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幕間 5代目勇者の物語2

~5代目勇者アグエラ視点~


ディアスと幸せな日々が続いていた。

かなり恥ずかしかったけど、友人に媚薬までもらって突撃した甲斐があった。


ディアスはイケメンで戦闘力も高く、おまけに頭も良かった。

狩りも上手いし、盗賊の襲撃も難なく撃退してくれたし、村の運営にもアドバイスをくれた。

夜は私に一生懸命尽くしてくれていた。

本当に理想の夫だった。


ただ、ディアスに近付いてくる若い女が絶えず、睨みつけたり、思いっきり惚気たりして撃退していた。


「私以外の女は見るな!!」


とディアスに怒鳴ったこともあるが今思えば、そんな必要もなかった。

ディアスは私しか目に入っていない。たぶん・・・


そんな中、私は妊娠した。

ディアスに伝えたところ、


「前にも話したけど、母国ではそれなりの家系だ。なので、一旦私は帰国して、君を妻として迎え入れる準備をしたい」


と言われた。

そして、ディアスは帰国することになった。私も着いていきたいと言ったが、身重の君に無理はさせられないと言われてしまった。


それから私は娘を出産した。名前はアルテミスとした。

これはディアスと二人で決めていた名前だ。

因みに男の子が生まれたときはピアースにする予定だった。


月日が流れ、娘も2歳になった。

でもディアスは迎えに来なかった。娘も少しは喋れるようになった。


「パパはどこ?」


そう言われたことがあった。

また、私はディアスとの仲を見せつけるように人前でもイチャイチャしていたのだが、それを良く思っていない連中も多くいた。


「アグエラはディアスさんに捨てられたのよ。あんな素晴らしい人がハーフエルフなんて相手にするはずないわ」


「でもあんなイケメンに迫られたら、アグエラでなくてもコロッと騙されるわ。たぶん今頃、どこかで別の女を引っ掛けてるはずだわ」


「私は騙されたアグエラも悪いと思うわ」




そんな声が聞こえて来た。

私に対して「ざまあ!!」という意見と、騙されて純情を弄ばれて可哀そうという意見で、村は二分していた。


結局どちらの意見もディアスはこの村には帰ってこないということだった。

私は、そんなはずはない、ディアスは必ず迎えに来ると思っていた。

しかし、よく考えてみると、私はディアスのことをほとんど知らなかった。


魔族で修業の一人旅をしている以外は、全く聞いていなかった。

どこの国の出身かも聞いてなかったし、どんな身分かも知らない。

もしかして、私は騙されたのか?私のことは遊びだったのか?

そうだ。そうに違いない。ディアスめ、私の純情を弄びやがって。


私は心の奥から沸々とディアスへの怒りが沸き起こってくるのが分かった。



そんなときに小国家群でも勇者を出すという計画を聞いた。

魔族を殲滅する目的だそうだ。

私は勇者の選考会に出ることを決めた。ディアス諸共、魔族を殲滅してやる。私にした酷い仕打ちの報いを受けさせてやる。


私は母に勇者になることを告げて、アルテミスを預かってもらうことにした。


「私はディアスさんが悪い奴には見えないけどね。どっしり待ってりゃいいと思うんだけど」

「今のあんたに何を言っても、無駄だろうから好きなようにやんなさい。アルテミスのことは心配しないでいいから」


私は、母に礼を言って、勇者の選考会に向かった。

選考会では、それなりに強い奴もいたが、私に敵うものはいなかった。

無事に勇者に選ばれた。


魔族チームとの決戦はチーム戦らしく、パーティーメンバーを選定しなければならない。

私に伝手はなく、生まれ育った村を出たのも数える程なので、少し困った。

担当者にそのことを伝えると、傭兵か冒険者を雇うようになるとのことだった。

費用のほうは、小国家群で持ってくれるみたいだった。


メンバーについて希望を聞かれた。

男はもう懲り懲りだ。女性のメンバーをお願いした。

それと、タンクができるメンバーは必ず入れて欲しいと頼んだ。


次の日、4人組の冒険者パーティーを紹介された。

「ラブオブパワー」というパーティーで熊人族と魔族の混血の三姉妹、ヤック、ユック、ヨックにミランダという魔法剣士が臨時で加入している女性だけのパーティーだった。


三姉妹は、三人とも2メートルを超えるガッチリした体格で、見た目通りのパワーファイターだった。

臨時加入しているミランダは何でもできる魔法剣士だった。

綺麗な顔立ちをしていたが、普段は覆面を着けている。事情を聞いても教えてくれなかった。

訳ありなのだろう。


三姉妹の目的は魔族領で婿を探すため勇者パーティーへの加入を申し出たそうだ。因みに長女のヤックは勇者の選考会に出ていた。その時は全身鎧でガチガチに固めていたので、気付くまでに時間が掛かったし、まさか女性とは思わなかった。


選考会ではかなり苦戦した。

妹達も同じような力を持っているらしい。仲間になればかなり心強い。


ミランダのほうは、趣味がダンジョン探索らしい。


今回もこの付近のダンジョン探索をするためにヤック達とパーティーを組んでいたみたいだ。

ヤック達が勇者パーティーに加入すると聞いて最初は迷ったが、勇者として認められるためにはノーザニア王国のダンジョン都市テトラシティでダンジョン攻略をしなければならないという情報を聞き、喜んで参加することにしたそうだ。


活動している間は給金が出るし、ダンジョンの探索もできるしで渡りに船だったみたいだ。


私がどうしようかと迷っていると、ミランダが提案してきた。


「この辺にまだ探索していないダンジョンが2つあるから、そこをみんなで探索しない?」

「それで相性を見て、悪くなければそれでパーティーを組みましょうよ」


とりあえず、提案を受け入れて、ダンジョン探索をすることにした。


実際、ダンジョン探索で戦闘などをしてみると私達は相性がいいことが分かった。

メインアタッカ―は私で、遠距離から弓で攻撃する。

それを三姉妹がしっかりガードしてくれる。なので、守備を気にせずに攻撃に専念できた。どうしても火力の高い技を出すときは隙が大きくできるので、ありがたかった。


ミランダは、万能型の魔法剣士で火力はそれ程でもないが、私達の足りないところをサポートしてくれていた。回復魔法や支援魔法も使えたので重宝した。


探索終了後、迷わずパーティーを組むことにした。



そしてここから私の復讐の旅が始まったのだ。

















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