られないのよ。もしかしたら、ダッカよりもラーシア王国のほうが交渉が上手くいかないかもしれないわね」


「まあ今回は、トルキオとヘラストが仲間でレオが敵ってことだな。戦争するわけじゃないが・・・」


「私はラーシア王国の王女ではありますが、ニューポートの領主です。ニューポートの利益を優先する義務があります。いくらお父様といえど、言うべきことは言わないといけませんね」


次の日、ダッカ側とは正式に契約することができた。ここからはいかにしてラーシア王国を説得するかについて、トルキオさんとヘラストさんも交えて会議をすることになった。


私は前日に考えて来た案を提示した。


「ラーシア王国の現状を考えると主に次男や三男など、家を継げない者達の就職先として港の開発をアピールしようと思います。お父様の性格上、国民のためになることであれば耳を傾けてくれるかもしれません」


「レオの性格を考えるといい提案かもしれない。以前話したときは利益のことばかり話したからね」


トルキオさんが答えた。


「他にも策は考えています。なので今回の交渉は私がメインでやらせていただければと思います」


「俺はいいと思うぜ。王女様に頑張ってもらえればいい。俺達じゃ説得できなかったからな」


ヘラストさんをはじめ、みんなが同意してくれた。そこで私は詳しい作戦を話した。

そして細かい調整を終えた私達はラーシア王国に乗り込むことになった。


そしてダッカから船に乗ってラーシア王国の王都ラースまで船で2日の距離を移動する。王都ラースは海に面した都市でそれなりの港はあるが、大規模な交易となると少し手狭になる。なので、計画としては王都の少し南に新たな港湾都市を建設する案が浮上している。

そして今回私がラーシア王国を訪れた理由だが、表向きは勇者としての活動の報告ということにした。初代以来の決戦の勝利で、領地を与えられ、その領地もどんどんと発展してきているので、一区切りがついたということで報告に来たという体だ。

なので、あまり気乗りはしないが、式典や各種イベントに出席しないといけない。


式典をこなした後に身内だけで、食事会をすることになった。

空気も大分和んだところで本題を切り出した。


「お父様。今後のニューポートについて、港湾都市として発展させていこうと思っています。ダッカとはいい話になっており、ラーシア王国も加わってもらい、海路による貿易を発展させていこうと思っております。つきましてはラーシア王国にも新たな港湾都市を築いていただければ助かります。出資していただけるトルキオさんとパトリシア婦人もお連れしました」


「別に構わんよ。私も賛成だ」


(えっ!!そんなにあっさり・・・)


でも、そんなにうまくは話しは進まなかった。

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