【独白】 一色 桜子(いっしき さくらこ)(16歳)
『幸福論』というモノがあるそうです。
人が幸福に生きていくにはどうすれば良いのか、というお話らしいです。
それだけ幸福になるのは難しいということなのでしょうか?
「私にとって幸福とは何なのか」とたまに考えることがあります。
たぶん、それなりの十六年の人生を歩んできたと思います。これから先、それなりの大学に進学して、それなりの恋愛をして、それなりの結婚をして、それなりの家庭を作り、それなりの老後を送るのだと思います。
それが世間一般で言う幸せなのでしょう。
「どうしてそう思うのか?」と聞かれれば、皆そうしているから、としか答えられない。この枠から外れようとすると皆、私を否定すると思う。たぶん……。
だけど、私はその誰かが定めた幸福を幸せだとは思えない。
私がズレているのか、はたまたこの世界が私に合わないのか。私がズレているのなら、私が変わればいい……のだけど、そうは成れないと思う。少女漫画みたいな恋愛を夢見たこともあったけど、現実でそんなドキドキは無いし、部活など打ち込めるモノを探したけど私を満たしてくれるモノは結局見つからない。
じゃあ、「世界が変われば?」とは簡単に言えますが、私のために世界は変わってはくれない。それくらいの分別はあります。
世界が変わらないなら、私に合った世界を探しに行こう。幸せを探す旅に出よう。などと抽象的な夢を語るには世間様(友達)の目は冷たい……。
結局、私は燻ぶった毎日を送るしかない、といった感じでした。
そんなある日、「夜に流星群が見れる」という話を友達から聞きました。
午後八時頃には見られるらしかったので、私は学校の帰りに近所の高台から流星群を見ることにしました。一人で。友達を誘うつもりはありませんでした。何故なら私の目的は流星群を見ることではなかったからです。私の目的は流れ星にお願い事をするという大変子供じみたものでした。流れ星に願い事をすれば叶う、などという迷信を信じ切っているわけではありません。このまま燻ぶっているくらいなら、何か些細なことでも行動を起こした方が良いと思ったからです。
昔の人がこんなことを言ったそうです。
『一つもバカなことをしないで生きている人間は、自分で考えているより賢明ではない』
だから私は流れ星に大声で、こうお願いしました。
「私の独断と偏見で『美女』が『幼女』に成りますように!」
私は常々思っていました。
幼女こそがこの世界から争いを根絶するための抑止力に成り得ると。可愛いは正義という言葉がありますが、その通りだと私は思います。可愛いものがあればそこに憎しみは存在せず、可愛いものを愛でることで心は潤い、人は優しくなれるのだと。人は純粋なものに惹かれます。幼女もそう、純粋なのです。だから惹かれる。しかし、大人に成るにつれその純粋さは無くなっていきます。どんなに美人であっても純粋さを失っては輝きはないのです。だから私は彼女たちを輝いていた、あの頃に戻してあげたいと思ったのです。人によってはそれを独善などと呼ぶ人がいるでしょう。しかし、そこには恒久的平和を願う私の純然たる願いがあることを理解して欲しいと思うわけです。
誤解がないように言っておきますが、私はロリコンではないです。そして、ペドフェリアでもない。この幼女を思う気持ちは、溢れ出る母性なのです。
そう、正しく『愛』なのです!
まあ、そんなことがあって今に至るのですが……。意外と迷信も捨てたもんじゃないな、と思ったりしています。
端的に言えば願い事が叶いました。
では、「願いが叶って幸せか?」と聞かれれば首を傾げます。
でも、まあ、前向きに生きていきたいと思います。
それが一番大事だと、幸福論にも書いてあると思うし。
それで今、私こと一色桜子はというと――
異世界で、半裸の女王様に顔面を踏まれています。ピンヒールで……。




