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総合ギルドのお仕事

~勇者クラシア・ラーシア視点~


ニューポートに着いて3ケ月が経つ。ダンジョンは未だにオープンしていないが、領地経営は順調だ。

財務担当のゴブル管理官の報告では、今月から収支が黒字になった。

「燃える泥」の生産とギルド関係の収益が予想以上にあったそうだ。


総合ギルド関係の報告書に目を通す。総合ギルドとは、商業ギルドと冒険者ギルドが統合したギルドで、初の試みだそうだ。まあ、人材不足の苦肉の策だけど。

報告書の作成者はロイ。まとまっていて読みやすい。


まず冒険者が少しずつ集まってきているとのことだった。ほとんどが魔族領を見て見たいという興味本位だという。まあ、来てくれればなんでもいいのだけど。

冒険者ランクもD級以上がほとんどらしい。それはそうだろう。駆け出しで、いきなりここを目指す馬鹿はいないと思うし、ニューポートに来るまでもそれなりに強い魔物が出現するので、必然的にある程度戦力のあるパーティーに絞られる。


ギルドの運営も大きなトラブルはないみたいだ。たまに冒険者同士で喧嘩があったり、ギルド職員に絡んだりする態度の悪い冒険者がいるみたいだが、グリエラとガイエルの鉄拳制裁で解決しているそうだ。

この二人だが、仕事ぶりは真面目らしい。

グリエラは鉱石の鑑定、ガイエルは薬草やキノコ類の鑑定をメインでやっていて、魔物の解体もきちんとやってくれているそうだ。二人は職員を指導する立場にあり、指導部長の役職に就けられているみたいだ。

この辺はギルマスであるパトリシア婦人の手腕だろう。二人の能力を十分に引き出している。


ロイはというと業務は多岐にわたる。まずは、ギルドに併設してある酒場兼食堂の監修だ。実働はエルドワ村から来たエルフとドワーフの夫婦がやっているのだが、新メニューの開発や素材の管理なども手伝っている。悩みは、海の幸が使えないことだそうだ。まあ、これはクラーケンを討伐しないと解決しない問題だからね。


それとギルマスの補助のような仕事もしている。物流の仕組みなども教えてもらっているみたいだった。考えてみると、ギルマスは私達を育てようとしてくれているんだと思う。本当にありがたい。

もしかしたらマーラ王妃やお父様に頼まれているのかもしれない。


最後にメモが挟まれていた。


「新メニューができましたので、是非お越しください」



私は、レミナさんにギルドで食事を取ることを伝えて教会へ向かった。

教会にはレイ兄とルナがいる。レイ兄の方針で、いきなり布教活動はせずに治療院と子供向けの学校から活動をスタートさせていた。


「いきなり他所者が来て、神を信じろなんて言われても反感を買うだけだからね。少しでも町のみんなに有益なことをしないとね」


そう言っていた。ルナは回復魔法を使えるし、ああ見えてもセントラルハイツ学園卒のエリートだからレイ兄のサポートをすることにしたらしい。

二人に事情を伝えると二つ返事で了承してくれた。


「ロイの新作が食べられるなんて、行かないわけないじゃない」


ルナが言う。

私達は3人は総合ギルドに向かった。

ギルドに着くと酒場兼食堂に入った。「新風亭」というらしい。

今日はロイが厨房に入っていた。声を掛けると任せてくださいと言わんばりに右手を出して親指を突き立てた。ロイ、期待してるよ。


私達が席に着くとガイエルとグリエラもやってきた。話が弾む。

話題は明日の探索のことについてだ。私達は体が鈍らないように週に1回は探索に出るようにしている。


「明日は草原に行こう。グレートボアを狩って、ロイに料理してもらうんだ」

「いや!!珍しいキノコを探したいから森だな」


グリエラとガイエルが意見を言った。どちらも捨てがたい。

そこにギルマスであるパトリシア婦人もやってきた。


「揃いも揃ってどうしたんだい?」


事情を話したら納得してくれた。一緒に食事を取ることにした。

ギルマスの話によるとシクスさんも冒険者登録しているらしい。冒険者としての経験はないが、戦闘力が高いので重宝されるみたいだ。今日も新しく町にやってきたパーティーとクエストに行っているそうだ。


「それと意外なことだけど、燃える泥採掘の護衛が一番人気のクエストなんだ。今シクスさんが行っているやつさ。理由を聞いたら、護衛するだけで固定給がもらえるし、魔物を討伐すればその分は臨時収入だしな」


なるほど、冒険者でも安定を求めるんだね。因みに燃える泥の採掘作業員も現地採用している。新たな雇用も生まれて、領主としては嬉しい。燃える泥は大きな利益になっているし。


「たまにクエストの取り合いで喧嘩になることはあるけど、概ね上手くいっていると思うよ」



そうこうしているうち、ロイが料理を運んできた。

ロイも席に着いて、食事会がスタートした。

森や草原で取れた素材と魔族領のスパイスを使った料理だったが、どれも美味しかった。


「この町がもっと発展すれば、他の魔族の国からスパイスを輸入できて、もっと美味しいものが作れますよ」


そう言っていた。

また、1品変わった料理が出てきた。

魚介類の煮込み料理だ。これもかなり美味しかった。


「せっかく海が合って豊富な食材があるので、是非とも漁の関係も力を入れて欲しいところではありますが・・・」


申し訳なさそうにロイが言った。


「じゃあ、明日の探索は海にしよう」

「俺も海に一票だ!!」


ガイエルとグリエラが乗ってきた。


「ごめんねロイ。領主としてはまだ、海関係の開発は許可できないの。もう少し先になりそう」


みんな残念がっていた。人材も資源も足りない中で、これ以上は開発先を増やせない。今の状態が続き、人口も増えてきたら開発に力を入れていきたいとは思っている。


そんな話をしていたら突然、血塗れの冒険者パーティーがギルドに駆け込んできた。


「助けてください!!シクスさんが・・・・」


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