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七話、真ヒロイン

◆◇◆


 月曜日。ドレッドはいつものように仕事場へ赴いた。そこにはアリエスの姿もあった、彼女は現在。ドレッドの弟子、という名目で着いてきていた。


 歩くだけで周囲の視線をかっさらうほどの美少女。それが神の流産とすら呼ばれた魔術師といるという光景はなんだか近寄りがたい雰囲気を出していた。



「ああん? おいおいおいww

 何この子? え? 可愛いじゃんww」


「カルクス卿、お早う。

 で、朝の挨拶はどうしたかな?」



 挨拶ファイアボールが飛んできた。


 ドレッドはそれを当たり前のように掻き消した。



「……」



 カルクスが驚きに目を見開く……が、すぐさま調子を取り戻してアリエスへと近寄った。



「なあ無才くーん。

 この子、オレにくれねえ? www」



 肩にぽんっと手を置かれた。アリエスはこっそり魔法を使った。



「(ドレッドに女!? オレというモノがありながら糞糞糞糞糞糞!!

 ああああああああああああああああああああ!!)」




「…………」



 冷や汗でびっしょりになりながら、青い顔でカルクスを見上げるアリエス。



「悪いな、この子は俺のモノなんだよ。他当たってくれ、カルクス郷」



 そう言い払い、アリエスは気が付けばドレッドに手を引かれて腕の中に閉じ込められていた。



「(俺の女って、俺の女って……じゃあ、オレはお前の何なんだ……!?)」


「(!? 魔法切ったのに 聞こえてくる……!?

 思念が強すぎる……!?)」



 強すぎるカルクスの思念。それはある種の超能力染みた効果を発揮した。



「じゃあよぉ、決闘で決めねえ? 魔術師らしく、よォww(その女から離してすぐに目を覚まさせてやる……!)」


「決闘、か。

 相分かった、受けてたとう」



 決闘制度。それは黄金郷で認められている魔術師同士の取り決めの一つ。


 曰く、至高の根源を目指す魔術師ならば力を以て敵を討て。


  とのことらしい。簡単に言えば〝ライバル同士で争えば成長できるよね〟ということらしい。



「はっ、オレのファイアボール♂に泣いて媚び諂えよ(オレがほしいのは、お前だけなのに……)」



 チラリ、とカルクスは腕の中にいるアリエスを見た。舌打ちする、どんだけドレッドに近付く女が許せないのか。



「明日、12時に第一修練上で決闘だ。お前が予約しとけよーww無才くーんww

 (ああ、糞ッ。なんで素直に言えないんだオレは……)」



 カルクスは背を向けて気障にコツ、コツ、と音を立てて去っていく。


 腰が曲がって、若干の前屈みになり。ポケットに手を入れる姿は不良そのもので。



「(いや、分かり切ってたな……拒絶されるのが、怖いだけか)」



 その不良ポーズが……ポケットに手を入れる(拒絶されるのが怖い)という動作(想い)を、誤魔化すためのものだとは、誰も知らない……。



「(はっ、これじゃあまるで手弱女だ……情けねえ)」



 ポケットに手を入れたまま、涙するカルクス。アリエスとドレッドには位置的にその姿が見えなかった。



「……とおとい」


「アリエス??」



 そしてアリエスの呟きだけが残った……。



◆◇◆


 アリエスです。ドレッドさんがカルクスという男と決闘することになりました。


 カルクスが勝ったら私はドレッドさんから離れなければいけなくなります。



「(今のドレッドさんなら、そんなことありえないだろうけれど

 ……もしもカルクスという男が勝ったら……?)」



 嫌な予感がした――――



 ◇


 ~倉庫(薄暗い)~



『や、やめろカルクス、何の真似だ!!!』


『先輩が、先輩が悪いんだぜ?? オレの気持ちを分からない先輩が、こうさせたんだ』



 椅子に縛られているドレッドさん、甲冑縛りだ。


 それを見下ろして不吉なオーラを垂れ流しにしているカルクス。


 カルクスの手には――――短パンニーソが掴まれていた。



『やめろ……その短パンニーソは、なんだ……!! 止めろよ!! 絶対にやめろよ!!』


『誘い受けかァ? おいおい、今更可愛い顔したって無駄だぜぇ……?』



 ドンッ、と乱雑に椅子を蹴飛ばすカルクス。倒れ込むドレッドさん。



『ふふふ、ふははは……いいかあ? 先輩……』



 カルクスは便所座りになり、短パンニーソをすすーと、ドレッドさんの足に通しながら囁いた。



『この短パンニーソ……さっきまで俺が履いてたんだぜ』


『やめろおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』


 ◇


「いやあああああああああああああーーーッ!!」



 アリエスは来るべき未来に発狂した。



「いや!! いやああ!! ドレッドさんは、アリエスの。アリエスのなのにいいい!!」



 苦し過ぎて頭を抱えて涙する。こんな未来いやだと泣き叫びまくる



「だめ、だめです!! ドレッドさんがドレッドさんがぁっ!!!

 う、う、うああああああああああーーーーーん!!」



 隣に寝てるドレッドのシャツの中に潜り込んで胸板に顔をすりすりしたりしだすアリエス。発狂状態だ。そしてその中で、彼女は悟りを得た。



「か、かくなる上は!! もう、もう……!」



 キラーン、ハサミをアリエスは手に取った。



「ドレッドさんの、メインウェポンを……斬るしかない!!」



 奪われてしまうぐらいなら、もういっそ自分にしか分からない場所に保管しよう!! 悲しいけれど仕方のないことなんです!!


 そう決意して――――ドレッドはその短い人生に幕を下ろした。

殺さないで

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