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ストーカーとらいあんぐる!  作者: 高畠莞爾
7/10

7話

 なんとか、智紗の怒りを収めながら、亜希を探し歩く。


「それにしてもデート中に彼女に見向きもせずにうわの空ってのは、私感心しないなー。」

「家族との買い物をデートと呼称しないでくれ。あと、彼女は三人称の意味だよな?な?」


「なに、本気にしちゃってんのー!もう、お兄ちゃんったら、私が彼女になることに、まんざらでもない感じ??」

「うざっ。」


 からかわれていることに気付き、突き放す。


「ひどーい!あ、買いたい漫画あるから、本屋寄っていい?」

「駄目って言っても行くだろ。」


 本屋の新刊コーナーに向かう。智紗は今、大流行の漫画の最新刊を手に取る。俺は、電子書籍でしか本を読まないので、買うものは無いのだが、話題の書籍が平積みになっているのを深く考えず眺めていた。


「あれ、上社くんじゃん。」


 声を掛けてきたのは、陸上部の朝倉さんだった。去年同じクラスだったので、名前くらいは知っているが話すような仲では無かった。亜希とは同じ部活で仲が良いらしく、度々話に出てくる。


「朝倉さん、こんにちは。」


 とりあえず、定型文のような挨拶を交わす。


「亜希ちゃんもよく言ってるけど、上社くんって誰に対しても素っ気ないよね。まぁいいや、上社くんは何の本買いに来たの?」

「特に何も。妹の付き添いで来ただけだよ。それより、朝倉さんは亜希と来たの?」


「亜希ちゃん?うちは一人だけど亜希ちゃん、エオン来てるの?」

「さっき、それっぽい後ろ姿を見かけたんだよ。もしかしたら、朝倉さんと一緒に来てるのかと思ったんだ。」


 もちろん、亜希は徳重さんをストーカーしに来ているので、朝倉さんと一緒では無いことは分かっているが、この情報を朝倉さんに教えることで、朝倉さんが亜希に連絡を取り、亜希はストーカー行為を中断せざるを得ないのではと考えたからだ。


「それなら、亜希ちゃんに電話してみるよ。」


 無機質な音階が流れ出す。無言の空間に耐えられず、俺の見間違いだったかな。そう次の言葉を発するつもりだったが朝倉さんはスマホを耳に当てはじめた。


「あのさ亜希ちゃん、今ってどこおる?」


「うん、うん。あ、そうなんだ。実は私もいるんだけど、集まらん?」


「おっけー、じゃドーナツ屋で。うん。」


 亜希の話している内容は聞こえないが、恐らくドーナツ屋で待ち合わせるのだろう。これで、今日の所は亜希もストーカーを諦めるしかないだろう。ちょうどいいタイミングで智紗も戻ってきたし、俺らは帰ることにしよう。


「あれ、お兄ちゃん。その女の人は知り合い?」

「まぁ元クラスメイトだよ。さ、そろそろ帰るぞ。朝倉さん。じゃあ、俺たちはここで。」


「え!?亜希ちゃんに会っていかないの?」


 朝倉さんは目を見開く。


「亜希ちゃん?なんで亜希ちゃんの名前が出てくるの?」


 実はかくかくしかじかで、と状況を説明する。


「なんでお兄ちゃんは、それを私に教えずに帰ろうとしたのかなー?怪しーなー?」


 亜希と会うと俺がストーカーしていることがバレかねないからなのだが、当然智紗には説明できない。何か良い解答は無いものか。


「ほら、あれだよあれ。」

「なんか、誤魔化そうとしてるのも怪しいし、亜希ちゃんとなんかあったの?」


「本当に何も無いから。話すことないから帰ろうとしただけだ。」

「ほんとかなー?」

「もういいから、行くぞ。」


 ここから逃げ出すのは無理があるし、大人しく2人に付いていくことになった。

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