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水龍ダンジョン2

~リザラ・ニュート視点~



クラーケンの調査にあたって、まずは地元民からの聞き取り調査を行った。私と父は直接聞き込みはせずに部下からの報告をまとめる。


「人語を話せるのか・・・交渉の余地はあるかもしれないな」


「そうですねお父様。それに報告を見る限りでは、漁船が壊されることはあっても死者は出ていませんね。それに古い話ですが、難破した漁師を助けたという記録もあります」


「クラシア王女もできれば交渉でなんとかしたいというのが本音だ。まずは交渉できるように対策をしよう」


それからは部下とともにクラーケンの出没状況などを丁寧に調べていった。そして、クラーケンと接触することができた。

初めてクラーケンを見たときは本当にびっくりした。あんな巨大で凄い魔力を持った魔物なんて初めて見た。交渉しようにも恐怖で足がすくむ。

しかし、恐怖を振り切って接触することにした。


「私はリザラ・ニュート。ニューポートの使者です。少しお話をさせてもらえませんか?」


「うるさい!!帰れ!!わ、わ、妾を馬鹿にしに来たのか!!」


最初の接触では会話はできなかった。クラーケンは触手を振り回してきて、乗ってきた漁船を壊された。急いで海に飛び込み、泳いで逃げた。

次の日も、同じように接触したが、結果は同じだった。3度目に接触したときには、ロイ殿が作ったお菓子を持っていった。お菓子で釣る作戦だ。


「今日はこれをお持ちしました。よければどうぞ」


「これは旨い!!あっ・・・もういい帰れ!!」


また触手を振り回す。その日はそれで終了した。次の日、その次の日も同じようにして対応した。お菓子は食べてくれるようにはなっていた。


「ちょっと話をさせてもらえませんか?」


「おまえは妾を恐れないのか?」


「はい。なので、話だけでも・・・」


「もういい!!昔、お前と同じようにして騙してきた奴がいたのだ。一人にしてくれ・・・」


そう言って去って行った。

寂しそうな感じであるし、深い悲しみを背負っているようにも感じた。私としては話し合いで何とかしたいという気持ちがあったが、捕獲する方向で話が進んでしまった。

私は筋が違うとは思いながらもクラシアに個人的に進言した。


「クラシア。なんとか話し合いで何とかならない?絶対に邪悪な魔物ではないと思うの」


「リザラごめんね。領主としてはこれ以上は待てないの。いきなり攻撃したりはしないから、最後に領主として警告はするから・・・」


クラシアの立場はよく分かる。かなりの資金を投入しているし、部隊を維持するにも資金がかかる。でも、何とかしたい。その日の夜、命令違反だとは思いながら、クラーケンと接触した。


「近いうちにあなたに領主様自ら警告にきます。絶対に悪いようにはしないから、キチンと話し合ってください」


「もういい!!こんな姿で生きていても仕方がない。それで死んでもいい。もう、どうでもいいんだ」


やっぱり駄目だった。

クラシアの話では、クラーケンは元々はウォータードラゴンで、理由があってこんな姿になったと教えられていた。治す方法もあるとのことで、武力行使も最小限にするとのことだった。元は龍だった存在に攻撃をさせるのは忍びないと思って、クラシアはリザードマン部隊を攻撃部隊から外してくれていた。


作戦決行の当日となり、クラシアが警告したがクラーケンは聞き入れずに戦闘になってしまった。複雑な心境だったが、任務は任務として割り切り、私は父とともにクラシアの撤退支援を行って、任務は終了となった。その後も戦闘が続き、何とか成功したみたいでクラーケンは呪いを解かれて、元の美しい水龍に戻った。

この姿であれば、みんなから尊敬され、慕われる存在であったのに・・・醜い姿に変えられたばっかりに魔物のような扱いを受けて、本当に可愛そうだ。なんとか、元気になって欲しいと心から願った。



あれから、1月以上たったころに水龍神殿が完成した。龍神様御一家と元はクラーケンのリバイネ様が視察に訪れた。そのときは龍の姿ではなく、人の姿だった。リバイネ様は青い髪に青い目、10歳前後の美少女だった。

(噂には聞いていたけど、人の姿にもなれるんだ。びっくりだ)


そんな驚きの表情で見ていたところ、リバイネ様は私に近寄ってきてこういった


「醜い姿に変えられていたときに、それでも向き合ってくれたのは、そなただけだ。感謝する」


醜い姿になった経緯は教えてもらえなかったが、リバイネ様の話では私の対応には感謝していたらしい。リバイネ様は、元々美しく魔力も強く将来を期待され、チヤホヤされていた存在なのに醜い姿になった途端に手の平を返すようにみんなが離れていった。この地に移り住んでも、現地の住民からは恐れられ、討伐隊が来たことも多々あったみたいだ。

そんな中でも私を含めたニューポートの対応は今までと違い、信じてもいいとも思っていたそうだ。でも、なかなか素直になれなかったらしい。


「妹もこう言ってますので、武力行使に出たことは妹も気にしていません。引き続きよろしくお願いいたします。それと水龍の巫女を立てるなら、あなたにお願いするわ」


姉のリバイネ様から直々に水龍の巫女に選ばれてしまった。具体的にどんなことをするかは分からないが、重責だと思う。断る選択肢はなく、この話を受けることにした。

(ところで、水龍の巫女ってなにするの?)

そう思ったが、聞ける雰囲気でもなかった。


実際の巫女としての活動はリバイネ様のお世話係だった。その他にも仕事はあるが、メインはこれだ。


「リザラ!!姉上が来たらいないって言ってよね。後、お菓子も追加で用意しておいて」


「リバイネ!!また逃げたわね!!今日という今日は許しませんよ」


リバイア様に咥えられてリバイネ様がつれていかれる。遠くからリバイネ様の悲鳴が聞こえてくる。

何でもリバイネ様は、古龍エンシェントドラゴンとしての基本ができていないらしく、姉のリバイア様にしごかれているようだ。

特に長年、海だけで生活していたので、飛行が苦手らしく、厳しい飛行訓練を受けていた。


「式典まで時間がないのよ!!ちゃんと飛べなかったら恥ずかしいでしょ。これならドミティアのほうがまだましよ!!」


その他にも礼儀や戦闘訓練などもあるみたいで、今までの遅れを取り戻すのに苦労している。

しばらくして、リバイネ様がへとへとになって神殿にやってきた。


「今日もよく頑張りましたね。新作のケーキですよ」


「ありがとうリザラ!!私頑張るね」


よく懐いてくれた。私に妹がいたらこんな感じなのかと思う。それに言葉遣いも「妾」とか言わなくなった。本人が言うには周囲に威厳を示そうとして変な言葉遣いをしていたみたいだ。これもリバイア様に注意されていた。


「「妾」とかいつの時代の話ですか?千年以上使われてませんよ。公式の場では「我」にしなさい。普段は普通に話せばいいから・・・」



そしていよいよ、水龍ダンジョンオープンの記念式典が始まる。

私も式典に巫女として参加する。

リバイネ様の努力の甲斐もあり、何とか形になりそうだ。


「わ、わ、我は・・・偉大なるウォータードラゴン、そして、う、う海の・・・」


リバイネ様の挨拶が始まる。


頑張って!!

そう心の中でつぶやきながら、一生懸命に挨拶するリバイネ様を見詰めていた。

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