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魔法は便利

 今は座学、魔法基礎の時間だ。今日は人気講師のマリー先生で、公開授業ということもあり、授業外の生徒も来て大変賑わっている。


 僕の隣にはアレクとコクコクしてハッとしてを繰り返しているゴンがいる。2年生の初めという事でちょー基本的な話で退屈なのは確かだ。


 さっきからゴンを見て周りは小さな声できゃーと喜んでいる。この授業が賑わっているのは先生ではなくゴンの影響だろう。


「ちょっとそこ、ちゃんと聞いてますか!ここ、テストに出ますよ」


「ふへ!?」


 先生に声をかけられ、びくっとするゴン。それを見て女子たちの黄色い声とEクラスの野郎どもの野太い声があがる。気分悪いがゴンは可愛いから仕方ない。可愛いは正義なのだ。


「それでは授業に戻りますよ。魔法は基本的に自身の魔力を用いて発動します。魔法には2種類、体内魔法と体外魔法が有ります。その名の通りこれらは体内で発動するものと体外で発動するもので分けられており、体内魔法の方が扱いやすく、基本中の基本のものが多いです。戦闘だけでなく日常的に生活でも便利な身体強化(エンハンス)回復(ヒール)浮遊(フライ)などが有りますね」


 すると先生はふわふわと浮かび上がると生徒たちはとりあえず拍手をした。先生はにこやかに笑い再び教卓へと戻った。


「ありがとうございました。次に体外魔法です」


 先生がゴンを指差す。すると風が吹きゴンの髪の毛がバサバサと揺れすっかり目が覚めた様だ。そしてすかさず隣にいたフィーが櫛で梳かしてあげている。


「今は魔力そのものを体外へと排出して風を起こしました。他には体に魔力の膜を纏う(アーマー)シールドがあります。しかし、これらは攻撃力があまり無く、魔力効率もあまり良くありません。その為、数十年前までは身体強化(エンハンス)(アーマー)をメインに戦う魔法戦士が魔物討伐の舞台で活躍していました。当時も魔法使いは存在しましたがごく稀でした。それは何故か、ゴンザレス・アザスター」


「は、はい!当時、属性魔法は才能があるものしか扱えなかったからです」


「そう、現在もですが属性魔法使いでないと強力な攻撃魔法を撃てず魔物に対抗できません。更に才能を持っている人でも1属性、ごく稀に2属性持ちの方も居るそうです」


先生は腰から杖をとり、構えた。すると杖の先から水の球が飛び出すが勢いは徐々になくなりある程度の高さで落下する。即座に火の球を作り出し水の球にぶつける事で水と火を相殺させた。


「残念ながら先生は属性を持っていません。なのに今2属性使いました。その秘密はこれです」


先生は構えていた杖を高く持ち上げる。


「秘密の正体はこの杖にあります。正確には術式ですが。杖に任意の術式を刻む事で好きな属性を魔力を流すだけで発現できることができる様になりました。そして武具には1つの術式しか耐えられないのに対し、杖は4つの術式に耐える事が出来ます。これによって魔法戦士と同等以上に魔法使いが戦える様になりました。さらに今では生活の至る所で属性魔法が使用されています。術式の登場、属性魔法によって急激に社会は発展し、人々の暮らしを豊かにしています。皆さんも将来様々な職に就くでしょうが魔法は切っても切り離せないものです。よく学び将来に役立ててくださいね」


ーーーーーーーーー


 放課後街の郊外、日が落ちてくると魔物はより活発に動き出す。


爆破(バースト)


 森から飛び出してきた狼型の魔物、魔狼に対して杖を構えて唱える。爆発した様な音と衝撃波で霧散して行く魔狼。群れで来ていたのか後から3体の魔狼が襲いかかって来るが動じない。


点爆破(ポイントバースト)


 杖を横に振り唱えるとレーザー光線が横に振られて剣で斬られたように3体は薙ぎ払われた。


 簡単に倒しているように見えるが魔物はかなり強い。体力の限界はなく俊敏で力は人以上。更に魔力を吸収する性質と穢れによって、魔力の弱いものでは魔法が届かず近づけば汚染される。一定以上の魔力量と対応できるスピードがないと話にならないのだ。


「フォルン様!おそらくこの先の洞窟が今回の発生源であるとされています」


「いつも通り魔物の対処は私がやる。他戦闘員は彼らの補助を。穢れの対処はよろしく」


「「「はい!!」」」


身体強化(エンハンス)加速(アクセル)


 エレナの班は戦闘員と穢れ対処要因で役割を分けている。穢れに対し複数の魔法使いがスライムを呼び出す。彼らはテイマー。動物が好む魔力属性を持つ属性魔法使いである。スライムは魔物の中でも例外的な存在。なんでも食べるスライムは穢れすらも食べ魔力に変換してしまう。魔力吸収行わず穢れも出さない為、魔物討伐を行う人達からは重宝されている。


 彼らが清掃作業を始めたのを確認すると身体強化し、凄い勢いで森に突っ込んでいく。足場が悪いのは関係なく、適度に浮遊(フライ)を使用する事でどんどんスピードを上げる。魔物を穢れを目印に次々と見つけ爆破していく。


「レンが待ってる。すぐに終わらせる。半自動点爆破セミオートポイントバースト


 頭上に1つの光の球が浮き、敵に杖を向ける。球からレーザーが魔狼に向かって放たれる。さっき以上の効率で魔狼を討伐し、勢いはそのままで洞窟に突っ込む。造りはシンプルな直線状だった。球の灯りで視界を確保し、杖を振ると次々と魔狼をレーザーで薙ぎ払って行く。ボスっぽい大きめの魔狼もそのまま斬られ消滅していく。これで今日の任務は終わり。


「早く帰らなきゃ、煮物…」


 振り返ろうとした時、恐ろしい気配が現れた。


「あれ〜、せっかく集めてたのに〜。見つかっちゃったの〜」


 暗闇から1人現れた。人型ではあるものの頭には角、背中には蝙蝠のような羽を持つ生き物。考える前に身体が動いた。


4属性爆破(バーストカトル)


火、水、雷、土を込めた必殺の攻撃魔法、更に追加で完全自動点爆破フルオートポイントバーストを7個展開し、(アーマー)も展開する。敵か味方か何者かも確認せずに今できる全てを解き放つ。


「けほけほ。なにこれ、こんなの撃っちゃ駄目でしょ〜。危ないじゃない」


 そこには無傷の化け物が立っていた。


「魔法が発動しない…魔力がないのに防がれた」


 完全自動点爆破は指定対象の魔力を標準として撃ち続ける攻撃魔法。つまりこの魔法が発動していないと言うことは化け物は魔力がなく魔法を使わず4属性魔法を防いだ事になる。しかもこの穢れだらけの空間で諸共せず穢れも出していない事から魔物ではない何か。


 分からない敵に対抗する策を模索しようとするが、突然化け物は動き出し、目の前に現れた。そのまま腹を殴られ、かなりの強度で作った鎧を貫通され吹き飛ばされる。壁に叩きつけられるがなんとか意識を保ち回復(ヒール)する。再び鎧を発動するが化け物の姿がない。


「ここよ」


 次の瞬間ゾワっと鳥肌が立つと隣に現れた化け物に顔面を殴られ洞窟の外に吹き飛ばされる。今回は早めに浮遊を使う事で勢いを殺し、木に叩きつけられる寸前で耐える。


「貴方、だいぶ強いわね〜。見たところ教会の人みたいだけど…アンティリーカの差し金かしら?ゴスペルじゃなさそうだけど。歳は学生…噂の聖女様かしら?固有属性爆破は噂以上の破壊力ね。自慢のお洋服が汚れちゃったじゃない」


 今までの魔物と比べ物にならないフィジカルと人間離れしたスピードに対応出来ず、辛うじて受けるのが精一杯。最大火力の攻撃魔法が効かない時点で既に勝ち目は薄い。だがこんな危ない奴を街の近くに野放しにするわけにはいけない。対して化け物は余裕ありげに服についた砂埃を払いながらぶつぶつと文句を言っている。


「そう言えば、魔力無しと仲良いんだっけ?」


 化け物はふと思い出した様に呟いた。エレナはその言葉を聞くと目を見開き殺気が溢れ出した。


「お前は殺す」


「あら、酷い顔。仮にも聖職者なんだからそんな顔しちゃいけないわ〜。私あなたに何かしたかしら?ま、見つかったら殺すから関係ないけど!!」


 圧倒的な相手に何も出来ずにやられる。化け物が動き出すが身体が動かない。才能もあり、努力もしてきた。自身はあったが慢心はなかったはず。だが、格上がいることの想定はいつからかなくなっていた。私が負けるはずがないと思い込んでいた。今更反省しても仕方がない。そっと目を閉じた。


「今宵も其方は美しい、姫」


 殺されると思った瞬間、化け物以上に恐ろしい気配、魔力を持った存在が間に入って来た。目を開けると化け物も驚いたようにしており、私と同じく体が動かせず声も出せないようだ。黒髪に襟の立った黒いロングコート、背中には十字架の剣、目元はシンプルな仮面で、黒い包帯で撒かれた右手で顎クイされる。


 見た事ないくらいダサい知らない人に顔を触られ、後ろに引くとそのまま腰に手を回され逃げられない。


「おっと、姫。顔が熟れた果実の様に紅くなっておられる。さて、姫をこの様にした貴様にはお仕置きが必要な様だ」


 言葉選びも不快な変態に掴まれていた身体が解放される。嫌なのに心地良さを感じてしまう。身体があり得ないぐらい軽い。傷は治癒され破れていた服まで直っている。この変態が何者かは分からない。敵が味方も判断できない不審者だが、敵意は向けられなかった。むしろねっちょりした好意のようなものを感じる。


「あんた何者〜!?なんかまずそうなんだけど、逃してくんないわよね〜」


「貴様には姫の受けた苦しみを味わって貰ってからご退出願おう」


 瞬間、変態が消えたと同時に化け物も消え目の前の山が崩れた。


 遅れてもの凄い爆発音がしたと思ったらさっきまで化け物が居たところに化け物が吹き飛ばされてくるとスッと変態が隣に戻って来た。


「ちょっと!?山!!」


 生まれてこの方出したことない声が出てしまった。


「何も問題ない。あの周辺の生命体には一切危害はない」


「んなわけない!!んんん?????」


 さっき崩壊し、大災害レベルの土砂崩れを起こしていたはずの山が何事もなかったかの様に戻っていた。山の代わりにエレナのキャラが崩壊を始めている。


 変態はぐったりした化け物の頭を掴み、少しすると成程と何が分かったのか分からないが1人納得して化け物を魔法なのか消滅させた。


「姫、それではまたお会いしましょう。我はいつでも貴方の味方貴方の陰。渾沌卿カオスロードは貴方を慕い、貴方を御守りします」


 そう言い残し、溶けていく様に消えた。


「なんなの…」


 腰が抜けてしまって動けない。少しすると仲間のテイマー達に発見されて教会へと帰還した。

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