大帝国の誇り4
~勇者クラシア・ラーシア視点~
オルマン帝国の部隊がニューポートに来て2週間が経過した。
ダンジョン攻略は順調で2組のパーティーがダンジョン攻略に成功していた。嬉しいことにロイの兄であるモンドさんも攻略パーティーに名を連ねていた。そのとき個人的にロイとモンドさんと3人で食事をしたのだが、
「これで俺もロイに並んだな。龍の鱗は実家に送って飾ってもらうよ」
と言って嬉しそうだった。
そんなこともあり、今日はギルド支部にある帝国軍部隊の作戦本部に視察にきている。ギルド支部の一室を借り切っているみたいだった。ギルマスは
「割高な使用料を気前よく支払ってくれてるから儲かってるよ」
と言っていた。
この視察には、私とレミナ書記官の他に龍神様の秘書のヘンリーさんと助手のナタリーさんも同行している。人族の大帝国の攻略方法に興味があるみたいだった。
作戦本部に入ると一斉に敬礼された。よく教育されている。
「そのまま業務を続けてください。質問などはここで研修しているロイに聞きますので皆さんはお気になさらずに」
そう言ってロイに説明を求めた。
「帝国出身の僕がいうのもあれですが、本当に凄いですよ。ダンカン将軍から逃げるために研修を希望したんですが、本当に勉強になります」
(ロイ、やっぱりそうだったのね・・・)
「奇をてらったことはせず、基本に忠実にやることの大切さをまず学びましたね。それから・・・」
ロイの説明が続く。
まず5人パーティーを10組作りダンジョン攻略に向かわせたそうだ。そこで情報を一括集約して作戦本部が分析する。分析した結果を基にパーティーの組み替えを行う。それを愚直なまでに繰り返していたそうだ。
部隊員も疲労が溜まらないようにシフトを組んで、ダンジョン攻略→休息日→訓練日を繰り返すみたいだ。本当に合理的だ。ダンカン将軍に会うまでは「力の限り突撃だ!!」とか言って、力押しするのかと思っていたが、さすが大帝国と感心した。
「ニューポートで同じことをすれば破綻すると思います。帝国の人員と物量があってこそですね。ただ、作戦の立案やシフト管理などは本当に勉強になりますよ」
不純な動機で始めた研修だが、結果的にいい成果が得られたようだ。
ここでナタリーさんが質問を始めた。
「少し具体的な話になりますが、ダンジョン攻略で難しいと感じたところやボス戦における具体的な戦術を教えて下さい。それから部隊員の能力的なことと部隊編成の具体的なやり方を教えてください」
「えっと・・・そこまで詳しくは僕も把握してません。すいません」
ロイが困っている。ところでなぜナタリーさんはここまで詳しく聞くのだろうか?こんな質問ロイに答えられるわけないのに・・・
ロイが困っているとダンカン将軍に全権を任されているハインリッヒ副官が答えてくれた。
「質問内容から察するにそちらのレディはかなり優秀な方のようだ。副官の私が答えましょう」
優秀なレディと言われて、ナタリーさんは少し照れているようだった。
「まずダンジョンから帰還したら、こちらの用紙にパーティーリーダーが記入して作戦本部に提出します。それを作戦本部が一括して集約するんです」
実際に記入された用紙を見せてもらった。よく書けている。オルマン帝国は軍経験者でないと上級文官になれないと聞く。この報告書を見るとすぐに文官としてやっていける者も多いだろう。
「こちらに連れてきている兵科は近接戦闘要員が槍使いと剣士、遠距離攻撃要員が魔術士と弓兵、それに回復術士と斥候部隊員です。冒険者ランクで言えばA~Bランクの者が各兵科に2~3人はいます。後は若手中心のメンバー編成なのでC~Dランクがほとんどです。パーティー編成ですが、戦力が均衡するようにバランスを意識してますね」
「上級ランクの者だけでパーティーを組んだりはされないのでしょうか?」
「それでは訓練になりませんよ。そんなことをしたら攻略パーティーが続出してしまいますね。与えられた情報を基に限れた戦力で戦うからこそ、いい訓練になるんです。我々にとってみれば、セントラルハイツ学園にある学生向けの訓練ダンジョンみたいなものですよ。まあ、あそこも学生のときは攻略するのに苦労しましたけど」
それを聞いたナタリーさんはなぜか、凄く怒っていた。それをヘンリーさんが抑えている。
「さすが天下の帝国軍だ。これは龍神様にダンジョンの難易度を上げるように進言しないといけませんね」
ヘンリーさんがそう言って、視察は終了した。
そして次の日、龍神様がやってきた。
「我も少々貴殿達を甘く見ていたようだ。すこしダンジョンの難易度を上げてやるから心して挑戦するがいい!!ハハハハハ」
これにはダンカン将軍も帝国軍部隊員も誇らしそうにしていた。
「龍神よ!!我らを認めてくれたことには感謝する。必ずや攻略してみせよう」
ダンカン将軍が答える。帝国軍部隊の士気は大いに上がったようだ。
龍神様はというとまたご家族で来ていた。
「今日はスパイス料理を所望するぞ。新しいスパイスをドロップアイテムに加えたからな」
別に今日は来ていただく必要はなかったのに・・・。龍の姿をして、ちょっと話せばロイの料理が食べられるなんて、本当に羨ましい。私は嫌味を込めてこう言った。
「いい仕事してますねえ」
しかし効果はなかった。
「クラシアよ。おまえは違いが分かる奴だな。これでも威厳と迫力が出るように工夫しておるのだ」
古龍の扱いは難しい。
私は龍をいい感じで餌付けできたと思うことにした。
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