黒崎先輩の危険な自宅ってこと!
徒歩で二十分くらい。
町はずれの黒崎先輩の自宅。オートロックでない八階建てのマンション。
エレベーターの近くの掲示板。
「住民の皆さんへ
ベランダからハンガーや洗濯ハサミが落ちないようにご注意ください。
ベランダからオモチャや本を投げないでください。
椅子など重いものを落とすことは、ほかの人に大変危険です。
絶対におやめください!
管理会社」
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「あのーー、ご家族は?」
「オレひとりだ!」
「えっ?」
「親父もお袋もな。うっとうしいことキライでさ。
マンション買ってひとりでオレを住ませたんだ。
よくあることだろう!」
そんなことって、よくあるんでしょうか?
エレベーターで八階へ。
さっきの掲示板の貼り紙、気になります。
エレベーターの中。
黒崎先輩がボソッと言う。
「お前、疑ってるだろう。
ベランダから椅子投げたのオレじゃないかって・・・」
僕、なんて答えたらいいの?
「なんでもかんでもオレのせいにするな。
さっきオレのタバコに火をつけたヤツがいただろう。
あいつだ。
あのバカ!
弁償させたけど・・・」
黒崎先輩の自宅を訪問。
だんだん後悔の気持ちが強くなっていく。
だけどさやかちゃんのプレゼントを取り戻すため、我慢しなきゃ!
黒崎先輩の部屋に入る。
ムッと煙草の臭い。
1LDKの部屋の床に灰皿。煙草の山。
高校の教科書やテキストが乱雑に床の上に積まれてる。
学校からのお知らせの紙が、あちこちに散らばっている。
<夏休みの過ごし方><一学期の期末テストについて>
スナック菓子を紙に広げた跡・・・
これだけで・・・
僕、いろんなこと分かりました。
灰皿の近くに煙草の空き箱が十箱近く・・・
「どうした?めんこい少年君」
「あの、煙草が・・・」
「ちゃんと灰皿あるだろう」
そういう問題じゃないと思います。
「飲むか?」
冷蔵庫からビールの350ml缶を出してくる。
この人、本気で言ってるって思う・・・
「黒崎先輩ってビール飲むんですか?」
「来客用だ!」
少しだけホッとした。
「オレはこれだ!」
梅酒の1ℓパックを取り出す。
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