エピローグ
~勇者クラシア・ラーシア視点~
研修が終わり、移住希望の住民と工員などの技術スタッフが揃った。総勢約50人だ。
そしていよいよ本日、ニューポートに出発する。
案内はゴブル管理官が引き受けてくれた。聞いたところによるとゴブル管理官の生まれ故郷らしい。
見送りにはララさん、マティアスさん一家やベッツ・スパクラブのメンバー、アンヌ大臣が来てくれていた。アンヌ大臣と言葉を交わす。
「本当にお世話になりました。ニューポートには同行できませんが、落ち着きましたら一度伺わせていただきます。何かありましたら私の腹心であるレミナに申し付けください」
「こちらこそ、アンヌ大臣にはお世話になりっぱなしです。是非ニューポートに来てくださいね」
マティアスさんとララさんはロイに声を掛けていた。
前回の勇者パーティーからの付き合いなので、名残惜しそうだ。因みにマティアスさんは人形制作の傍ら、不定期で第10軍の活動に参加するみたいだ。
相当な戦力になると思う。ポポル君と戦ってみて思ったが、パーティーに一人は傀儡魔法使いは欲しい。
傀儡魔法使い自体が少数なので実現しにくいとは思うけど。
私達だけでなく、魔族側にも見送りが来ていた。なんとアルテミス王女だった。
私に挨拶した後にゴブル管理官に声を掛けていた。
「色々とお世話になりました。ゴブル管理官の活躍を祈っております」
ゴブル管理官は感動で、瞳を潤ませていた。
研修のときにアルテミス王女の大ファンということを公言していたのを思い出した。
「ボス。こういうときは、『俺に着いてこい!!』とか言うんですよ」
「何て失礼なことを!!不敬罪で牢屋にぶち込むぞ!!」
シクスさんにからかわれて、ゴブル管理官は怒りだした。意外にいいコンビなのかもしれない。
それと意外な同行者がいる。パトリシア婦人だ。
(監督の契約が切れたので、以前の呼び方に戻した)
事情を聞いたら納得した。
ニューポートの物流について、魔族領とニューポートの交易をポポル君の伯父さんが商会長のピクシー商会が担い、人族との陸路での交易はニール商会が担うことになったらしい。
パトリシア婦人はニール商会の特別顧問として復帰したそうだ。そして、商業ギルドのギルマスも兼務するらしい。
これには思惑がある。
トルキオさんのネリス商会に独占させないためだ。開発の初期段階の大してライバルもいない状態からスタートすれば、ネリス商会に市場を独占されるのは目に見えている。なので、トルキオさんを抑えられるパトリシア婦人が抜擢されたのだ。
マーラ王妃の鶴の一声だったらしい。
「まあ、決戦のときの情報の貸しを返す形になってね。本当に年寄りに無理させるよ」
パトリシア婦人はそう言っていたが、少し楽しそうだった。
「それとね。これを機会に魔族チームについても調べようと思ってね。魔族領のほうが情報が集まりやすいし、渡に船さ。今は仮説だけど、凄い発見ができそうだ」
因みにネリス商会は海路の担当らしい。海路が繋がれば、ラーシア王国やダッカとも交易が可能で、莫大な利益が見込める。しかし、様々な理由から計画は難航しているらしい。
トルキオさんは
「勇者様。どうか、最優先で海路の確保をお願いします」
と言っていた。
最後にベッツ・スパクラブのメンバーと言葉を交わした。
もう少しで、Aランクパーティーになれるそうだ。
「私達も勇者パーティーになれるように頑張ります」
ノンさんが言う。
「そのときは、私達がサポートスタッフになってあげるわ」
是非とも頑張って欲しい。
名残惜しいけど、そろそろ出発だ。私達勇者パーティーの旅は始まったばかりだ。
今回で第一章は終了となり、次回から第二章がスタートします。
勇者による辺境開拓が始まります。
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