ダンジョン攻略3
~勇者クラシア・ラーシア視点~
7階層は森林フィールドだった。ロックゴーレムやメタルソルジャーに加えて、オオカミ型の魔物ワーウルフや鳥系の魔物ロックバードなどの森林に生息する魔物もおり、攻撃を仕掛けてきたが、特に苦労することなく撃退できた。
そしてここにもゴブリンの拠点があった。
6階層と同じように私とルナで遠距離から魔法攻撃、相手が打って出てくればグリエラとガイエルで撃退する作戦で対応する。
すると今回も相手が打って出てくることはなく、遠距離での魔法と弓の打ち合いをしばらく続けたところで撤退していった。
8階層、9階層も森林フィールドだった。
こちらも7階層と同じで、ゴブリン達と交戦したが、遠距離で魔法を打つとすぐに撤退して行った。
そして、このダンジョンのボスモンスターであるミスリルリザードが待ち受ける10階層に到着した。
洞窟のようなフィールド。奥から今までの魔物とは比べ物にならないような魔力を感じる。間違いなくミスリルリザードだ。
幸い、相手はまだこちらに気付いていないようだ。
ロイに探知してもらったところ、罠などは仕掛けられてないようだ。
「ミスリルリザードを見付けたわ。これから討伐に向かうけど気を引き締めてね。最初はどんな魔物か分からないから守備重視で行きましょう。それとルナは弱点を探るために属性の違う魔法を何種類か撃ってみて」
と指示して、ゆっくりとダンジョンの奥に進む。
そしてついにミスリルリザードが姿を現した。
体長10メートルほどの大きなトカゲで、長い尻尾を持ち、全身をミスリルの鱗で覆われている。
見た感じ、防御力はかなり高そうだ。斬撃系は効きそうにないだろう。
どうしようか?
こちらに気付いた様子はない。ルナに強めの魔法を打ってもらおうか?
ここまで、大きな戦闘はしていないので、体力や魔力には余裕がある。長期戦になっても大丈夫だ。
予定通り、無理をせずに守備重視で戦おう。そう思っていた矢先
ドゴーン!!轟音が鳴り響いた。大量の矢と電撃魔法がミスリルリザードに降り注いでいた。
どういうこと?
矢が飛んできた方向を見るとそこには100匹以上のゴブリンがいた。
弓矢と魔法のほかにバリスタと呼ばれる移動式の大型ボウガンで槍のような矢を発射したり、投石器で大岩もぶつけていた。
なぜ?
思考が追い付かない。
ゴブリン達はなんでボスモンスターを攻撃しているの?
魔法が使えるゴブリンメイジやバリスタなんてものがあれば、十分に私達とやりあえただろうに。
そうか!!ゴブリンは私達をここに誘導したんだ。
何かしらの理由で私達とミスリルリザードを戦わせようとしたんだ。だから攻撃らしい攻撃をせずに撤退を繰り返していたんだ。まあそのおかげで、楽にここまで来られたけど。
結局私達はゴブリン達の手のひらで転がされていたんだ。舐められていたのは私たちのほうだった。
今のところ、ゴブリン達の攻撃は上手くいっているようだ。
バリスタの矢が刺さっているし、電撃魔法も多少は効いている。しかし、ミスリルリザードは自動回復スキルを持っているみたいで、徐々に傷が回復していっている。
しばらくして、ゴブリン達は矢を撃ち尽くしてしまったようで、撤退を開始した。ここまでのゴブリンの攻撃と見事な撤退を見て、正直感心した。よほどの優秀なリーダーがいるのだろう。侮れない相手だ。
ゴブリンの攻撃を受けてミスリルリザードは、「グエアー!!」と怒りの奇声を上げて、光る弾丸を撃ちだした。
たぶんミスリルの弾丸だ。ゴブリン達はほとんど撤退を完了していたのだが、1匹逃げ遅れたゴブリンの右足を貫いた。
そのゴブリンは少年?のようで、うめき声をあげてその場に倒れ込んだ。
すかさず、ミスリルリザードはゴブリンに近付き、今までの怒りをぶつけるように、鋭い爪の生えた前足を振り下ろした。少年ゴブリンは恐怖に引きつった顔で目を閉じていた。
気が付いたら体が反応していた。ミスリルリザードの爪を剣で受け止めていた。そして倒れている少年ゴブリンに
「早く逃げなさい!!私の言葉が分かるかどうか分からないけど」
(あれ?なんで魔物なんか助けてるんだろう。あのおびえた感じほっとけなかったのかな?)
少年ゴブリンは、立ち上がり、足を引きずりながら逃げていった。途中、少年ゴブリンを助けにきた別のゴブリンに背負われて。
私の行動を見て、すかさず、ガイエルとグリエラが割って入り、攻撃に参加してくれた。ガイエルは言った。
「いつも指示や作戦を守れって言うけど、てめえが勝手にやってりゃ世話ねえわ」
「ご、ご、ごめんなさい」
「それよりどうするんだ?」