ダンジョン攻略4
~勇者クラシア・ラーシア視点~
冷静に分析する。ゴブリン達の攻撃で、ミスリルリザードは電撃の魔法でダメージを与えられる。攻撃方法は前足に生えた鋭い爪と尻尾による攻撃、それとミスリルの弾丸を飛ばすことだ。
他にもあるかもしれないが、今分かっていることはこれくらい。ミスリルの弾丸を飛ばす攻撃が一番厄介だが、魔力を溜めなければならず、しばらくなにもできない時間がある。
私は作戦を立て、みんなに指示した。
「ルナ!!全員の武器に電撃の補助魔法を掛けて。それができたら、電撃魔法で牽制して。今後
どんな状況になるか分からないから魔力は温存しておいて」
「グリエラとガイエルはミスリルの弾丸を飛ばされないように接近戦で、絶え間なく攻撃して」
「レイ兄はルナとロイのガードをお願い。グリエラとガイエルにかなり負担がかかるから早めに回復魔法を掛けてあげて」
時間にして約20分、今のところ作戦どおりにいっている。グリエラとガイエルはかなり疲れているが、いい感じだ。
グリエラがハンマーで右の前足の爪を破壊した。
そして、私が後ろに回り込み、渾身の斬撃で尻尾を切り落とした。
よし、これでこのまま押し切れば勝てる。しかし、そんな簡単にはいかなかった。
ミスリルリザードは大きく後ろに飛びのいた。
そしてミスリルの弾丸を乱れ撃ってきた。
そこからが膠着状態だ。
ミスリルの弾丸を撃ち続けることはできず、若干のクールタイムが必要のようだが、クールタイムに近付いて、接近戦をしようとしてもすぐに距離を取られてしまう。そんなことを繰り返している。
相手は自動回復のスキルも持っており、ダンジョンから魔力を供給しているようで、ミスリルの弾丸が尽きることはないだろう。
このままでは今の有利な状況は続かず、逆にこちらの体力と魔力が尽きてしまう。私は決断を迫られた。
奥の手を使うしかないか。ラーシア王家に伝わる秘儀の一つ「スラッシュストライク」。
極限まで、身体能力を高め、武器に魔力を乗せて放つ必殺技。反動でしばらくまともに動けなくなってしまうけど。
「グリエラ!!大斧貸して。壊れたら弁償するから」
「まあいいけど。あれをやるんだな」
「レイ兄は前衛に移って、ルナは結界魔法で自分とロイだけでいいからしばらく防ぎきって」
「この作戦が上手くいかなかったら、躊躇せずに撤退する」
作戦はこうだ。レイ兄を前衛に上げて、グリエラとガイエルとともに盾役になってもらいミスリルの弾丸の中を無理やり進む。できるだけ距離を詰め、クールタイムに入った瞬間に攻撃を開始する。
クールタイムが終わり、作戦を開始した。
ミスリルの弾丸が乱れ飛ぶ中、レオ兄とグリエラはミスリルの盾でガイエルはミスリルのガントレットでミスリルの弾丸を防ぎながら進んでいく。
王宮でいただいた武具が早速役に立っている。私は3人にガードしてもらいながらスラッシュストライクの準備をしつつ、進んでいく。
そして、弾丸が止んだ。クールタイムに入った。
距離は縮めることができた。ここからなら十分に届く。
まず、ガイエルが素早くミスリルリザードの背後に回り込んだ。ミスリルリザードの退路を断つと注意を逸らすのが目的だ。
これは上手くいき、ミスリルリザードは完全にガイエルに注意を集中させた。
それを見計らって、私はレイ兄とグリエラの後ろから飛び出し、大きくジャンプしてミスリルリザードの頭に大斧を振り下ろした。
「喰らえ!!スラッシュストライク!!」
ミスリルリザードは全く反応できず、文字通り真っ二つになった。死亡確認をする必要もなかった。私たちは勝ったんだ!!
グリエラに借りた大斧は粉々に砕け散った。スラッシュストライクに耐えられる武器がほとんどないのが、この技を頻繁に使えない理由の一つだ。
すぐに、かなりの疲労感と倦怠感が襲ってきて、立っているのもやっとという状態になった。まあいいか、ボスも倒したし。
しかし、それが甘かった。周囲を見渡すと囲まれていた。ゴブリン達に・・・・