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幕間 5代目勇者の物語5

~5代目勇者アグエラ視点~


決戦が始まった。


決戦の勝利条件は3つ。


1相手陣地に設置してあるコアストーンを破壊したとき

2相手メンバー全員を戦闘不能状態にしたとき

3相手方が敗北宣言を出したとき


前日パーティーで作戦を確認した。

三姉妹は阿修羅族の三兄弟にぶつける。ミランダはローグを担当する。

そして私がディアスを殺す。


ミランダは


「多分、私のほうが強いけど、同じ流派で手の内も分かるし、相手が守備的に戦ってきたら、なかなか勝負がつかないと思うの」


と言った。いつも冷静な(ダンジョンを除く)ミランダが言うならそうなのだろう。

三姉妹の長女のヤックは、


「力だけで言えば、相手のほうが上かもしれない。相手のほうが強いと判断したら守備的に戦って、なんとか時間を稼ぐよ。だから師匠はディアスと思いっきりぶつかってよ」


と言ってくれた。

つまり、連携して戦うというよりは、目の前の敵に全力で戦うといったものだ。



開始の合図が告げられると、こちらの作戦通りの展開になった。

中央で三姉妹と三兄弟がぶつかる。

右サイドではミランダとローグが戦っていた。


私はディアスと向き合う。

やっぱりディアスはカッコいい。

でも許さない。ここで殺す。

私は弓で攻撃を繰り返す。


何本かディアスに刺さったが、致命傷は与えられていていない。

この程度なら、すぐに回復魔法か、ポーションで治ってしまう。


ディアスのほうは、全く攻撃してこなかった。守備に徹している。

ミランダとローグの戦いも膠着状態だった。

互いに知っているみたいで、戦いながら会話もしている。


「小っちゃかったあなたが立派になったわね。でも負けないわよ」


「まだまだ勝てそうにありませんね。でも負けない戦い方はできますよ」


「面白くない男になったわね。男らしく攻めてきなさいよ!!」


「その手には乗りません。このまま続けます」



三姉妹のほうは、かなり押されていた。なんとか耐えている。

私が早くディアスを倒さなければ負けてしまう。

私は更に攻撃を強くした。


しかし、守備にだけ専念したディアスを崩すことはできなかった。


すると、三姉妹の末っ子ヨックがダウンしてしまった。

ミランダがサポートに向かおうとしたが、ローグに上手く止められて近付けない。

数的不利になり、次女のユックが2対1で攻められてダウンした。

長女のヤックは最後まで頑張っていたが、力尽きて倒れた。


前衛は崩壊した。


三姉妹を倒した阿修羅族の兄弟が向かってくる。

それをディアスが制止して、私に向かって言った。


「アグエラ!!もういいだろ。降参してくれ」


でも、私は弓に矢を番えたままだ。

ディアスは三叉槍を捨てて、私に近寄ってきた。


「来るな!!殺すぞ!!」


それを無視してディアスはどんどん近付いてくる。もう2~3歩くらいの距離まできた。

この距離では、いかにディアスでも全力で射った私の矢は躱せないだろう。

こいつ死にたいのか?私はディアスを殺すためにここに来たはずだ。

なのに手が動かない。

もしかして私はまだディアスに期待しているのか?


そんな思いに浸っていると私はディアスに抱きしめられた。思わず弓を落としてしまった。


「長い間待たせて悪かった。もう心配ない」


そう言われた。

私もディアスを抱きしめた。久しぶりに味わうこの感触、懐かしくて落ち着く。

私達が抱き合っていると、ドーンという大きな音がした。

私達のコアストーンが阿修羅族の三兄弟に破壊されたみたいだ。私達は負けてしまった。


その後、信じられないようなことが起こった。勝利の報酬を聞かれたディアスはこう言った


「私はアグエラを妻として娶る」


大歓声に包まれた。

後日、ディアスに聞いたら、この決戦が終わったら正式に私を迎えに行く予定だったらしい。王家なので、なかなか許可が下りず、決戦に勝った報酬として私との結婚を認めてもらおうと思ったらしい。

そして無理やり、選考会に出場して代表に選ばれたそうだ。


結局、私はディアスを信じて待っていればよかったんだ・・・・





「師匠ったら。またその話?もう惚気話は聞き飽きたわ」


三姉妹の長女ヤックが言う。

三姉妹とはあれからも定期的に女子会をしている。三姉妹はその後、阿修羅族の三兄弟と結婚した。

勝負には負けたけど、所期の目標は達成した。


「でも早いものよね。アルテミスちゃんとピアース君と一緒に私の息子のアッシュが同じ魔族チームで出るなんてね」


二女のユックが言う。私達はクロスポートに子供達を応援するために滞在しているのだ。


「それを言ったら、ローグとも同じチームよ。私達もまだまだ、引退するには早いわよ」


「じゃあ、次回はみんなで選考会に出てみない?」


そんな会話が続く。

ここだけの話、私と三姉妹は魔族チームで決戦に出場したことがある。

さすがに一度に全員出ると人族側にバレるので、覆面を着けて別々に出場した。

私とディアス、ヤックとヤックの旦那さん、それにローグを加えたチームはかなり強力だったと思う。


勝利の報酬として、魔国デリライトで貴族にしてもらった。

ディアスは気にするなと言ったけど、王族と結婚するのに平民では格好がつかないと思ったので、無理をして出場した。

このときから魔族チームでは、魔族でなくても、配偶者枠で出場することができるようになった。

今回は、ローグの嫁さんが出場するみたいだ。


「ところでミランダは、浮いた話の一つでもないの?」


「うるさいわね!!私を愛してくれるのはダンジョンだけよ」


今回は、ミランダも参加している。毎回は無理だけど、参加できるときは来てくれる。

今はダンジョン関係の会社を設立したみたいだが、詳しいことは秘密だそうだ。

ノーザニア王国で調査を終えて、魔国デリライトに新たなダンジョンの調査に向かう途中で、クロスポートに立ち寄ってくれたのだ。


ミランダは今日は覆面を着けていない。立派な角もある。

ミランダは実は魔族だった。あの時は擬態魔法で隠していた。だいたい覆面を着けている奴なんか、訳ありに決まっている。


「決戦の後、みんな幸せになって羨ましいわ。私もローグから『昔から好きだった』とか言われるの期待していたけど、すぐに任務でどっか行っちゃうし・・・もう男なんて懲り懲りよ!!」


(あなた懲りるほど、男と付き合ったことないでしょ。これを言ったら喧嘩になるから言わないけど)



そんなローグも結婚し、離婚し、また結婚している。

人生とは分からないものだ。
















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