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奇襲

~勇者クラシア・ラーシア視点~


ルール説明が行われる。

決戦の勝利条件は3つ。

1相手陣地に設置してあるコアストーンを破壊したとき


2相手メンバー全員を戦闘不能状態にしたとき


3相手方が敗北宣言を出したとき


なお、観客の安全のために観客席と会場の間にセフティゾーンを設けている。

ここに結界魔法が張り巡らされている状態だ。この会場からセフティゾーンに出た時点で戦闘不能扱いとなる。


会場が試合準備をしている間、リリックさんとアンジェリーナさんが掛け合いを始める。


「子供からこんなお手紙が届いているわ。『阿修羅族はなんで馬鹿なんですか?』だって」


「そんなの簡単だろ。腕に栄養が行き過ぎて、頭に栄養が行かないからさ」


会場は笑いに包まれるが、阿修羅族と魔族チームのアッシュは激怒している。

散々煽って、相手に冷静さを失わせる作戦だ。


「実はね・・・ここだけの話だけど。ピアース王子とアルテミス王女はあんなに美男美女なのにお相手がいないのをリリックは不思議に思わない?」


「それもそうだな。おまえは何か知っているのか?」


「姉弟で付き合っているという噂があるのよ」


「そりゃ初耳だ。禁断の愛だ!!俺は応援してやりたいけどな・・・」


会場から悲鳴が上がる。


「何を適当なことを言って!!そんなことはない!!姉上は外面はいいけど、性格はきつくて、気性が荒いんだ!!付き合うわけないだろうが!!」


ピアース王子が叫ぶ。その後ろでアルテミス王女が物凄い表情で睨んでいた。

作戦は成功のようだ。


私はここまで着用したことのないプレイトメイルアーマーを装備した。

トルキオさんに頼んだ特注品だ。かなりの重量だが、防御力は最高だ。

並みの兵士なら立っているのがやっとだろう。

これも作戦のためだ。


「それでは試合開始!!」


戦いの火蓋が切って落とされた。

私は身体強化の魔法をマックスで掛けると、魔族チームのアッシュに突進した。

パンチを繰り出すも、防がれてしまう。これは想定内だ。


「アッシュさん。1対1で戦ってみませんか?私も素手で戦いますけど」


魔族チームからは止めるように声が上がる。


「やりたいけど、作戦的には・・・・」


とアッシュが言ったので、私は挑発した。


「アッシュさんは見かけによらず、臆病なんですね。それに魔族チームの皆さんも怖気づいてしまって、腰抜け集団ですね」


これにはアルテミス王女がキレた。


「もう我慢なりません。アッシュ!!叩き潰してあげなさい」



そうして、私とアッシュは1対1で戦うこととなった。

アッシュは嬉しそうだった。


開始から壮絶な殴り合いが続く、鎧の上からとはいえ、かなりの衝撃だ。意識が飛びそうになる。

会場は大歓声に包まれていた。


だんだんと押されてきた。プレイトメイルアーマーも壊れて、原形をとどめなくなった。

それでも私は、殴り続けた。アッシュも嫌がっているようだった。

そのとき、アッシュは2本の右手で私の左手を2本の左手で私の右手を掴んできた。


この技はシクスさんから教えてもらった技だった。私の両手の自由を奪ってタコ殴りにする作戦だろう。

でもこれは私が仕掛けた罠だ。

私は全身の力を抜くと仰向けに倒れ込んだ。アッシュは咄嗟のことで、前のめりになった。

そこを見逃さずに私は下からアッシュの腹部を両足で蹴り上げた。


アッシュは宙に舞った。

ここだ。


「ダブルスレッジハンマー!!」


私はすぐにジャンプして両手を組んで思いっきり殴りつけた。

剣の必殺技の「スラッシュストライク」を自分の腕でやる感じだ。普段は絶対にやらない。

なぜなら、両腕に凄まじい衝撃が掛かるからだ。今の技で、私の両手は骨折したと思う。


アッシュはガードしたが、衝撃でセフティゾーンまで吹っ飛んで行った。


私は受け身を取ることができず、落下して、地面に叩きつけられた。


「回収!!」


ロイが叫ぶ声が聞こえた。グリエラ、ガイエル、レイ兄が向かってくる

私はガイエルに抱えられ、グリエラとレイ兄がガードする形で、自陣まで連れ戻された。


「両腕が折れてるし、肋骨と鼻も折れてるな。相変わらずクラシアは無茶をするなあ。回復にかなり時間が掛かるからそれまで、みんな頼むぞ」


「レイ、お願いします。クラシアのいつもの鎧は出して置きました。治療が済んだら装備してください。みんなは次の作戦に移りますよ。グリエラとガイエルは壁になってください」


「クラシアはよくやってくれました。しばらくゆっくり休んでください」


ロイも指揮官として逞しくなったものだ。

私の役目はまだ終わっていない。

今は一刻も早く傷を治すことが重要だ。

みんなを信じることにしよう。私は意識を手放した。





~アルテミス・デリライト視点~


「ハハハハ。やるな勇者よ!!油断したわ。だが俺は無傷だ。今度は俺からの攻撃を受けるがいい」


アッシュが言う。

しかし、会場に向かおうとするアッシュは係員に止められた。

セフティゾーンに出た時点で、戦闘不能と判断される。

アッシュは抗議しているが認められないと思う。


アッシュを仕留めることを諦めて、場外に出して、戦闘不能にするなんて・・・・

今思えば、オープニングセレモニーも私達をイラつかせて、冷静な判断をさせないようにしたのだと思う。


今更後悔しても遅いが、貴重な戦力を開始早々失ってしまった。

唖然としてしまい、後手に回ってしまった。


アッシュとの戦闘で負傷したクラシアに攻撃を加えようとしたが、迅速に回収されてしまった。

多分、回収までが作戦だったのだろう。

クラシア回収後は、守備を固めている。


私はどうすればいいんだ?


負傷したクラシアと治療に当たっているレイモンドを差し引けば、4人対5人で私達のほうが数的有利だ。

ここで一気に押し込めれば、まだまだ挽回できる。


私が指示する前に、ローグと覆面の女剣士はグリエラとガイエルと戦い始めている。

ここで、私は、お父様に受けたアドバイスを思い出す。


「実戦では予期せぬことが起こるのが常だ。そんなときは冷静に、まずは周囲の状況を確認してみなさい。焦りは禁物だ」



そうだ。まずは、状況を把握しよう。

ローグと覆面の女剣士はガイエルとグリエラと戦っている。すぐに決着がつきそうにはない。

こちらで動かせる駒はピアースとポポル君だ。

ポポル君は奥の手として取っておきたい。


クラシアとレイモンドは治療のためにしばらくは戦闘に参加できそうにない。

ロイは私が弓で攻撃するとスリングショットで迎撃してくる。

私のほうが攻撃力はある。なので、迎撃することに専念しているみたいだ。

リーダーのクラシアが復活するまで、耐え凌ぐ気だ。


ルナリアはというと、魔法陣を構築して、派手に杖を振り回して呪文を詠唱している。


こいつは何をやっているんだ?そもそも何で勇者パーティーに選ばれているんだ。

派手な割に威力の弱い魔法しか使えないポンコツ魔法使いなのに・・・


そうか!!私は一つの結論を導き出した。


今までの戦闘記録を見ると魔法陣を構築しての魔法は撃っていない。

こいつは、能力も平均以下、いつもレイモンドの陰に隠れてコソコソと逃げ回っている。

(男に媚びを売るような女は私が一番嫌いなタイプだ。)


もしかしたら、魔法陣を使っての特大魔法を撃てるのかもしれない。

今までの情報戦を考えるとこいつを切り札として、隠し持っていたと考えれば辻褄が合う。


試しに連続で限界ギリギリの数の矢の雨をルナリアに振らせてみた。

さすがにロイもスリングショットで迎撃できないと考えたのだろう、小盾で必死になって防いでいる。


これで、確信した。ルナリアは特大魔法を撃ってくる。


私は、ピアースとポポル君に指示を出す。


「ピアースはルナリアを接近戦で倒して!!ポポル君はサブゴーレムを出して、ピアースの援護をお願い!!ルナリアに魔法は絶対に撃たせないないで!!」




ここでルナリアを倒せれば一気に形勢逆転だ。

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

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