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決着

~勇者クラシア・ラーシア視点~


アルテミス王女の必殺技をスラッシュストライクで切り落とした。

これで、私達の勝利は間違いない。

ロイの指示で、落下しているアルテミス王女にグリエラとガイエルが攻撃して場外に吹っ飛ばし、戦闘不能にした。

ポポル君は、ゴーレムと一緒に動きを止めている。

後は残っているポポル君とゴーレムを片付ければ、私達の勝ちだ。


それが油断だった。ポポル君とゴーレムはコアストーンに向かってきた。

ルナとレイ兄が吹っ飛ばされた。

まずい!!

グリエラとガイエルはアルテミス王女への攻撃で離れたところにいるし、私は必殺技のクールタイムでしばらく動けない。


ポポル君がメインゴーレムから飛び降りた。

メインゴーレムに何か仕込んでいるんだろう。

もうすぐ、コアストーンに到達してしまう。ここまで、必死で頑張ってやってきたのに、最後の最後で油断して、負けてしまうなんて・・・・


すると、ドーンという音がして、地面に穴が空き、メインゴーレムが落下していった。

しばらくして、穴の中から爆発音が聞こえた。


「嫌な予感がしたので、念のため落とし穴を設置していました」


ロイが言った。

本当にロイは凄いわ。凄く成長している。

もしロイが私達のパーティーに加わっていなかったと思うとぞっとする。

マーラ王妃が言った「ロイがキーマン」という言葉が思い出される。本当にそのとおりになった。


「じゃあ仕上げをしましょうか」


ロイの言葉にみんなが頷く。

そこからは一方的な展開になった。ポポル君はまだ諦めてなかったが、魔力がほとんど残っておらず、メインゴーレムを失ってしまった今では、どうすることもできない。

それにマティアスコーチに比べるとゴーレムの連携は一段劣る。


どんどんとゴーレムを倒していく。

レイ兄が最後のゴーレムを槍で貫いた。


「ポポル君。降伏しなさい」


私はポポル君に言った。


「嫌です。僕は最後まで諦めずに戦います」


ポポル君はそう答えた。

ポポル君は剣を握りしめると私のほうに向かってきた。


いくら決戦だといっても、6対1で戦うのは気が引ける。


「分かりました。私が勇者としてあなたと一騎打ちします。受けてもらえますね」


「受けます。では行きます」


ポポル君が切り掛かってきた。難なく躱す。

見たところ、ラーシア王国軍で言えば、平均的な新入隊員ぐらいの腕前だろう、努力の跡は見えるが。

鍔迫り合いになったところで、腹部に蹴りを入れてダウンさせた。


「もう勝負はついたと思います。降伏しなさい」


しかし、ポポル君は向かってきた。足を大剣の腹で打ったり、転ばせたりしたが、諦めずに向かってくる。会場の雰囲気が変わる。



司会者席の拡声の魔道具から司会者の声が聞こえてきた。


「どうしたのリリック?」


「アンジェリーナ。悪いがもう我慢できねえ!!いくら仕事でもこの気持ちは抑えられねえ。契約違反になってもいい。だからポポルを応援させてくれ」


「もう仕方ないわね。後は私に任せてしっかり応援しなさい」


「それでこそ俺の相棒だ!!よし!!頑張れポポル!!勇者なんかやっちまえ!!」


それに合わせてポポルコールが起きた。

ポポル君は何度倒されても向かってくる。こっちは早く勝負を決めたいので、だんだんと攻撃を強くしていっているけど、ポポル君は諦めない。普通ならもう気絶しているのに・・・・


「「「ポポル!!ポポル!!ポポル!!ポポル!!」」」


ポポルコールも大きくなる。完全にアウェーだ。

ポポル君が切り掛かってきたのに合わせてポポル君の剣を下から切り上げた。

そしてポポル君の剣を弾き飛ばした。


でもポポル君は諦めない。素手で向かってきた。

私は大剣を鞘に納めて、素手で相手をする。何度も投げ飛ばしたり、蹴りを入れてダウンさせたりしたが、ポポル君は起き上がってくる。


会場のほとんどがポポル君を応援している。これじゃあ。どっちが勇者か分からない。

どちらかというと私が悪い魔王のようだ。

ポポル君はもうフラフラだ。どうしたらいいんだろう。


「ポポルもういい!!降参しろ!!」


司会者が叫ぶ。でもポポル君は諦めずに立ち上がる。

そうしたところ、ドカーン!!という大きな音がした。


ロイがスリングショットで魔族チームのコアストーンを破壊した。


「終了!!勇者パーティーの勝利です」


会場は一瞬静まり返った後に大歓声に包まれた。奇しくも、決着をつけたのは初代勇者パーティーと同じサポーターだった。


ポポル君の気持ちを考えると最後まで戦わせてあげたい気持ちもあるが、これ以上やると命に係わる。

そんな状況を判断してロイが汚れ役を買って出てくれたんだ。

本当にロイはパーフェクトサポーターだ。


ポポル君は泣き崩れている。

会場の治療スタッフよりも先にレイ兄が駆け寄って回復魔法を掛けている。


「よく頑張った」


レイ兄が声を掛ける。それに続いてガイエルやグリエラ、ルナ、ロイもポポル君に駆け寄る。

ポポル君の健闘を称えている。


「ロイ君には勝てると思ったけど、駄目だった。最後の落とし穴はびっくりしたよ」


「たまたまだよ。ポポル君が凄いのは知っていたからね」


ロイとポポル君が握手をする。


そんな時間を過ごしていると戦闘不能になった魔族チームのメンバーも試合会場に戻ってきた。

アルテミス王女とピーアース王子が挨拶に来た。

儀礼的な挨拶を交わした後に雑談をした。


「完敗です。作戦の立案から戦闘に至るまで、大きな差があったと感じました」


「同じ王族として、あなたを見習わなければと思います」


アルテミス王女とピアース王子が言う。


「いえいえ。魔族チームも強かったですよ。一つ勝因を上げるとすれば私達を支えてくれた人が多くいたということでしょうか。その人達の力の差が勝敗を分けたのだと思います」


そんな会話を続けていたら、アッシュが横から入ってきた。


「おまえ強いな!!今度は最後までやろうぜ!!」


(私はもうやりたくないんですけど)


「そうですね。また機会がありましたら・・・」


言葉を濁した。



しばらくして式典の準備が整ったようだ。

式典が始まり、マーラ王妃から問われた


「勇者よ。おめでとう。それではあなたに問います。今回の報酬は何を望みますか?」


私は、約束どおりに答えた。



「クロスポートに代わる新しい領地を望みます」


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