1話
ストーカー×ストーカー×ストーカーの恋愛ものです。しばらくは毎日更新します。
俺の名前は、上社諒。高校2年のストーカーだ。
いや、待ってほしい、ストーカーと言っても正義のストーカーなんだ。言ってる意味が分からないって?それはこの後、追々説明していければと思っている。
「諒、まだ寝てるの?」
「今起きた。」
「もうお母さん、会社行くから智紗起こしてあげてね。それじゃあとはよろしくね。」
母が朝早く出かけた後、俺は妹を起こしつつ朝食の準備を始める。
「おはよー、お兄ちゃん。私、フレンチトーストが食べたいんだけど。」
そう言いながら、智紗がリビングへとやってきた。
「ご飯派の俺が、そんなオシャレなものを作るわけが無いだろ。智紗は冷蔵庫から漬物出してくれるか?」
「なんで私が手伝わなきゃいけないのよ。」
智紗は文句を言いながらも手伝ってくれた。
「「いただきます。」」
父は単身赴任で月に数度しか帰ってこず、母も仕事が忙しいことから、家事は俺と妹で担当するようにしている。二人での朝食を終えた後、学校へと向かった。俺たち兄妹が通っている植大高校へは電車に乗って20分くらいのところにある。
「今日も部活あるから、帰るのは7時過ぎになるから。」
「分かったよ。じゃあな、智紗。」
智紗と別れ、自分の教室へと向かう。
「うっす、諒。今日も可愛い子連れてたな。」
「妹なの知ってて言ってるだろ、将大。」
そんな軽口を叩いてきたのは、一番仲の良い友人の原将大だ。
「それにしても、諒は妹と似てないよな。あ、もしかして触れない方が良い関係だったりする?」
「将大が想像しているようなことは無いよ。ただ、俺が母親似で、妹が父親似なだけだよ。」
「なーんだ。つまんないの。」
「当たり前でしょ!何を勘違いしてるのよ!」
俺たちが話しているところに、一人の女子が割り込んできた。
「伏見さんってちょくちょく、俺と諒の会話に入ってくるよね。そんなに俺のことが好きなの?」
伏見亜希は俺の幼馴染で、幼稚園からの知り合いだ。
「そんな訳あるか!そもそも、原のことを好きな女子なんてこの学校にはいないわよ。」
「またまた、そんなご冗談を。え、本当じゃないよね?」
「残念ながら、クラスの女子の将大への評価は高くは無いよ。」
なぜなら、制服のカッターシャツの下からアニメキャラが透けて見えているからね。
「そもそも、その女の子は誰よ。」
「ふみふみだよ。そんなのも知らないの?」
誰だよ。将大は生粋のアニメオタクで、カッターシャツの下に推しのキャラのTシャツを着ている。
「あー、もう話全く通じないわね。友達来たし、そっち行くわ。」
そう言って、伏見は去っていった。ちょうど同じタイミングでとある女子生徒が教室に入ってきた。その女子生徒にクラスメイトの視線が集まる。
「「「「おはようございます!徳重さん!」」」」
クラスの男子たちが声を揃えて挨拶する。そして、女子たちは徳重さんのもとに集まってくる。徳重玲奈は、透き通るような瞳につやがある黒髪、陶器のような白い肌を持つ、この学校一の美少女との呼び声高い女子で、さらに容姿だけでなく、性格も聖人君子そのものであるとのことから、校内の男女から絶大な支持を得ており、毎日告白する生徒が絶えない。
「周りの男子と違って将大は、徳重さんのことそんなに好きじゃ無さそうだよね。」
「別に嫌いでは無いけど、俺じゃあどれだけ頑張っても付き合うのなんて無理だろ。まだ、ふみふみの声優と付き合う方がリアリティがあるだろ。」
いや、それも無いけどね。
「みんな、座れー。ホームルーム始めるぞ。」
担任の羽黒先生が来て、クラスメイトたちは席に付いた。このクラスは理系クラスなので、男女比は約3:1ほどだ。そんな男たちの群れに徳重さんという美少女がいれば、徳重さんに人気が集まるのも頷ける。
午前の授業が終わり、昼食時になったのでいつも通り将大と一緒に食べることにする。将大とは入学式で話しかけられてからの付き合いで、一年以上の仲になる。悪い奴ではないが、アニメの話は未だに全く分からない。
「恒常の順番を考えるにもうそろそろ、ふみふみが来てもいい頃なんだけどなー。」
「へぇ、そうなんだ。」
よく分からない話に、いつも通り適当に相槌を打つ。
「ちょっといい?」
そこに亜希がやってきた。
「どうかしたのか、伏見?ふみふみがいつSSRになるかの話に混ざりたいのか?」
「んな訳ないでしょ!諒に用があんのよ!」
「俺?」
「ここじゃ話しづらいから、来てくれる?」
そう言われ、亜希と廊下に出る。
「で、話したいことって何?」
「その、諒ってあの女のことどう思ってるの?」
「あの女って誰?」
「徳重玲奈よ。」
面白いと思ったら評価の方、ぜひ!お願いします。