表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/186

幕間 裏方はつらいよ3

~司会者リリック視点~


俺はインプ族のリリック。

拡声の魔道具一本で渡り歩いている凄腕司会者だ。


インプ族は体が小さく、力も魔力も弱い、最弱種族だ。

子供の頃はそれでよくいじめられた。

おどおどした性格で、それも原因だったのかもしれない。


あるとき、俺を中心的にいじめていた同級生の誕生会に誘われた。

本当は行きたくなかったが、行かないとひどいことをされると思って、嫌々参加した。

俺をいじめていた同級生は、かなりの金持ちで、誕生会は多くの者が参加して、ステージまで設置してあって、色々な催しがされていた。


そこで俺は急にステージに上げられた。

そして、拡声の魔道具を渡された。

「お前も何かやってみろ」


そう言われた。

多分、困って、恥をかく俺を見て、笑おうという魂胆だったのだろう。

俺は涙目になった。参加者は俺を見ている。

まあ、この恥ずかしさに耐えれば、今日は終わりだ。おめでとうくらいは言おう。

そう思って、拡声の魔道具を口に近付けたところ、急に言葉が溢れ出てきた。


「いつも俺をいじめているお前に一言いってやるぜ!!陰湿なお前は、性格最悪!!お前の口は、口臭最悪!!だから俺が成敗、勧善懲悪!!」


同級生はキョトンとしている。

俺は一瞬、手に持っている魔道具は呪いの魔道具で、ヤバい言葉がどんどん溢れてくるのだと疑ったがそんなことはなかった。


「まだまだ続くこいつの悪事!!好きなあの娘の下着を強奪!!おしりを触って変態爆発!!そんなお前は最低最悪!!」

(実際はいたずらでスカートめくりをした程度だが・・・)


会場はなぜか大盛り上がりだった。俺みたいにいじめられていた奴が他にもいたらしい。

そいつらの気持ちを代弁した形になったからだ。


「まだまだ言うぜ・・・・」


そう言ったところで、拡声の魔道具は取り上げられた。

会場はとんでもない空気になった。

幸い、俺をいじめていた同級生の親はまともな人だったので、逆に「息子がすまない」と謝られた。


それがきっかけで自分の才能に目覚めた俺は、クロスポートで一番の司会者となって、いろんなイベントに引っ張りだこになった。

もちろん勇者パーティの決戦や魔族チームのメンバー発表会など、町を上げての大規模イベントの司会者も何年も務めている。


しかし、それも今年で終わりだ。

魔族チームのメンバー発表会でやらかしてしまった。


イベントの前に子供の頃に好きだった子に告白した。

結果は振られてしまった。まあ、それ自体はよくあるし、多少落ち込んだけど、そこまで気にすることでもなかった。

今後の参考のために振られた理由を教えてくれと言ったら突然その子が泣き出した。


「リリック君だから言うね。私は・・・ピアース王子に・・・その・・・無理やりされてしまって、お腹には子供がいるの。それで最初は、幸せにするよと言ってくれたんだけど、実は私の他に2人そういう女の人がいてね。私は問い詰めたの」


「そうしたらね。無茶苦茶殴られたの。そして倒れたところを何度も踏みつけられた」

「お腹の子供だけは助けて!!」

「そう言ったけど暴力は止まらなかったの。そんなことが何度も続いたの。暴力が終わった後は凄く優しくなるんだけど、やっぱりお腹の子供のことが心配で逃げてきたんだ」


「だからね。こんな汚れた私じゃあ、リリック君が不幸になるだけだから・・付き合えないの・・」


俺の中で、何かが弾けた。

ピアースめ。絶対許さねえ。


「仇は取ってやる!!」


そう言って、別れた。

俺には、力も魔力もない。あるのは拡声の魔道具のみ。

これで、ピアースに一矢報いてやる。


魔族チームのメンバー発表会。

当然司会は俺だ。ここで俺の話術でピアースを社会的に抹殺してやろうと思っていた。


実際にピアースと話してみると好青年だった。

本当にこいつがあんなひどいことをするとは思えなかったが、人には裏の顔があると言うし、計画通りピアースを抹殺することにした。


最初は、軽いジャブ程度のことを言ったつもりだが、スタッフに厳重注意された。

途中に過激派の襲撃事件が発生した。


魔族チームの活躍や同じインプ族のポポルの師匠の活躍などもあって、過激派は鎮圧された。


それで、計画していたことが出来なくなった。

更に悪いことにピアースの評価がうなぎ登りだった。

俺や観客の無礼な発言を受け流して笑いに変え、過激派襲撃の中でも落ち着いて、王族の威厳を示し、的確な指示をしたことが要因だ。


それでも、俺はあきらめずにピアースのことを批判したが駄目だった。

ピアースのファンに囲まれてリンチにあった。


「あいつは悪魔だ!!みんな騙されるな」


と言ったが、火に油を注ぐ結果になった。



気が付くと医務室のベッドの上にいた。

ピアースとその護衛の男が見舞いに来た。

護衛の男がどうしてそんなにピアース王子のことを攻撃するのかを聞いてきた。


俺はもう破れかぶれになって、振られた女の子のことを正直に話し、最後にこう言った。


「いくら王族だからって、やっていいことと、悪いことがあるぞ!!ちゃんと償え!!そして地獄に落ちろ!!」


すると、護衛の男は


「王子!!思わぬところから犯人が分かりました」


と言った。


護衛の男の説明では、俺が告白した女の子の話は全て、妄想とのことだった。

そればかりか、ピアース王子とその女の子は一度も会ったこともなく、妄想に取り付かれたその子は、王室関連の施設に放火や器物破損や誹謗中傷などを行っていたそうだ。


俺が話した内容と施設に撒かれた誹謗中傷のビラの内容が一致していたらしい。


因みにビラには「2人の浮気相手と別れて!!」、「お腹は殴らないで!!」、「無理やりは止めて、優しくして」などの内容らしい。

捜査しても手掛かりがなく、行き詰っていたところへの朗報だそうだ。


大変なことをしてしまった。俺は馬鹿だ。


「申し訳ありません。いかなる処分も受けます」


そう言ったところ、


「君も騙されてのことだし、君のおかげで結果的に犯人が分かったから僕としては許してあげたいんだけど・・・・立場上、すべてなかったことにするのはできないし・・・・」


結局、不敬罪などに問われることはなかったが、決戦での魔族チームの司会からは降板させられた。

まあ、当然だろう。

ピアース王子は最大限の配慮をしてくれた。



その件があってから、俺に仕事は無くなった。

みんな、厄介ごとは避けたいもんな。


この町を出てやり直すか?

そんなことを考えていたときにオファーが来た。


ただし条件があった。

司会は、アンジェリーナという大女優と一緒にやって欲しいとのことだった。


オーディションを兼ねて一度、雇い主に俺とアンジェリーナの掛け合いを見て貰った。


「やっぱりそうだわ。アンジェリーナさんと一緒に司会すると毒気が中和されていい感じだわ」


そう言って、すぐに採用となった。

それから雇い主の素性、条件や仕事内容について聞いた。


俺は雇い主に言ってしまった。



「アンタ正気か?」












気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ