ロイへのご褒美
~勇者クラシア・ラーシア視点~
予想外に嬉しいことがあった。招待パーティーではないダンジョン攻略パーティが現れた。
ライガさんという虎獣人の女性斥候を中心としたAランクパーティーだった。なんでもトムさんの弟子で、オルマン帝国時代のロイを指導していたみたいだ。
ライガさんはラーシア王国の出身なので、輪をかけて嬉しかった。
「この度はおめでとうございます。お酒も料理もたっぷり用意してますので、存分に楽しんでください」
「こ、こ、この度に・・・光栄で・・・ありがたく・・・ございました」
ライガさんは緊張していた。
いきなり母国の王女から労いの言葉を掛けられるとは思ってなかったみたいだった。
仲間からは
「借りて来た猫みたいじゃねえか!!酒でも飲め!!」
とからかわれていた。ロイも
「クラシア王女は優しい方なので大丈夫ですよ。せっかくなんで僕が作った料理をしっかり食べてください。お酒にも合いますよ」
と励ましていた。
しかし、これがいけなかったのだろう。緊張を紛らわすためにハイペースで飲んでいて、ライガさんは泥酔してしまった。
「ロイ!!モフモフしてくれ!!寂しかったぞ」
仕方なくロイがモフモフする。
基本的に獣人は親族や恋人以外がモフモフすることは、はしたないことと認識される。さすがにこれは看過できないので、ライガさんに注意する。
「人前で破廉恥なことはお止めください。ロイもきちんと断るように」
「王女様もロイにモフモフしてもらえばいいニャ!!すごく、ロイは上手いニャ。ロイのモフモフは最高だニャ」
そういう問題ではないし、かなり酔っている。
それを見ていたパーティーメンバーはすぐにライガさんを会場から連れ出した。
パーティーのリーダーが謝罪してきて、明日、酔いが覚めたら本人に謝罪させるので、寛大な処分をと言ってきたが、
「酔った上でのことなので、気にしなくていいですよ。ただ、人前で誰彼かまわず、モフモフはさせないように注意してくださいね」
と大事にしないことを伝え、少し注意して下がらせた。
慰労会はそこで終了となったが、ライガさんが言った「ロイのモフモフは最高」という言葉が頭から離れなかった。そのとき、あることを思いついた。そう言えばロイの決戦勝利のご褒美は私へのモフモフだった。
(これは仕方なく、本当に仕方なくだから・・・約束は守らないと・・)
そう自分に言い聞かせた。私も年頃の女の子なので、当然モフモフには興味がある。
私は会場の片付けを終えたロイを呼び出した。
「そ、そ、そういえばロイにご褒美をあげてなかったわね。決戦の・・・だから今日渡すわ。モフモフしていいわよ」
ロイは驚いて、
「クラシア様!!その・・・あれは冗談で・・・・」
と言ったが、私は構わずロイの胸に頭を預けた。ロイも我慢できなかったようで、恐る恐る私のケモ耳をモフモフしてきた。
(これは気持ちいい。意識が飛びそうだ)
「ロイ。尻尾もお願い」
今度は尻尾をモフモフしてくれた。本当に気持ちがよかった。私は疲れていたこともあり、モフモフされながら眠ってしまった。
しばらくして目を覚ますとロイはまだ、モフモフを続けてくれていた。このままでは一晩中やらせてしまいそうだったので、
「ロイ、気持ちよかったわ。ありがとう。またご褒美を上げるから、これからも頑張ってね」
と言って止めさせた。
「これからも一生懸命頑張ります!!」
ロイがそう言うと下がっていった。不覚にも早くご褒美を上げたいと思ってしまった。
次の日、青ざめたライガさんのパーティーが謝罪にきた。
「王女様。本当に申し訳ありません」
私は気にすることはないと伝えたが、ライガさんのパーティーは引き下がらず、お詫びに何か町のためにしたいと申し出てくれた。私は例のごとく、阿修羅&ゴブリンズの指導を頼んだ。
シクスさんとの模擬戦が始まり、ライガさんのパーティーはボコボコにされていた。
初見で阿修羅族との対戦はいくらAランクパーティーとはいえ、厳しいものがある。
「王女様は私達を許してくれてなかった。これは指導と称した処刑だ!!」
と言ったとか言わなかったとか・・・・
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