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ここって本当に港湾都市?

~勇者クラシア・ラーシア視点~


「何だこれは!!」

「どこが港湾都市なんだ?」


グリエラとガイエルがそうつぶやいた。

ここの町?を見た私達の気持ちを代弁している。

都市なんて呼べるわけがない。寂れた漁村だ。建物もボロボロで、嵐が来れば一瞬で吹き飛んでしまいそうだった。

この町?の出身でゴブリン族のゴブル管理官が説明を始める。


「10年位前から再開発が始まり、そのときに未来への希望を込めて、村の名前をニューポートに改名したんです。しかしながら、開発が全く進まず。この有様です。これをご覧ください」


ゴブル管理官が1枚のパンフレットを手渡してきた。


「希望に満ちた新しい都市ニューポートで、君も夢を掴もう!!」


そう書かれていた。


「これを見てやってきた移住希望者はこの町の惨状を見て、ほとんどが去って行きました。残った者は訳ありで、ほかの町ではやっていけない者ばかりです。この町出身の自分としては、何とか発展して欲しいとは思っているのですが・・・」


辛そうに話をした。

それから、ゴブル管理官の父親が村長をしているので、一度会って、問題点を洗い出そうということになった。村長と言っている時点で都市ではないのだけど・・・


そして、周囲の建物より、少しだけ立派な建物に案内された。ゴブル管理官の実家だそうだ。

中からゴブリン族の夫婦が出てきた。


「ようこそお越しくださいました。ゴブルの父で村長をしておりますゴブラです。こちらは妻のゴブリです。まあ、見たとおりの寂れた村です。問題が山積みで、八方塞がりです。まずはこの村の現状と問題点についてお話します・・・」


ゴブラ村長の説明が続く。一応、参考資料のような物を用意してくれていた。人口や収支などが記載されている。人口は約100人、7割がゴブリン族だ。後は、得体の知れない住人や訳ありの住人だ。


「最弱種族であるゴブリン族は、土地を追われて、この辺境まで流れ着いてきたのです。後で説明いたしますが、痩せた土地で作物もあまり育たず、海での漁も問題がありまして、ほとんどできません。再開発話が持ち上がり期待していたのですが、問題に対処できずにこの有様です」


辛そうに語っている。


「この村の北には龍神山と呼ばれている山があり、古龍エンシェントドラゴンが住み着いています。なので、村の北を開発することはできません。西は森、南は草原となっていますが、いずれも強力な魔物が住み着いていて、私達にはどうすることもできません。そして、東側の海はクラーケンという大型の魔物が住み着いていて、沿岸部の浅瀬附近しか船を出すことができないのです」


つまり、東西南北すべてに問題を抱えており、発展は望めないという話だった。


「以上のような状況で、主要産業もなく、海路も使えないので、当初予定していた交易都市として発展することもありませんでした。なので痩せた土地を耕し、浅瀬で僅かばかりの海産物を採って、自給自足の生活を細々としているのです」


それはそうだろう。海路が確保できるからこそ、開発計画が成り立つのだ。

西と南は強力な魔物がいると言っても、それなりに人数を掛けたりすれば、輸送路を確保できる。

しかし、何の特産品もなく、海路が使えないこの村を苦労して発展させる必要性がないのだ。


「現状はよく分かりました。明日、代表者を集めて、今後の会議を行おうと思いますので、ゴブラさんも是非参加してください」


そう言って、私達が寝泊まりする領主館に帰った。領主館と言っても村の集会所を急遽改造した程度のものだったが・・・・



次の日、領主館において主要メンバーを集めて会議を行った。

会議に先立ち、私が正式に領主であることを宣言した。

それと、村長のゴブラさんは今後も運営に携わって欲しいので調整官という役職を設けて、正式に雇用することになった。

今回の会議の参加メンバーはこんな感じだった。


勇者パーティーの私、グリエラ、ガイエル、レイ兄、ルナ、ロイ

ノーザニア王国の文官がレミナさん以下5名

魔国デリライトの文官がゴブル管理官以下5名

現地の関係者としてゴブラさんとゴブリさんが出席した。


アドバイザーとして、商業ギルドのギルドマスターとしてパトリシア婦人も出席してくれた。


まずは問題点を整理した。


1東西南北の問題点の解消

2特産品、交易品の開発

3安定した食料供給


「みんな、何でもいいから意見を言ってみて」


私がそう言うとグリエラとガイエルがすぐに発言した。


「酒だ!!酒を造るんだ」

「そうだ!!上手い酒を造ろう」


「それは追々だな。今すぐはできないよ。まずは、食料の確保だな。それと東西南北の問題もすべてが同じレベルの難易度でもないと思う。その辺りの詳しい調査をしてみてはどうだい?」


パトリシア婦人がギルドマスターとしての意見を述べた。


「月並みですが、塩なんてどうでしょう。ノーザニア王国でも海沿いの村では塩田を作っているところが多くあります」


ノーザニア王国から派遣されたレミナさんが意見を言う。


「それなんですが、近くに岩塩の産地がありまして・・・今更塩田を作ってみても大した利益にはならないかと・・・それと先程話しましたクラーケンが住み着いていますので、大規模な生産は無理だと思います」


ゴブラさんが申し訳なさそうに話す。塩田は小規模のものはあり、住民が使用する分くらいは賄えているそうだ。

そんなに簡単には行かないか・・・・


「それとこれは一番大事なことなのですが、絶対に北の龍神山の龍神様を怒らせてはなりません。もし怒らせるようなことになると・・・・」


そう言いかけたところで、神官服を着たゴブリン族の男性が会議室に駆け込んできた。


「大変です!!龍神様が降臨されました!!」


もしかすると怒らせてはいけない龍神様を怒らせてしまったのかもしれない。



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