クラーケン2
~勇者クラシア・ラーシア視点~
交渉は決裂した。すかさずルナに指示を出す。氷魔法で周囲の海水を凍らせて、クラーケンの動きを一時的に封じ込める作戦だ。ルナとスペシャルブラックスのダークさんが魔力切れ寸前まで魔法を使用してクラーケンの周りに氷の壁を展開した。
するとクラーケンは暴れて私に触手で攻撃してきた。これを私は回避して、あらかじめ用意していた小舟に飛び乗った。この小舟はリザド将軍とリザラが水中で動かして運んでくれることになっている。私は二人に指示して捕獲場所の要塞まで戻る。
「なんじゃ!!この氷は!!冷たいぞ。それに固い」
何とか動きを封じれている。次はゴーレムの投入だ。今回のために水中での活動に特化したゴーレムを開発していた。ゴーレムの目的は捕獲用のワイヤーをクラーケンに括りつける役目だ。ポポル君とマティアスさんには水中でゴーレムを動かす訓練をやってもらっていた。その副産物として、多くの海産物が取れたのはよかった。龍神様御一家もご満悦だった。
「ワイヤー設置完了です!!半数以上のゴーレムが大破してます」
ポポル君から通信用の魔道具で報告があった。損害は多かったがなんとか作戦は成功した。
「ダンカン将軍頼みます!!ベッツスパクラブは撤退支援!!」
ダンカン将軍が率いる阿修羅族の部隊とゴブリンの部隊でワイヤーを引っ張って、クラーケンを要塞のある捕獲場所まで連れて行く。これが今回の作戦の肝だ。
「阿修羅族もゴブリンもワイヤーを息を合わせて引くことだけを考えろ!!クラーケンの攻撃は仲間が必ず防いでくれる」
これに阿修羅族とゴブリン達が大声を上げて答えた。
「うわー!!引っ張られる。小癪な人間どもめ!!」
クラーケンはキレて触手や水流ブレスで攻撃してくるが、ベッツ・スパクラブのニールさんとネネさんが結界魔法で上手く防いでいる。しばらく激しい攻撃が続いたところでノンさんから通信の魔道具で報告がきた。
「かなりヤバいです。想定よりも攻撃力が高い。支援をお願いします」
「了解!!グリエラ!!ガイエル!!応援に行って。結界を抜けて来た触手を防げばいいから。ベッツ・スパクラブは水流ブレスだけは防いで!!」
思っていたよりも抵抗が強い。なんとか持っていいる。
「お前ら気合を入れろ!!後もう少しだ」
ダンカン将軍が気合を入れ直す。
予定よりも大幅に時間は掛かったが、ようやく、予定していた捕獲場所までたどり着いた。ここには魔力を吸い取る魔法陣をヘンリーさんが展開してくれている。ここで1時間足止めできれば私達の勝ちとなる予定だ。
「予定どおり、ここからの全体指揮はゴブル管理官に任せます。最初は私達から行くわね。勇者パーティー出動よ!!」
捕獲場所に勇者パーティが向かって足止めをする。水流ブレスを避け、襲ってくる触手を切り落とす。
「何だこりゃ!!切った側から生えてくるぞ」
「本当にキリがない」
グリエラとガイエルが呟く。
「スリングショットではダメージが与えられません。短剣で防御に徹します」
ロイが叫ぶ。
「私もまだ、魔力が回復してないから支援に徹するわ」
ルナも無理なことはしない。なんとか足止めはできているようだ。
「勇者パーティーは撤退!!阿修羅隊とゴブリン隊は前へ」
ゴブル管理官が指示を出す。
まだ余裕がある段階で、早めに交代の指示は絶妙だった。ダンカン将軍に鍛えられているだけはある。
ゴブリン隊と阿修羅隊が包囲して攻撃を仕掛けている。ほとんどダメージが与えられていない。
ヤバい!!ゴブリンが5人吹き飛んだ。
「スペシャルブラックスで回収を!!ゴブリン隊は撤退!!ゴーレムをお願いします」
やはりゴブリンは厳しいか・・・幸い怪我は軽そうだ。
すぐにポポル君とマティアスさんのゴーレムが展開する。こちらは壊されても経費が掛かるだけだから問題ない。
「弓使いは一斉射撃!!誤射してもいいから打ち続けて」
スペシャルブラックスのハンターさん、ベッツ・スパクラブのノンさん、数人のゴブリン弓兵が弓で攻撃する。誤射を気にしないゴーレムとは相性がいい。
「勇者パーティーは大丈夫ですか?」
「大丈夫よ!!交代を指示して」
続いてゴーレムを下げて勇者パーティが参戦する。
そんな攻防がしばらく続いた。
1時間経過した。
「魔力量が予想より多く、1時間では吸い取り切れませんでした。もうしばらく耐えてください」
(本当に!!こっちもギリギリなんだけど・・・)
ゴーレムの残機は残り少なく、阿修羅隊も怪我人が多く出て部隊活動が出来なくなっている。
勇者パーティーもルナは魔力切れで、戦線離脱。ロイは火力不足から怪我人の救護班に回っていた。救護班はローグさんを筆頭に動きの素早いゴブリンで構成されている。
代わりにティアナさんとダンカン将軍に入ってもらっていた。前衛5人、タンク兼回復役1名の火力重視のメンバーだ。バランスは悪いがこの際仕方がない。
触手をどんどんと切り落としていく。だんだんとクラーケンの回復スピードが遅くなっていく。
「もうすぐです。耐えきってください!!」
ヘンリーさんから指示が出る。
「ゴーレムも全部投入してください。何とか耐えましょう」
ゴブル管理官も指示を出す。
ここが踏ん張り所だ。みんな歯を食いしばって耐えている。
しばらくしてクラーケンは動きを止めた。
そして、光に包まれて、どんどんと小さくなっていく。
すると龍神様のご息女のドミティア様位の大きさの美しい青い鱗の龍が現れて、その場に倒れ込んだ。
これって成功?
気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!