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幕間 魔勇者ビジネス2

~ピアース・デリライト視点~



ニューポートでダンジョンを攻略した後、勇者パーティーと決戦を行ったクロスポートに向かった。そこで、今後の行先を考えていたところ、魔族チームで一緒だったアッシュとその上司であるノーザニア王国のアンヌ大臣が接触してきた。要件は初代魔勇者パーティーとなって欲しいというもので、魔勇者制度の説明を受けた。

魔勇者制度は人族との交流や今後魔国デリライトを背負っていくための研修がメインのようであった。特に行く当てのない旅だし、パーティーメンバーと話し合ったところ、この話を受けることにした。活動資金の援助がもらえるというのも受けることにした理由の一つだ。


最初に訪れたのは「光の洞窟」というダンジョンだった。討伐目的ではなく、そこで暮らすゴブリン達から多くを学んでほしいとのことであった。なるほど、これは勉強になる。ゴブタンという「光の洞窟」のゴブリン族の代表から説明を受けた。実際に魔物を狩る様子も見学できた。最弱種族と呼ばれているゴブリンでもここまで戦えるのかと感心した。

国を背負って立つ若い魔族にこの状況を見せれば、意識が変わるに違いない。それとゴブタン殿の娘であるゴブミ、その友人2名をパーティーに加えて欲しいとの申し出があった。私達のパーティーにはサポーターを入れていなかったこともあり、戦闘はあまり期待できないが、料理や荷物運びなどをしてもらう条件でパーティーに加えることにした。


それから、ノーザニア王国の王都であるノビスランドに戻り、伯母のマーラ王妃に挨拶をした。状況を説明したところ、喜んでくれた。次はダンジョン都市のテトラシティという場所らしい。何でも人族の勇者はここでダンジョン攻略しなければ勇者パーティーと認められないみたいだった。

途中指定された町や村で討伐任務をこなしながらテトラシティに向かった。


ここでまず案内されたのは、魔族チームで一緒だったポポル君の故郷の村だった。魔族、獣人、人間が共存している村だった。案内はポポル君の師匠のマティアス殿がしてくれた。この村は過激派という連中に襲撃を受けたそうだ。援助を申し出たが断られた。ノーザニア王国から十分な援助を受けているとのことだった。それでも引き下がらなかったら、マティアス殿から提案を受けた。


「それではダンジョン攻略で得られた素材でみんなで料理して食べましょう。今は肉が取れるダンジョンとキノコが多く取れるダンジョンがあるので」


そこからは本気でダンジョン攻略に取り掛かった。攻略に当たり、マティアス殿の娘のリリ殿をダンジョンガイドとして雇った。なんでもポポル君の彼女らしい。詳しいことは聞けなかったがパーティーメンバーがあれこれ聞いていた。

ダンジョン攻略は順調だった。ダンジョンはいい勉強になると改めて思った。それとダンジョン攻略メンバーにゴブミ以下のゴブリンは参加させなかった。やはり戦闘力が他のメンバーより劣っていたからだ。なので、ゴブリン3人はマティアス殿の家でお手伝いをすることになった。

すべてのダンジョンを攻略して、テトラシティを離れるときには3人のゴブリンは、泣きながら別れを惜しんでいた。

マティアス殿の子供達が懐き、離れるのがつらかったようだ。


次の目的地は、温泉地ベッツだ。

魔勇者パーティーのモデルコースはここで終了となる。最後は有名な温泉地で旅の思い出を作るということだった。のんびりした時間を過ごした。宿泊している宿は高級宿で、決戦にサポートスタッフとして参加したベッツ・スパクラブのノン殿の実家だった。温泉も料理もサービスも素晴らしかった。

ベッツ・スパクラブは向上心の強いパーティーで、私達からも色々と学ぼうとして、教えを請われた。私達も快く指導したり、模擬戦をしたりした。

代わりに私達は都市防衛について指導を受けた。


「この町では実力者のパーティーが常駐しているわけではないので、少ない戦力で魔物を効率的に討伐することを目的にこのような砦をいくつも作っています。マニュアルに沿って防衛を行えば、冒険者ランクがC~D位の者でも救援が来るまで持ちこたえることも十分できます。そのときはこちらの狼煙を上げて危険を知らせるんですが・・・・」


「なるほど、決まった手順を反復訓練すれば、たとえ個人の能力が劣っていても十分戦えるということですね。大変勉強になりました」


「そんなに凄いことをやってるわけではないので・・・・」


ノン殿は少し照れていた。


これで、ノーザニア王国が指定した魔勇者パーティーのモデルコースは終了した。私達の旅はまだ続ける予定だが、一端王都のノビスランドに戻って、報告書を提出しようと思う。





~マーラ・ノーザニア視点~


ピアースが書いた報告書を読んでいる。

ピアースも勉強になったと言ってくれている。特に「光の洞窟」のゴブリンと温泉地ベッツの都市防衛については感銘を受けたみたいだ。これから国を統治していく身としては、参考になるだろうと思っていたが、ピアースもその意を汲んでくれていた。

ピアースの報告書の最後に「魔勇者の選定に当たっては慎重になる必要があり、反人族派閥のような思想の持主は排除したほうがいいのでは?」と記載されていた。

本当はそういう者達にこそ、魔勇者制度を利用してもらいたいのだけど、まだその時期ではなさそうだ。


「アンヌ大臣。収益のほうはどうでしょうか?」


もちろん慈善事業ではないので、収益化が図れるかも重要だ。


「実験的な試みでしたが、十分に利益が上がっています。今回はピアース王子人形の売り上げが、かなりありました」


「そうですか。本当はピアースの個人の人気頼みではなく、どんなパーティでも一定の収益が上げられうように改善が必要ですね」


「そのようにします。次回からはクロスポートでのイベントを企画しようと思います。決戦が今後どのような形で継続していくか分からない状態なので、そのつなぎとして考えています」



「そうよね。決戦の今後か・・・難しい問題で後回しにしていたことを思い出したわ。そちらのほうも考えないとね」


問題は多くあるが、上手くはいっていると思う。

クラシアちゃん達も新天地で頑張っていることだし、私達も頑張っていこう。



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