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短気な聖女は魔王の溺愛を回避したい  作者: 浅海 景


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迷惑な客

廊下の角を曲がると、予想していたとおり床に座りこんだ少年と女性店員の姿があった。

「怪我はない? 大丈夫ですか?」

声を掛けると店員は恐縮したように頭を下げ、少年に怪我がないか確認しようと手を伸ばす。その手を少年は乱暴に振り払った。


「謝りなさい!」

大きな声ではなかったが、有無を言わせぬ口調に少年がびくりと身じろぎした。

「店内で走って迷惑をかけたのに、このお姉さんは貴方のことを心配してくれた。それなのにそんな態度を取っては駄目だ。悪いことをしたら謝れ」


少年の目をしっかり見たまま叱ると、たちまち泣きそうな顔つきになった。少年が口を開きかけた時――――――――

「ジョシュア? まあ、何てことなの!」

派手な外見の女性が大げさなぐらいに眉を顰め、リアを睨みつけている。まるでリアが原因だと決めつけているような態度だ。

母上、と小さな少年の呟きを拾ってリアは一応説明した。


「ご子息が廊下を走って店員さんにぶつかったため、カップを割ってしまったようです」

ぶつかった衝撃で空のカップは勢いよく飛んだらしく、二人から離れた場所で割れていたため、幸い二人に怪我はなかった。

「可哀そうな坊や! 痛いところはないの? 評判のカフェと聞いていたのに従業員の質が悪いのね。 責任者を呼んで謝罪をしてもらわないと」

(無駄だろうなと思ったけど、予想以上の馬鹿親だな)

店員は必死に謝るが母親は聞く耳をもたない。


「息子のしつけもまともに出来ないのに他人に難癖つけてんじゃねーよ」

不快な金切り声がぴたりと止まった。

「息子のやったことの責任も取らずに謝罪しろ? 言ってて恥ずかしくねーの? 」


リアの言葉に、母親は顔を真っ赤にして眦を吊り上げた。

「平民の小娘が…、分を弁えなさい!」

激高し扇子を振り上げる姿に、どうしたものかと考える。

(傷害罪とか適用されるなら、殴られてもいいけど)


「何を、している」

冷たい声に全員の動きが止まった。静かな、だけど確実に威圧感を含んでおり、逆らってはいけない存在だと本能が告げる。たった一言でノアベルトはその場を支配していた。


「リア」

柔らかい口調に強張った体を動かすことができたが、微かに咎めるような響きを含んでいた。

「ごめん、なさい」

「何に対して?」

「戻るのが遅くなったことと、騒ぎを起こしたから」

「そうか、いい子だな」

言葉こそ優しげだが、怒っているのが分かった。恐らくはリアが謝ったことは見当違いで、ノアベルトが怒っている理由が別にあるのだと察しがついた。だけどそれが何なのか分からない。


「そちらの使用人は躾がなっていないのではなくて。 よろしければ当家が代わりをご用意いたし――」

ノアベルトの周囲の温度が一気に下がる。母親は最後まで言葉を告げることができず、恐怖に身体を震わせることになった。

(火に油を注ぐんじゃない! 空気読め―!!)

「っく、ごめんなさい!ごめんなさい!」

緊迫した空気に耐えかねたのか、少年が泣きながら謝る。


「リア、おいで」

その様子にも一切関心を見せずノアベルトはリアを呼んだ。傍に行くと、すぐさま抱きかかえられるが、文句は言えない。目は口程に物を言う。ノアベルトの怒りが一向に収まっていないことが、間近に顔を合わせて良く分かったからだ。


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