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五話、手を出すのが速い奴は途中で捨てる気(偏見)。軽い女にならず、男がしそうとしたら蹴り飛ばそう!(暴力は犯罪)

◆◇◆

 土曜日 4時02分。



「…………」



 俺は机に置いてある紙を握り、そこに書いてある文面に目を通す。


 ほんの少し、ウトウトしていたらアリエス嬢が姿を消し、代わりにこれが置いてあったのだ。


 そこにはアリエス嬢の〝自己認識〟とそれに対する謝罪、また対応が綴られていた。



『私は屑だから死にます』



 要約すればそういうこと。



「……なるほど、これは見誤ったな」



 紙を握り潰して外へ全力で疾走した。



 ――――魔力探知、波長は覚えてる。


 ――――範囲100 足りない

 範囲2000 まだ足りない。


 範囲50000――――アリエス嬢の場所を見付けた。



「(どうも、あの子の抱える闇は目を逸らしてはならない規模だったしい……嗚呼、糞……俺のミスだ)」



 強化魔法を掛けて屋根へと飛び、距離を短縮する中、俺は思った。


 他者の闇に対する見切り、対応に前処理。何もかもが中途半端なものばかりだった。



「(やはり俺は、どうしようもない愚物だったらしい。

 才能に素養があったところで根は変わるわけがないというに……何を自惚れていた俺は――――これが現実か)」



 現実は痛くて、苦しくて、悲しくて、笑えるぐらいに狂ったモノばかり。


 それを体験してきたつもり、だった――――そう、〝つもり〟だったのだ。



「(現実が、追いかけてくる――――ああ、いつものだ)」



 掌が汗でびっしょりになる。でも走る、さらに加速する、足の耐久値がぐちゃぐちゃになるほどの超強化を施す。


 その中で、ふと〝とある決意〟をする。



「いた」



◆◇◆


 王都にある都と外を隔てる巨大大橋。早朝ということで外と繋がる外門は締まっており、いつもは賑わうその大橋も人がほとんどいない。



「…………」



 その大橋に、羽をはやした美少女が一人――――身を投げた。


 約100メートル下方には巨大な川。落ちればその衝撃で強烈な怪我が出来ることは容易に想像できる。



「(死にたい死にたい死にたい死にたい――――嗚呼、眠れるんだ、これで)」



 アリエスは死に場所を求めていた。何でもいいから〝死ぬ理由〟が欲しかった。


 死を許してほしかった、一人で勝手に死ぬことさえ出来ない手弱女は、最後の最後に他人を死の理由にしだすという最悪の行動をとっていた。



「…………?」



 ――――ゆえに。



「…………音……?」



 ――――嗚呼、ゆえにこそ。彼女の耳には微かな〝風を切る音〟が聞こえた。



「……? う、え……?」



 音の先を、興味本位で追い――――そこに全力で自分目掛けて墜落してくるドレッドがいた。



「ぅ゛ぇぇっ!?」



 次の瞬間、身体に襲い掛かる強烈な衝撃――――空中でドレッドに抱き締められていた。



「ど、ドレッドさん!?」


「黙れ、舌噛むぞ」



 ドレッドはアリエスを抱き締めながら耳元で囁く。



「あと、五話目で死ぬな。この先、ヒロイン出すのめんどい」


「メタい!?」



 ――――そして二人はドボーンと、川へ落ちた。いや飛べよ。





 ◆◇◆

 川の麓にて、ずぶ濡れの私を抱き上げるドレッドさんの姿があった。



「………」


「…………」



 何も言葉を交わさない私と彼。砂利の地面に、ずぶ濡れの私がそっと置かれる。



「アリエス嬢、君は俺の二つ名を知っているかな」



 初めに口火を切ったのはドレッドさんだった。



「二つ、名  しり ません……」



 尻餅をつく私に、立った姿勢で見下ろすドレッドさん。不思議と、その姿は狼と重なって見えた――――かっこいい。



神の流産(アンチ・ゴッデス)。曰く、神に見放された男……だそうだ」



 神の流産 神の流産。それは、私の犯した罪の一つだと思った。


 そして同時に私のことを比喩されている、そんな言葉のように思えた。



「それ、は……」


「――――実に、俺に相応しいなだなと思うよ。いやいや、本当にぴったりだ」


「……?」



 自嘲気味に、けれどもこれ以上なく無機質な声色で告げた。


 瞳に何か、紫色の光が見えた気がした――――何故だかその光が、私に救いを与えてくれる、そんな予感があった。好き。




『――――その件は自他ともに認めておるさ』


「嗚呼、そうだな。自他ともに認めているんだよ。俺はさ……」



 不穏な雰囲気を漂わせて、近寄ってくる彼。嗚呼、ダメだ……凄い。



「(心が、溶かされそう、に なる……♡)」


「どうも君には、奥手な手段はあまり効果を成さんらしい。

  だから無理矢理、手籠にして穢すことにした。どうも君には、その対応に方が良さそうだ」


「むぐっ」



 顎を強引に捕まれ、引き寄せられる――野獣染みた、けれども氷のような瞳が私を射殺せんと言わんばかりに向けられる。



「奪ってやるよ、その清廉さを、その純白な輝きを、全て、全て俺が喰い散らす」


「ぁ……♡」



 ――――強引に、唇を奪われた。


 そのキスは男らしくて、かっこよくて、少しだけエッチな味がした。

五話で手を出すな。




 世の中でよくある〝女性の性的消費〟ってのは作者みたいなやつに使われるべき言葉だと思う。


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