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各国の思惑

~勇者クラシア・ラーシア視点~


決戦まで残り3日を切った。

今日もパーティー揃って冒険者ギルドの闘技場に向かう。


しかし、今日はいつもと雰囲気が違っていた。

道には兵士達が大勢配置されていて、検問も行われていた。


「監督、何か聞いていますか?」


「それはですね。オルマン帝国の皇帝と神聖国ルキシアの聖女様が激励に来られるそうよ」

「なので、今日は上品なパトリシア婦人に戻りますからそのつもりでね」


なるほど、そういう事情か。

まあ、人族の代表でもあるから、形だけでも激励は必要と思う。



闘技場に入って、しばらくして、オルマン帝国の皇帝が現れた。

護衛も従者も大勢引き連れている。概ね30人位いる。

皇帝とは、大陸会議で一度会っているので、挨拶して、激励に来てくれたことのお礼を述べた。


「クラシア王女よ。そんな気にしなくていいぞ。パーティーのメンバーに困っていたところにロイとコーチのマティアスを派遣したことなんて、我が帝国からすれば、大したことないぞ」


(ロイもマティアスコーチも帝国と関係なかったと思うけど・・・)


そのとき、アンヌ大臣が小声で


「ちょっと大人の事情で・・・・」


何のことはない。ロイとマティアスコーチが帝国出身で、帝国の威信を高めるために利用しただけだ。支援金という名目で「お金を払うからお願い」ということらしい。

国と国とのやり取りなんてそんなもんだ。


更に厚かましいことに感謝状に署名までさせられた。


この度は、優秀な人材を2名も派遣していただき、感謝してもしきれません。

また、支援金も豊富に・・・・


そんな内容だった。さすがにこれには呆れてしまった。


でも良かったこともある。

ロイには騎士団の中でも近衛隊しか着用できない深紅の軽鎧を、同じくマティアスコーチには、上級の宮廷魔術士しか着用の許されていない深紅のローブが授与された。


帝国においては、かなり名誉なことらしく、ロイは感動して、涙を浮かべていた。

色々事情はあるけど、ロイが喜んでいるならそれでいいか。



時間をおいて、今度は神聖国ルキシアの聖女カタリナ・クレメンスが現れた。

こちらは帝国より少なめの10名程度のお供を引き連れて来た。


「人族の希望の星であるあなた方に神の幸があらんことを」


と祈りを捧げてくれた後に側近の男に声を掛ける。


「ドラク、いつものあれを準備して」


またあれか・・・

私達は旅で町や村に立ち寄るたびに教会を訪れていた。

そのとき、いつも血液を抜かれていた。


レイ兄に聞いたら、血のイニシエーションというらしく、教会の中でも、ごく少数のものしか使えない秘儀であるらしい。

血液で健康状態が分かったり、また血液を利用して、様々な祝福を与えることができるらしい。

レイ兄でも使えないので、詳しくは分からないそうだ。

抜かれる血液も少量で、儀式の終了後に教会で作った果実酒やエールなどをくれるので、ちょっとした楽しみではあった。


血を抜き取られた後、ドラクと呼ばれた側近が、天幕を張って、その中で作業を始めた。完全秘匿の技らしい。


「みなさん結果が出ました。全員が健康です。ただ、グリエラさんとガイエルさんはちょっとお酒を控えたほうがよろしいかと・・・それと、少し疲労が溜まっているみたいなので、半日でも休息することをお勧めします」


と聖女カタリナが言ってきた。

(まあ、儀式をしなくても、二人が飲み過ぎなのは分かりますけど)


それから、一人一人の特性に合ったポーションを配ってもらった。

かなり質がいいものだった。

聖女カタリナは


「今までの血液データから最適のポーションを私が調合しました。訓練後に飲んでいただければ、疲れが嘘のように引くはずです」


と言った。私がお礼を述べたところ、


「あなた方の血で、救われた方も多くいるのです」


と言って去っていった。

意味が分からなかったが、高級ポーションがもらえたのは、単純にうれしかった。



各国ともそれぞれ思惑があるのだろう。自国の国益を一番に考えるのも当然だと思う。

しかし、自国の国益だけを追い求めるのではなく、本音と建て前を上手く織り交ぜながら、相手にもある程度得をさせるか・・・・



今回、私達は文句を付けられないくらい利益を得ている。

二カ国ともに想定していた結果は得られたのだろう。


さすが大陸の強豪国である。

本当に抜け目がない。



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