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決戦の後で

~マーラ・ノーザニア視点~


「クロスポートに代わる新しい領地を望みます」


クラシアちゃんが事前の打ち合わせのとおり答えてくれた。これで一安心だ。


「それでは勇者よ。そなたにはデリライトの領地であるニューポートを与える」


私の弟で魔国デリライトの王子であるディアスが答えた。

ディアスにも話が通っている。

クロスポートから陸路で約5日の距離にある港湾都市だ。


表向きは港湾都市だが、実態はただの寂れた漁村だ。立地はかなりいいのだが、様々な問題を抱えていて魔国デリライトからしても開発が進んでいない。

クラシアちゃん達に開発を任せて、自治都市としたほうが利益が高くなると判断したのだろう。


もちろんこちらにも大きな利益がある。

ノーザニア王国としても町が開発されれば、貿易面で大きな収益が見込める。だって、魔族領と面しているのはノーザアニア王国だけだから、一番に大きな利益を取れる。


商業都市ダッカのトルキオや傭兵国家ラクスのヘラストにしても大きな利益を得られる。

新しい市場が開かれるので、利益は未知数だし、当然、傭兵や冒険者の需要が出てくるので、それを考えると、かなりおいしい話だ。

抜け目のないトルキオなら開発当初に利権を抑えまくって、利益を独占するかもしれない。

まあ、その対策はしているけど。


神聖国ルキシアとオルマン帝国にもそれなりの旨味がある。

神聖国ルキシアは新たな布教場所が開拓できるし、上手くいけば魔族の信者も多く獲得できるかもしれない。


オルマン帝国は、ニューポートを新たに獲得した領土だが、本国からかなり離れており、統治していくにはデメリットのほうが大きいので、他国に譲ってやったという体にするらしい。

それで面子が保てればいいとのことだった。

この国は見栄っ張りだからな。国内にはこの決戦もマティアスさんとロイのオルマン帝国コンビが中心となって勝利したとアピールするらしい。実際にコアストーンを壊したのはロイだし・・・


まあそれでも、オルマン帝国から決戦の勝利のご褒美として資金援助が得られるのは大きい。


そして、クラシアちゃんの母国のラーシア王国だが、特にメリットがないように思われた。

本国からはかなり離れているし、旨味はない。航路が整えば、大きな利益になるけど、できるかどうかも分からないからね。

でも父親のレオの意見は違っていた。


「クラシアには町の開発や運営を通じて、今後ラーシア王国の国王としてやっていく基礎を学んで欲しい。様々な種族をまとめ、湧いて出てくるトラブルに対処して、成長してもらいたい。ラーシア王国も獣人以外も多くいるし、この経験はいずれ大きな糧となる」


昨日の宴会で熱く語っていた。こういう熱くて、まっすぐなところは昔のまんまだなと思った。

クラシアちゃんの成長に投資するか・・・

もしかしたらラーシア王国が一番得をするかもしれないな。


主要国の賛同が得られてよかった。開発資金も予定より多く集まりそうだ。


これからは結構忙しい。

ニューポートに向かう人選や各国との調整、商業ギルドや冒険者ギルド等の誘致、魔族との調整等やることは山のようにある。

ベルク宰相とアンヌ大臣はしばらく休みは無いわね。



式典も無事終わり、滞在先に戻る予定だったところにクロスポートの人族の代表者の男と魔族の代表者の女が訪ねて来た。


「突然の謁見を許していただき、ありがとうございます。折り入ってお願いがあります」


内容はこうだった。

勇者パーティーと魔族チームの決戦をこれからもこの町で続けて欲しいとのことだった。

理由は、決戦でかなりの収益を上げているからだ。それが無くなってしまえば大損失になる。


「明日に時間を作るから滞在先に来なさい。そのときに決戦における収支が分かる資料も持ってきて」


そのように指示して、その日は終了した。


次の日、代表者2名が資料を持ってやってきた。

資料を確認する。

なるほどね。かなり、収益を上げてるわね。

もしこれが無くなったりしたら大きな痛手だわ。それと、ここの市民は決戦を本当に楽しみにしているみたいね。


何とか残す方向で検討すると伝えて、代表者を帰らせた。


これからどうしようか?

ベルク宰相とアンヌ大臣に任せようか?

それは止めておこう。これ以上忙しくさせると二人揃って過労死するかもしれない。


痴情のもつれから始まった勇者パーティーと魔族チームの決戦は、私達に大きな利益をもたらすだけでなく、クロスポートを含めて多くの人に利益をもたらすイベントになってしまった。


私達もここまで大きくなり、利益を生み出す勇者ビジネスを手放すことは考えていない。

すぐに思いつかないけど、きっといい方法があるはずだ。

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

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