黒崎先輩の条件ってこと!
「で、めんこい少年。
その真っ黒になった幼馴染みのウサギどうするんだ」
「洗ってきれいにします」
「ムリじやねえのか?」
「何時間かかったって元に戻します」
涙が地面を濡らしていく。
「僕の一番大切な人からの大事なプレゼントだから・・・」
「大切な人からの大事なプレゼントは、真っ黒に汚されるのを黙ってなにもせずに見てて、それから何時間もかかって元に戻すワケか」
僕、知らん顔で横向いた。
次の瞬間!
思わずよろめいた。
もう少しで倒れるところだった。
取り戻したばかりのウサギが、また黒崎先輩の手の中にあった。
「返してください」
泣きながら黒崎先輩に呼びかけてた。
黒崎先輩ったら、手に持ったウサギをブラブラさせて笑ってる。
「ライターで焼くか?川に捨てるか?
これで何時間も洗う必要ないだろう」
黒崎先輩の顔に悪魔の笑み。
「お願いです。返してください」
黒崎先輩に何度も頭下げた。
「じゃあ、オレの家に一緒に来い。
それが条件だ!」
思いがけない言葉。
僕、どうしたらいいか分からない。
そっと下を向く。
「イヤならウサギは返さない。
サッ、めんこい少年君。
どうする?」
頭の上で黒崎先輩の憎たらしい声。
聞きたくないのに聞こえてくる。
心の中。さやかちゃんの笑顔と向かい合う。
きっとまた見るんだ。
さやかちゃんの笑顔。
そして手をつなぐんだ。
だから・・・
さやかちゃんのウサギ取り返さなきゃ・・・
それがさやかちゃんを守るってことだから・・・
「めんこい少年君。
どうして黙ってるんだよ。
君って頭いいもんな。
絶対勝てない相手にはなにも言わないんだろう。
さすが優等生だな」
僕、顔上げた。
「僕、」
「オッ、話をする気になったか!」
僕に残った最後の最後の少しだけの勇気。
黒崎先輩をにらみつける。
でもすぐ目をそらした。
「不良の黒崎先輩が大キライです!」
言えた。なんとか言えた。
すぐに涙が続いたけど・・・
「僕、一緒に行きます・・・」
黒崎先輩が僕の手を握った。
大きくてあったかだった。
なんだか不思議な気持ちになって黒崎先輩を見上げた。
「かっこよかったぜ」
黒崎先輩ったら僕の方見てくれない。
どんな顔してるか分からない。
「相川君!」