新生!!阿修羅&ゴブリンズ4
~ゴブル管理官視点~
クロスポート冒険者選抜との試合当日、僕は試合には出場しなかった。自分の役割は戦闘ではなく、もっと他にあるはずだと思ったからだ。当日は、クロスポートの運営スタッフについて視察することにした。運営スタッフは各種イベントを盛り上げたり、クロスポートの選抜チームを作るのに予選会を開催するなどをしたらしい。その効果が出たのか、当日は大盛り上がりだった。
「ここだけの話、勝敗の賭け金の儲けが一番大きいんですよ。今回の阿修羅&ゴブリンズは強いと評判んなので、オッズを揃えるのに苦労しましたよ」
仲良くなった運営スタッフが漏らした。オッズを調整するためにクロスポート冒険者選抜を10名にしたのだ。こちらは僕を除く5名なので、倍の人数だ。少し心配だったが、実際に選手を見てみると今の阿修羅&ゴブリンズの敵ではないと判断した。これはダンカン将軍に鍛えられたおかげで、相手の能力を見抜く力はそれなりについていると自負している。
そして、試合が始まった。
一方的な展開だった。前衛は束になって掛かってもアッシュとシクスに歯が立たず、後衛から正確に遠距離攻撃が加えられる。クロスポート選抜は何もさせてもらえずに防戦一方だった。
今回も決戦と同じルールで行われているので、クロスポート選抜は一か八かコアストーンの破壊を狙ってきた。
これも想定済みだったようで、アルテミス王女が特大のパワーショットを相手のコアストーンに打ち込んで勝負が決まった。
「金返せ!!」
「負けるとしても、もう少し頑張れよ!!」
などと観客は怒声を浴びせていた。運営スタッフもこれには青ざめていた。
「次回からどうすればいいんだ?試合にならない・・・」
試合の後も数日はイベントなどに引っ張りだこだった。その合間にギルドでニューポートに興味を持ってもらえるようにPR活動を続けた。好感触だった。
それからクロスポートを出発し、僕達はノーザニア王国に入り、「光の洞窟」に向かうことになった。ここは以前にアンヌ大臣から聞いていた成功しているゴブリン族の里だ。ダンジョンを進みながら、ゴブリンの里まで向かう。
事前に話が通っているみたいで、盛大に歓迎をしてくれた。
ここでは研修がメインだということだ。最弱種族のゴブリンでも、やり方によれば何とかやっていけるし、ここに来て改めて感じたことだが、集団行動はゴブリン族が得意なことのようだ。この特性を生かした戦術や街づくりに生かしたいと思った。
それにニューポートとこの「光の洞窟」のゴブリンで交流を持つのも有益だと考えた。族長のゴブタンさんと会談したところ、その考えに賛成してくれた。ゴブタンさんも若いゴブリン達に外の世界を経験させたいそうだ。因みにゴブタンさんの娘さんはピアース王子の側室になったそうだ。もてる男は違うなと思った。
滞在は3日間だったが有意義な時間を過ごした。出発の前日には盛大に宴を開いてくれた。
そこで僕は現地のゴブリン女子たちに取り囲まれていた。嫁にもらってほしいとのことだった。
(どうして?急にモテ期が来た?)
話を聞いたところ、アルテミス王女とコリンが僕の妻で、この若さで二人も妻がいるのは将来有望だと思って、近付いてきたらしい。
「デリライトのゴブリンとは違う風習があるので、勘弁してやってください。貞操観念が違うので・・・外に出て行く者にはその辺をしっかり教育しないとな・・・」
ゴブタンさんが何とか納めてくれた。
「ゴブル君!!何をニヤニヤ」してるの?本当にもう!!」
コリンにちょっと怒られた。でも誤解だ。
それから、「光の洞窟」を出て、ダンジョン都市であるテトラシティに向かうことになった。モデルコースでは王都のノビスランドに立ち寄ることになっていたけど、みんな忙し身の上なので、省略することになった。
テトラシティへの道中もモデルコースであれば、魔物討伐などの依頼がある町や村などに立ち寄るのだが、今回は時間の都合で必要最低限だけ行った。また、希望者にはエルフとドワーフが共存するエルドワ村へ案内することも検討されているらしい。
その後、ダンジョン都市であるテトラシティに着いた。滞在先はポポル君の故郷の村だった。そこにはポポル君の師匠のマティアスさんの家族も住んでいる。僕も傀儡魔法を教えてもらった縁で仲良くさせてもらっている。
この村は魔族、獣人、人族と様々な種族が共存している村で、ニューポート開発計画もこの村からヒントを得ているとのことだった。主要な収入源はダンジョン関係と人形制作らしい。マティアスさんとポポル君が中心となって興した人形制作事業は大きく発展し、後継者の育成も進んでいるとのことだった。
ここでも僕はパーティーと別行動だった。マティアスさんに傀儡魔法を習うとともにアルテミス王女像を使って、建設作業を手伝っていた。今回はアルテミス王女像に触らせないように対策も取っている。
「むやみに触るとこの像は爆発します!!」
少し過激な脅しをかけておいた。ただ、人形職人からは研究のため触らせてほしいと依頼があったので、渋々了承した。
「これはすごいな!!ポポル君やマティアスさんが本気で作っただけのことはある」
アルテミス王女像が褒められたので、自分のことのように嬉しかった。
しばらくは、そんな生活が続いた。ダンジョン攻略は順調だった。テトラシティは初級から中級のダンジョンが3つと上級のダンジョンが1つあり、定期的にリニューアルされるようだったが、既に阿修羅&ゴブリンズは、3つのダンジョンを攻略しているみたいだった。
今日は上級のダンジョンを攻略した記念にお祝いの宴をすることになっていた。みんなが楽しそうにしているなかで一人だけ辛そうな顔をしている女の子を見付けた。
ポポル君の彼女のリリちゃんだった。僕もリリちゃんやリリちゃんの母親のララさんからダンジョンについて教えてもらっていたので、心配になって声を掛けた。
「実は、攻略方法が全く分からないダンジョンが一つあるんです・・・」
唐突にそう語った。
不思議に思い、僕は詳しく話を聞くことにした。
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