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西の森、南の草原

~勇者クラシア・ラーシア視点~


今日はニューポート西の森の探索をする。

そういえば意外なことに、こういった探索任務をすることは初めてかもしれない。勇者パーティーとしての任務は「○○の討伐」みたいなことがほとんどだったと記憶している。

こういった依頼を受けたことがあるのは、冒険者として活動していたグリエラ、ガイエル、ロイだ。


「一口に探索任務と言っても、やることはたくさんあります。大きく分けるとマップの作製、出現する魔物の種類や傾向の把握、薬草などの採取できる素材の把握の3つに分けられます。それを元にして、ギルド側が具体的にどういった依頼を出すかを検討するんです。私達は町を運営する立場なので、ギルド側の視点に立って調査することも重要と思われます」


ロイが説明してくれた。ロイの言う通り、私は領主で町を運営していく立場だ。だから、好き勝手に魔物討伐すればいいというものではない。


森に入ると魔物が襲ってきた。

種類はグレートウルフ、グレートコング、グレートベアが多数出現した。

今回は探索任務なので、必要最低限の戦闘に留めた。


「グレート級の魔物が多数か・・・・これじゃあ、ゴブリン達は太刀打ちできないな」

「冒険者ランクで言えば最低でもCランクだな。Dランクじゃちょっと厳しいか?まあ、駆け出しなら即死クラスだ」

(冒険者はA~Fの等級に分けられている。Aランクより上のSランクの冒険者はいるにはいるがごくごく少数で、実質Aランクが最高ランクらしい。因みにベッツ・スパクラブはB級、もうすぐA級になるそうだ)


グリエラとガイエルが冒険者の推奨ランクについて教えてくれた。意外にこの二人はギルド職員に向いているかもしれない。

それから、採取できる素材の確認も行った。


「この鉱石はそこそこの値段で取引できるぞ」

「魔力茸があるじゃないか!!魔力回復ポーションの原料になるんだ」


グリエラは鉱石類、ガイエルは薬草やキノコ類の目利きができるみたいだった。それはそうか。グリエラはドワーフだし、ガイエルはああ見えても森の民と呼ばれるエルフだ。ここでも二人の意外な能力を知った。ただの大酒の飲みの問題児と思っててごめん・・・・


それから、討伐した魔物の解体や採取した素材の確認などを行った。結構な数が討伐できたので、ギルマス(パトリシア婦人)とギルド職員を西の森に呼び出した。職員は現地採用したゴブリン族の職員がほとんどだった。

現地採用された職員は研修期間らしく、グリエラやガイエルやロイから解体方法などを熱心に学んでいた。


しばらくして一通り、解体や素材の分別は終了した。

お腹もすいてきた。ロイの出番だ。


「ロイ頼めるかしら?」


「分かりました。そうですね・・・グレートベアは調理に時間が掛かるし・・・グレートウルフの肉を使って・・・そうだ!!」


何か閃いたらしい。

出来上がったのは、グレートウルフの肉をキノコと香草で炒めたシンプルな料理だった。

素材の味を生かした料理で、グレートウルフの肉の味が引き出されていて美味しかった。


「グレートウルフの肉は元々高級肉の扱いなので、それだけでも十分美味しいんです。それに体力回復の効果のあるキノコと薬草を入れてみました。体にもいいですよ」


やっぱりロイは天才だ。



その日はそれで西の森の探索は終了となった。ギルマスの話だと、この森だけで十分採算が取れるとのことだった。森全てを探索したわけではないので、把握できてないところに危険があるかもしれないが、その辺は心配ないとギルマスは言う。


「お貴族様のピクニックじゃないんだよ。ある程度のことが分かれば後は自分たちでやっていくさ。最前線で体を張るのが冒険者さ」



それから、南の草原の探索任務は3日後に決まった。

1日でも仕事をしないとどんどんと溜まっていくのよね。私が処理しないと文官達の仕事が進まないし。仕事を処理する時間が必要なので、3日後にさせてもらった。


そして3日後、南の草原の探索がスタートした。

なぜか、ゴブル管理官とシクスさんが同行していた。話によるとシクスさんがどうしても魔物と戦いたいと言って聞かなかったらしい。慣れない事務仕事で大変だったみたいだ。


「よし!!今日は暴れてやるぜ」


「おいシクス!!あくまでも探索だからな」


草原にはグレートボアとグレートブルが少数いた。それと小型の魔物もそれなりにいた。


「やっぱりここもゴブリンでは厳しいだろうな・・・そこそこの魔物が多くいる」

「推奨ランクは西の森よりも低めのDランクか?無理をしなければだがな」


グリエラとガイエルが言う。この二人もギルド職員として板についてきた。


「それじゃ、少し討伐してみましょう」


「やったあ!!ここは任せろ!!」


私が言うと、嬉しそうにシクスさんはグレートブルに突進していった。


次は採取素材の確認だ。目ぼしいものはなさそうだった。

そんなとき、ゴブル管理官が話掛けてきた。二人で歩きながら話す。


「領主様。西の森と南の草原での利益を考えると半年後には収支がプラスになる見込みです。最初からこんなに上手くいくなんて素晴らしいです」


嬉しそうに話していた。ニューポートが地元だけあって、本当に嬉しいんだろう。


「でもこういうときこそ気を付けないといけませんよ。落とし穴に落ちたりするんです。だからいつも以上に慎重に何か問題点はないかと探す姿勢が重要な・・・・・ギャー」


ゴブル管理官が目の前から消えた。

穴に落ちたようだ・・・・


「ボス!!すぐ助けに行きます」


そう言ってシクスさんが穴に入ってゴブル管理官を引き上げた。泥まみれのゴブル管理官が現れた。


「最悪だ。この泥は変な匂いがする」


するとグリエラが近付いてきて言った。


「おい!!これは燃える泥だ。これで火酒を造ればいいのができるぞ!!」


グリエラは興奮した。知識だけだけど燃える泥があれば、燃料にもなる。特産品として輸出できるかもしれない。大きな収益を上げる可能性が出てきた。


「ゴブル管理官お手柄ですね。大きな収入源をまた見付けましたね」


「いえいえ。落とし穴に気を付けろと言って、自分が落ちたら世話ないですよ・・・ハハハ」

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