最後の賭け
~アルテミス・デリライト視点~
戦況は非常に厳しい。
切り札のポポル君も限界が近い。最後の望みに賭けるしかない。
逆転を狙ってコアストーンを破壊する。
今まで魔族はそのような戦い方はしてこなかった。圧倒的に力でねじ伏せて、全員を戦闘不能にする。
勇者パーティーはそのような作戦を取ってきたことは多くあったみたいだ。
今度は私達がやろうとしている。皮肉なもんだ。
できれば使いたくなかった。たとえ勝利したとしても、後々史上最低の魔族チームと語り継がれるだろう。
一応この作戦を想定した訓練もしてきている。実行に移すには勇気がいるが・・・
「ポポル君。あなたも限界よね。もうあれをやりましょう」
「そうですね。やるしかないですね。魔力もストックのゴーレムもほとんどありません」
~サポーター ロイ・カーン~
作戦は上手くいった。
ポポル君を見るとかなり辛そうだ。限界が近いと思う。
どんなことをしてくるかは読めないが、一発逆転を狙った策を打ってくるかもしれない。
考えられるのは、コアストーンを破壊することだ。
どんな方法か分からないならば、臨機応変に対応できる人材をあてる。
「クラシア!!コアストーンに戻って。多分何かやってくると思う」
「分かったわ!!これが向こうの最後の攻撃ね」
クラシアにすべてを任せることにした。
~ポポル視点~
ストックしていたゴーレムを全部召喚した。それとクリエイトゴーレムのスキルを使って10体、新たにゴーレムを作り出した。
総数は30体だ。
この作戦は細かい制御は必要ない。ただ前に進むだけだ。
魔力も残りわずかだ。これが最後の攻撃だ。
「アルテミス王女!!行きますよ!!」
僕はゴーレムをひたすら前進させた。相手も必死に押しとどめている。
どんどんとゴーレムが破壊されていく。
もう少しだもう少し近付ければ・・・
コアストーンを確認すると勇者が待機している。
僕達が最後の賭けでコアストーンを狙いに行くのも読まれていたのか。
でもそれだけではこの攻撃は止められない。
残りのゴーレムも少なくなってきた。しかし、予定していた位置までたどり着いた。
「アルテミス王女!!今です」
僕はメインゴーレムを使って、アルテミス王女を上空に投げ上げた。
アルテミス王女は上空で弓を構えた。
普通に考えて、上空で正確に狙いを定めて的に当てるなんてできない。
しかし、アルテミス王女の腕ならば外すことはない。魔国デリライトでも屈指の弓使いは伊達ではない。
「ハイパワーショット!!」
矢に魔力を大量に込めて、アルテミス王女は射った。矢とは思えないエネルギー体がコアストーンに飛んで行った。
この距離なら、コアストーンに当たれば確実に破壊できる。
たとえ結界魔法や盾でも防ぎきれないだろう。
しかし、そうはならなかった。
「スラッシュストライク!!」
勇者がそのエネルギー体を真っ二つにした。
作戦は失敗だった。
アルテミス王女は落下していく。
「みんな!!落下地点だ!!」
ロイ君が指示を出す。相手がアルテミス王女の落下地点に殺到する。
落下中は無防備だ。
グリエラとガイエルもジャンプしてアルテミス王女に向かっていく。
そして、二人がハンマーと手拳でアルテミス王女を攻撃して場外まで吹っ飛ばした。
勇者パーティーは勝利を確信したかのように気を抜いている。
勇者は、剣を杖代わりにして何とか立っている。必殺技の影響だろう。しばらくは動けない。
ここからが本当の作戦だ。
アルテミス王女の攻撃で上手く破壊できればそれで良かったが、相手もこちらが何かやってくるのは分かっている。アルテミス王女の攻撃が成功するとは限らないし、失敗する可能性のほうが高い。
つまり、アルテミス王女を囮にする作戦だ。
さすがに王族を囮にするなんて、勇者パーティーは思いもしないだろう。
相手は、アルテミス王女の攻撃を防いだら、もう勝った気になるだろう。そこに一瞬隙が生まれる。
みんなアルテミス王女のほうを見ている。
僕もゴーレムの動きを止めていた。
今だ!!
僕は残っているサブゴーレムと僕が乗っているメインゴーレムをコアストーンに向けて突進した。
油断していたレイモンドとルナリアを吹っ飛ばした。
コアストーンまであと5メートル程だ。
僕はメインゴーレムから飛び降りて転がった。
メインゴーレムには爆発する魔石を大量に詰め込んでいる。
この作戦が始まる前にこっそりと仕込んだ。召喚したゴーレムの数のほうに目が行って、これには気付かなかっただろう。
後はコアストーンにメインゴーレムを抱き着かせて、起爆するだけだ。
魔族チームのみんなで制作して、それなりに思い入れのあるゴーレムだから、こういう使い方は本当はしたくない。
けど、勝つためには仕方がない。
メインゴーレムがコアストーンに近付いていく。
後3メートル程だ。
勝った!!
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