阿修羅&ゴブリンズの挑戦5
~ゴブル管理官視点~
どうしてこうなった?
なんでアルテミス王女とディアス王太子夫妻が来てるんだ!!
これでは、安易に撤退なんてできないじゃないか。
ダンジョンに入る前に激励で訪れた三名。アグエラ王太子妃殿下の機嫌は非常に悪そうだ。当初の予定では、危なくなったらすぐ撤退して、ダンジョンの傾向を掴みながら攻略するといったものだった。それが大きく崩れてしまった。
「阿修羅&ゴブリンズには期待していますよ。魔族の代表として頑張ってください」
そんなことをアルテミス王女に言われたら、引くに引けなくなる。
ダンジョン攻略のほうは順調だった。罠の解除や戦力分析などは僕が行い、戦闘は他の4人に任せた。
勇者パーティーにも匹敵する前衛と火力は弱いが息の合った連携攻撃を見せる後衛のパーティーはバランスが良く、3か所のエリアボスを倒し、いよいよダンジョンボスに挑むこととなった。
「シクスとアッシュは防具の点検。カリンは矢を補充しておこう。コリンは魔力回復ポーションを飲んでおいて」
回復を済ませた僕達は、キーストーンを壁にはめ込んで、現れた転移スポットに乗った。転移したところに鉱山エリアのような場所に転移された。
ダンジョンボスの本命はミスリルリザードだったが違っていた。高さが5メートル以上ある大きなゴーレムだった。そのゴーレムの体表は光輝く鉱石で覆われていた。もしかしてミスリルか?
予想外の敵が現れてしまった。
こういうときこそ落ち着こう。
ただ、偶然かもしれないが、巨大ゴーレムとは模擬戦で戦ったことがある。ポポル君とマティアスさんが面白半分で作ったものをシクスとアッシュが見て、面白そうなので模擬戦をしようということになった。巨大ゴーレムはかなり魔力を使うみたいだったので、二人がかりで動かしていた。そのときの模擬戦を思い出しながら、僕はパーティーメンバーに指示を出す。
「カリン、コリン遠距離攻撃で様子を見て!!」
カリンが弓でコリンが魔法で攻撃をする。
「ゴブル君、ごめん。私達の火力では傷一つ付けられないわ」
「シクス、アッシュ!!近接攻撃だ」
「すごいパワーだ」
「俺達でもパワー負けしそうだ」
苦戦している。何とかしなくては・・・
分析すると全身はミスリルで覆われている。パワーと耐久力に特化していて、スピードはかなり遅い。今のところミスリルの弾丸は撃ってこないでいる。同じミスリル系の魔物のミスリルリザードやミスリルワイバーンは定期的に撃ってくるのにこのミスリルゴーレムは、なぜ撃ってこないのだろうか?その辺に攻略のヒントがあるかもしれない。
模擬戦のことを思い出してみる。ポポル君とマティアスさんでもこれくらい大きなゴーレムを扱うことは難しいらしく、大きさの割に重量はそれ程でもなかった。
「師匠。結局は軽量化するから張りぼてになりますね。実用化は難しいかもしれません」
「そうだな。男のロマンが詰まっていたんだが・・・」
ポポル君とポポル君の師匠のマティアスさんの会話を思い出す。少し試してみよう。
「アッシュ、シクス!!二人で体当たりできるか?」
「「了解!!」」
アッシュとシクスがミスリルゴーレムに体当たりを喰らわせた。なんとミスリルゴーレムは吹っ飛んだ。
「以外に軽いな」
アッシュが呟く。
「カリン、コリンはパワー重視で攻撃してくれ」
弓と魔法で攻撃を加えていく。
あれ?すぐに再生したけど、一瞬ミスリルが剥がれたように見えた。そういうことか!!
ミスリルゴーレムは張りぼてだ。大きさの割に重量が軽いことが証明している。ミスリルの弾丸も撃たないのではなく撃てないのだ。
ミスリルの装甲を剥がして、中身を攻撃できれば十分勝てる。後はどうやればいいかだ。高火力の攻撃ができるメンバーが3人以上いれば討伐は簡単だろう。勇者パーティーなら余裕だと思う。
ただ僕達のパーティーは火力が足りていない。
もうあれをやるしかないか。できればというか、絶対やりたくはなかった。でもやるしかない。
「みんな、奥の手を出す。それでミスリルの装甲が剥がれたらシクスとアッシュで決めてくれ!!」
みんなも了承してくれた。僕はカリンとコリンに指示してワイヤー弾を撃たせて、ミスリルゴーレムの動きを止めた。そしてアイテムボックスから等身大のアルテミス人形を取り出した。この人形には大量に爆発する魔石を仕込んでいる。心の中で「アルテミス王女。お許しください」とつぶやきながら人形をミスリルゴーレムに接近させ、頭部に抱き着かせて起爆した。
ドーンという爆発音の後に頭部の装甲が剥がれたようだ。
「アッシュ、シクス!!後は任せた」
アッシュとシクスはミスリルゴーレムの両腕をそれぞれ掴んで持ち上げ、剝き出しの頭部を地面に打ち付けた。
「「阿修羅ドライバー」」
ミスリルゴーレムの頭部は潰れ、しばらくしてミスリルゴーレムは消滅した。
僕達はダンジョン攻略に成功したのだ。
戦いが終わり、僕は粉々になったアルテミス王女人形を見つめていた。やっぱり我慢できなかった。ショックで気絶してしまった。
気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!