水龍ダンジョン1
~勇者クラシア・ラーシア視点~
新にダンジョンができるという話になったが、そこから急速に町が発展することになる。龍神様からリバイネ様のダンジョンを作ると言われて1週間もしないうちにトルキオさんとヘラストさんがダッカから大型船5隻を引き連れてやってきた。陸路であれば1週間以上かかるが海路でなら3日とかからない。ダッカとの海路が開通すれば莫大な利益が上がる。だから誰よりも早くこの地にやってきたのだろう。本当に抜け目がない。
連日に渡って会議が行われる。
まず最初はダンジョンの名前を決めることにした。龍神様にも許可を取り、龍神様が最初に作ったダンジョンを「龍神ダンジョン」とした。そういえば、名前を決めてなかった。そして次にできるダンジョンを「水龍ダンジョン」とすることになった。これには特に反対意見はでなかった。
次の議題は、ギルドの運営をどうするかという話になった。通常は商業ギルドと冒険者ギルドは分かれており、ダッカなどの大都市には傭兵ギルドもある。しかしニューポートでは、人員不足などの理由から総合ギルドとして、すべてのギルドを統合して運営している。これからどんどんと発展していくことを考えるとここら辺でしっかりと分けたほうがいいのでは?との意見が出た。
しかし、トルキオさんとヘラストさんの意見は違っていた。
「アンタらはまだこの老体に鞭を打って働けというのかい?本当に無茶をさせるよ」
ギルマスのパトリシア婦人が不満を漏らす。
「これまで順調に行っていたシステムを一気に変えるのはよくないと思います。冒険者が採取した素材の買い取りなどを商業ギルドが直接行うシステムはダッカのほうも見習うところが多くあります。当面はこのままでいいのではないのでしょうか?もちろん増員するスタッフなどはこちらで派遣させてもらいます」
トルキオさんが説明する。
トルキオさんの話だと、利権の関係でよく冒険者ギルドと商業ギルドがもめることがあるそうだ。トルキオさんもヘラストさんもその仲裁で、かなり時間を取られるようだ。しかし、人手不足から実験的に統合してみると意外に上手くいった。それに無駄も省ける。今後、開拓村などでギルドを設立するときは、総合ギルド方式を採用しようとする話まであるそうだ。
「まあ分かったよ。けど、それなりの対価は出しておくれよ」
ギルマスも渋々納得する。
「話は変わるけど、傭兵を雇ってみないか?何かと便利が良いぜ。初回だから安くしておくからさ」
ヘラストさんが傭兵の雇用依頼をしてきた。
ヘラストさんの目的はこれか・・・・いずれは必要になるが、ここで即答するよりは少し間を置いたほうが安く雇用できるかもしれない。
「検討して回答いたします」
「ちっ!!つれないなあ」
そこまでは、まあいい感じで話し合いは進んだが、利権の話になるとギルマスとトルキオさん、ケケル商会長とで、もめ始めた。かなり長くなりそうなので、先に退出した。
何とかいい話でまとまってくれればいいけど・・・・
とにかく疲れた。ロイにモフモフしてもらおう。
3日後、やっと方針が決まった。
トルキオさんが大型船をニューポートとピクシー商会に1隻ずつ貸してくれることになった。リーズ料も良心的だった。その代わりに港関係の一等地は7割方ネリス商会に抑えられた。しばらく、トルキオさんはニューポートに滞在するみたいなので、動静を注視しないといけない。本当に抜け目がないから・・・
~リザラ・ニュート視点~
私はリザラ・ニュート。リザードマンだ。
父はラーシア王国海軍の将軍で、私も兄二人も海軍に所属している。
リザードマンはその容姿から差別的な扱いを受けることがよくある。見た感じトカゲだし、魔物に間違えられることもある。ただラーシア王国は獣人の国で亜人に対する差別がなく、能力に応じた仕事を与えられている。リザードマンは泳ぎが得意で水辺に好んで棲んでいる。私達一族は特に戦闘力も高いので、代々海軍としてラーシア王国に仕えている。
だから、今のラーシア王国には本当に感謝している。
そんなとき父が、家族を集めて話を始めた。
「実は、クラシア王女が統治する魔族領にあるニューポートで古龍にお目通りできるるらしい。儂は引退を早めて、ニューポートに移住しようと思っている」
(お父様!!いきなり凄いことを言いだしたわね)
クラシア王女とは、セントラルハイツ学園の同級生だ。ルナと一緒に従者枠として通わせてもらっていた。勇者パーティーに誘ってもらえると思っていたが、そのとき私は遠征中で、参加できなかった。そんなこともあり、なんとかしてクラシアの役に立ちたいと思い、父に着いてニューポートに行くことに決めた。父がレオナルド王に話をしたところ、了承してくれた。
「娘をしっかり支えてくれ」
と言われ、私も頑張ろうと思った。
それからニューポートに移住して、で初めて、古龍の龍神様を見たときは感動で涙が止まらなかった。古龍はリザードマンにとっては神に近い存在だ。そんな方の近くで住めるなんてと思い、感激していた。
しかし、現実はそんなに甘くなかった。
ニューポートの東の海にはクラーケンという巨大な魔物が住み着いていて、私達の得意な水中活動ができないとのことで、クラーケンの調査という申し訳程度の任務が与えられた。
なんのために父や私は部下を引き連れて来たのだろう?
何も役に立てないなんて・・・・
悔しさでいっぱいだった。
当面は給料を出してくれて、居住地も用意してくれる。レオナルド王には「娘をしっかり支えてくれ」と言われているのに、これではニューポートにただ飯喰らいが増えただけではないか。役に立つどころか、負担を強いることになる。
私と同じように落ち込んでいるリザードマンは多くいたが、父が叱責する。
「皆の気持ちはよく分かる。しかし、与えられた任務をしっかりこなすぞ。我々はラーシア王国でそれなりの地位を与えられている。それは我々の先祖が努力して実力を証明して勝ち取ったものだ。だが、ニューポートでは、我々は新参者で実力を示さなければならない。いきなり来て好待遇が与えられると思うな!!」
その通りだ。私は勘違いしていた。母国では、強くて信頼されているリザードマンなので、私達がニューポートに移住するだけで、喜んでくれると少し天狗になっていたかもしれない。
よし!!頑張ってリザードマンの実力を証明して見せる。
まずは、クラーケンの調査を完璧にこなすぞ!!
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