新生!!阿修羅&ゴブリンズ5
~ゴブル管理官視点~
悩んでいるリリちゃんに話しかけているとパーティーメンバーがやって来た。カリンが文句を言ってきた。「光の洞窟」でゴブリンの女性に囲まれていたのを未だに根に持っているみたいだった。
「ゴブル君はアルテミスやコリンがいるのにポポル君の彼女にまで手を出すつもり?」
「ち、ち違うよ!!浮かない顔をしていたから、心配で話しかけたんだ」
「ゴブルさんは優しいんですね」
誤解は解けたので、パーティーメンバーと一緒にリリちゃんの話を聞く。
「次に攻略する予定のダンジョンなんですが、初級ダンジョンだとは思うのですが、全く攻略方法がわからないんです。出現するのモフモフした魔物ばっかりなんですが、討伐しようとすると逃げてしまって・・・・それに向こうからは絶対に攻撃してくることはないし、人懐っこい感じでこちらを見てきて、どう対処していいか分からないんです。同僚のダンジョンガイドや母に聞いても分からないし・・・このままではダンジョンガイドとして阿修羅&ゴブリンズを攻略に導けないので、少し自信を無くしていたんですよ」
リリちゃんは真面目な性格だ。若いのに仕事に責任を持っている。そんなことを思いながら話を聞いていたところ、飲み会のときにクラシア王女が話していた内容を思い出した。
あれは、5代目勇者パーティー(アグエラ王太子妃が勇者のパーティー)と一緒に食事会をしたときのことだった。リリちゃんの気がまぎれるかもしれないと思いその話をすることにした。
「参考になるかどうか分からないけど、ニューポートの領主のクラシア王女の故郷のラーシア王国には・・・・」
僕はその時のことを思い出しながら話始めた。
そのときの飲み会で、クラシア王女は、やたらとダンジョンの話をする女剣士に絡まれていた。話題に困ったクラシア王女は故郷のダンジョンの話を始めた。
『私の故郷には「モフモフ天国」と呼ばれる、モフモフした魔物が多くいる牧場のようなところがあるんですよ。主な魔物は一角兎や黒羊、それにフワフワ熊みたいなのがいるんですけど、凄く大人しくて、モフモフさせてくれるんです。そこにはカフェがあったりして、モフモフしながらお茶とか飲めるんですよ。私も子供の頃に何回か行ったことがあるんですが、自分が育てたニンジンを持っていって一角兎にあげたら、すごく懐いてくれて・・・すごく可愛かったなあ・・・・』
(そんなところがあるのか・・・。でもダンジョンの話ではないようだけど・・・)
『それでですね。一時期、「モフモフ天国」はダンジョンか、ダンジョンじゃないかで論争になったことがあったみたいです。それで学者達がもめたみたいです。ダンジョンとなれば国のダンジョン規定に基づいて対処しないといけないんですが、ときの領主が『「モフモフ天国」は「モフモフ天国」だ』と言い張って、ダンジョンではなく「モフモフ天国」という謎の場所として管理することになったのです。まあ国民みんながモフモフ好きなので、特に問題になってないんですけどね』
それに対して女剣士が
『領主様!!それは間違いなくダンジョンですよ!!これから私が詳しく教えてあげましょう』
そう言ったところでシクスの母親のヤックに引き離された。
『領主様ごめんなさいね。ミランダはダンジョンの話になると止まらなくなるからね・・・』
そんな話をした。
「そういえば、シクスもその飲み会、一緒にいたよね?」
「そうですね。ミランダさんがダンジョンというならダンジョンなんでしょう。子供の頃は楽しく聞いていたんですけど、ダンジョンの話ばかりで飽きちゃって・・・・」
シクスとそんな会話をしていたら、カリンがまた文句を言ってきた。
「それとテトラシティのダンジョンと何か関係があるの?」
「だから・・・そんなダンジョンみたいのがあるよって言っただけだよ・・・」
カリンは、最近、僕に対する風当たりが強い。アルテミス王女とコリンを弄んでいるように思っているんだろう。
「ゴブルさん!!ありがとうございます。解決の糸口が見えた気がします。私はこれからギルドに行って少し調べものをしてきます。皆さんはこのまま楽しんでください」
そう言って、リリちゃんはそそくさとその場を立ち去った。
それから3日後、件のダンジョンを攻略することになった。今回は僕もパーティーと同行する。カリン曰く「言い出しっぺが行かないのはどういうこと?」と思ったらしい。
ダンジョンに入るとそこは、一角兎の巣といった感じだった。30匹以上の一角兎が寝そべったいたり、草を食べたりしている。こちらには気付いているようだったが、攻撃してくる気配はない。
「ゴブルさん。例の物を出して下さい」
僕は収納魔法でリリちゃんから指示されていた大量のニンジンを取り出した。そしてそれをパーティーメンバーに配った。パーティーメンバーは恐る恐る一角兎に差し出す。すると一角兎は凄い勢いで近付いてきてニンジンを食べている。
「皆さん。優しくモフモフしてあげてください」
ニンジンを上げながらモフモフを続ける。アルテミス王女も怖がりながらもニンジンをあげて、モフモフしている。なんて愛らしいんだろう。美しいアルテミス王女が可愛らしいウサギをめでる姿はなんとも言えない。これは彫刻か、絵画にすべきことだ。映像記録の魔道具を持ってくればよかったと本当に後悔した。僕もあのウサギみたいになれたらなあ・・・
そんなことを思いながら見ていると1匹の一角兎が僕の足を引っ張ってどこかに連れて行こうとした。僕はその一角兎について行くと草むらがあり、付近を探すと転移スポットが見付かった。
「転移スポットがありました!!」
僕が叫ぶとパーティーメンバーが近寄ってきた。
「ゴブルさんやりましたね。お手柄です」
リリちゃんに褒められた。そして、僕達は転移スポットで転移することになった。転移する僕達を名残惜しそうに一角兎達が見つめていた。
(そんな目で見るなよ)
僕はお礼の意味も込めて、ニンジンを大量に置いてきてあげた。
リリちゃんの話では、このダンジョンで一角兎のステージを突破したパーティーはいないようだった。
僕も多くのダンジョンを攻略したわけではないが、このダンジョンはかなり異質だ。全く戦闘をしていない。次のステージは一体どんなステージなんだろうか?
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