八話、その頃
◆◇◆
魔術塔 最上階 定例会議……別名:暇人どもの集い。
「なんかおもろい件ないかー?」
「無い、よ……」「私の本『彼氏が男の娘にされてチャラ男に寝取られた』なら貸してもいいわよ」
定例会議では黄金郷の各部署に割り振る予算についての話合いが行われている――――最初の数分だけ。
「名目上は、会議だよ……もう少し……姿勢を正して」
「うぇー、いいじゃないかよ。会議の内容は全部決めたんだから――――長が」
「そうね。特に何もしない時間だもの、今回はこのホモ野郎に同意するわ――――長が」
「長は何も言ってないけど!?」
姿勢を正すよう促した少女――――ジータはため息を吐きながら姿勢を崩す。
この場所には現在、4名の魔術師が存在する。その全てが魔術塔では上位のランクを有しているものたちだ。
第4位 ジータ・(ファミリーネームは不明)
身体に拘束具を巻きつけており、その拘束具はジータの顔すら覆うほどものだ。
この少女が道端に転がっていたら、ミイラと見間違うほどに拘束具で雁字搦めにされている姿はそれだけで異様だった。
「まあいい、や……面白い話、だっけ?」
「おう」
それに応えたのは上半身裸で乳首の所に星のシールを貼ってるムキムキサングラス男。今週に入って職質された回数は28回を超える。
第3位 ホーモル・ゲイザー
「目の前にいる存在が、面白い男の話じゃ駄目……?」
「……? なんだ? また持ち前の心眼か?」
「…………うん、実はそう、なんだ」
「諦めないでくださいまし!?!?」
それに返答したのは魔女っぽい女(巨乳)だった。胸にはロマンが詰まっていた。
第6位 本名不明
二つ名:魔女
「じゃー魔女さんよー。お前さんは何かねえの?」
「ええ……そこでワタクシに振りますか。
むー、そうですわね。では第99位ドレット・クォーターが天使を連れている……というのはどうでしょう?」
ダンッ、と勢いよく立ち上がるホーモル。勢いよすぎて椅子が吹っ飛んだ。
「天使!? 男か!? 男だな!? そして妙にエロい格好してるんだな!?」
「断定!? というか発情しないでくださいまし!!」
「発情じゃねえ!! これはボ〇キと言うんだ」
「言い方が御下劣になっただけですわ!?!? というか女の子ですわ!! というか下半身を指差さないでくださいまし!!」
女の子を言う単語を聞いたホーモス。
「あっ、じゃあいいです……」(スンッ)
(´・ω・`)としながら席に座った。背筋がぴーんとしてた。礼儀正しい!
「このホモ殺しても罪にならなそうね」
「早まらないで……」
「でも、天使なんて、珍しい……」
「そうねえ、世界が始まった時から鎖国やってる引き籠り陰キャ集団ですもの」
「何か、おこるの、かな……?」
「うーん。分かりませんわ。
ただ、天使……アリエス、という子なのですが、彼女には特に注視する必要はないと思いますわ」
「なん、で……?」
「いやね、今朝見たのだけれど――――奴隷の魔術契約されてたのよ。ドレッドくんの性奴隷として」
シーン、と静寂が舞い降りる。だが一秒立てばすぐに。
「「はあああああああああ!?」」
戸惑いを込めた叫びが響いた。最初にだんっ、と立ち上がったのはホーモス。
「誰だよその女!!」
「まずお前がドレットくんの何なのよホモ」
次に困惑の声を出したのはジータ。バグってた。
「レズ!? レズなんて、百合……!?」
「頭バグってるわよジータ」
ジータはそれを指摘されてようやく頭のネジが嵌ったのか落ち着いた。
「――――時間となりました。会議を終了させていただきます」
そんな場を一気にひっくり返したのは執事服の麗人だった。
その印象は一言、ただただ冷たく鋭利な刃物を思わせる男だ。
第2位 本名不明
二つ名:黒剣
――――第一位代理
会議が始まり次第、予算分配や決めるべきことを全て並べて異論があるなら言ってみろ。と告げる
その手腕は完璧であり、誰も文句を言わずに、開始僅か一分で全てが決まる。
その後はずっと時間までただ黙っている。その行動は最早意思のない人形としか思えない有様でる。
先ほどまでその部屋にいたというのに一切声を発さなかったのはただ一言、興味がないからだろう。
「お? もーそんな時間かよ。おつかれー、長代理」
長代理。そうこの場には第一位のものがいないのだ。第一位、その正体は誰も知らず、公の場にもほとんど出てこない存在だ。
その代わりに出てくるのが先ほどの男。第一位にありとあらゆる執行権をゆだねられている事実上のまとめ役――――黒剣。
その声に一切耳を傾けずに部屋を後にする黒装の男。余りにも徹底した従僕の有様は最早清々しいほどである。
「アイツ、本当に何が楽しいんだろうなー」
「さあ? 長の足でも舐めることとかじゃないかしら? じゃ、お先ですわ」
次いで魔女も部屋を出る。
「じゃあ俺もーっと。しかしドレットか、嗚呼……ずっと前から良い男だと思ってたんだよなぁ……♂」
バタン、とホーモスも部屋を出て、残るはジータだけになった。
ポツンと残るジータはふと、呟いた。
「……? ドレッド、くんて……? 女の子、じゃないの……?」
椅子に体育座りして、頭に指を押し当てて唸るジータ。
「え? あれ……? む、むー……?」
そして何かを調べ終わったのか、落ち着いてから顎に手を付けて首を傾げる。
「やっぱりあの子、女の子じゃない……?」
しかしその呟きを聞いているモノは、誰もいなかった。
◆◇◆
魔術塔/20階 - 円卓の議会室
巨大な円卓のテーブルを囲い、会話する魔術師が2名。そこにはいた。
彼らは黄金郷でも中位に位置する魔術師たちだ、
「カルクスが負けた……?」
「あの努力は一切しないが才能で宮廷魔術師となった異端児が……才能がゲロカスうんこのドレッドに……?」
「くくく、だが奴は四天王の中でも最弱……」
「儂ら二人しかいないけど?」
…………、微妙な空気が流れた。一人称が儂の奴がミカンを食った。
「…………くくく、だが奴は三天王の中でも最弱」
「そこ、三魔将とかでよくね?」
…………、微妙な空気が流れた。
「…………くくく、だが奴は三魔s」
「儂ら、ランク70代じゃけどね?」
…………、微妙な空気が流れた。
「死ねや゛お゛らァァッ!!!!」
「ぼぎゃあああああああああああ!!!!」
ブチ切れた一人が冷凍ミカンを鼻の穴に突っ込んでジャーマンスープレックスで机を破壊にしながら減り込ませた。
「このゲボがうんち食べて死ぬかああ!?!?」
「ほがっ!?」
「はああああああああ!?!? 今お前うんちのこと馬鹿にしたか!?!? したよなあ!?!? スカ〇ロ本5000冊テメエん家のポストに突っ込んで近所から白い眼差しを向けられるようにしてもいいんだがなああああああああああ!?!?
来世はスカトロ伯爵の名を欲しいままにしやがれゴミカス!!!!」
「ほぎゃああああああああああああああああああ!!!!」
ケツの穴に向日葵をぶっさしてすかとろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!! 更なる芸術でゴッホの誕生、ゴッホに謝れ。
「スカ〇ロを馬鹿にするやつは……許さない、誰であろうと」
黄金郷 第71位 本名不明
「カルクスは良い奴だった……我の差し出したスカトロ本を全て顔の部分をドレッドと自分の写真にして楽しんでいたいい奴だった……
あんなに良い奴が負けるわけがない……となれば」
二つ名――――
「ズルをしたのか……!! ドレッド・クォーターあああああああああああああああ!!!!」
――――肥溜め伯爵。
「貴様、この黄金郷で……黄金のソ〇タで、我の目を欺けると思うてかああああああああああ!!」
更なる魔の手が、ドレッドへと襲い掛かる。