第0話 地面掘ったら何処にでも伝説のレアアイテムが埋まっている世界なのに俺だけコモンすらでねぇって何の嫌がらせだよ神様
「ここにもねぇ!」
俺は壊れて動かなくなった携帯型ドリルを放り投げた。
地面の中には無数の伝説が埋まっている。
だが、俺はこれで一度もアイテムを掘り当てた事はない。
そうこうしている間に目の前に二階建ての家ほどあろう巨大な青タヌキ型モンスターが迫ってくる。
上等だ!
男は黙って拳で迎え撃つ。
「芭蕉扇〜!」
割って入った間延びした声に似合わない派手な突風が青タヌキを転がしていく。
あっという間に彼方へファラウェイ。
「R伝説の芭蕉扇ねぇ、意外に使えるわね〜」
ピンク髪のインラン女が誰に言ってるのか独りで喋っている。
「アッレー? 銀色の人じゃん」
寂しいからって話しかけてくんなピンクブス。
それよりもモンスターに集中しろ!
すぐに戻ってきた青いタヌキの他、赤いキツネや黄色の大ネズミやら巨体が10体並んで壁を作ってやがる。
って時にピンクはドリルかよ!
仕方がないので、地面に落ちてるピンクブスが掘り当てた芭蕉扇とやらを使わせてもらう。
「うおおおおおおお!」
風は起こるが、前のピンクブス程の威力は無い。
青タヌキの巨体を転ばせた突風も俺が扱えば足止めが良いところ。
例外を除けば他人の掘り当てた伝説のアイテムには呪いの方がマシレベルな大幅な制限が掛かる。
「のおおおおおおお!」
芭蕉扇がぶっ壊れてしまった。
と、こんな風に酷い時には伝説がこの世から消えてしまう。
「ががががが、てれってってて〜! SSRゲット〜!」
ちょっ!
人が掘ってたところでハイエナSSRだと!
何と妬ましい死ね!
「よーし、がんばるぞぅ」
ピンクブスが掘り当てたばかりのドス黒いオーラに包まれた野太刀を抜いて正眼っぽく構える。
「第14代物、村雨。暗黒一閃〜!」
刀からドス黒いオーラそのまま斬撃が飛んでモンスターの壁を真横に引き裂いた。
ご覧の通り小娘の腕力だろうとSSRの武器であればこの破壊力。
「あらら」
ピンクブスの足が泳ぐ。
エネルギーを食う系の武器っぽい。
「大丈夫か?」
「ダーリン♡」
今にも倒れそうなピンクブスを受け止めたのは、イケ好かない色白ン毛。
「見て〜SSR引き当てたの〜。私よりもダーリンに合ってるから使って〜♡」
唯一の例外がコレ。
心の通い合ったカップルであれば武器の使い回しが可能というクソルール。
その為、モンスターハンターは二人一組のカップルで行うクソ常識が横行してやがる!
あ!?
俺は一人だっつーの!
俺の運の悪さを補い、武器を提供してくれるパートナーさえいれば、俺は誰にも負けねーのによぉ!
「銀色の、我々は先に行くぞ」
「じゃーね、銀色の人〜」
手を繋ぎながら選りに選ってスキップで!
ここは狩場っていうかモンスターが蔓延る戦場だぞ!
なんて神経してやがるんだピンク脳供が!
う、裏山……
「くそがあああああ!」
未使用のドリルを天に向かって放り投げた。
あっという間に雲を突き抜け星となる。
この圧倒的スペック!
ハッキリ言って人間的ステータスで言えば俺はレベル99のオール255と言っても過言ではない。
だが、クソッタレな事にこの世界では伝説の装備が全てなのだ。
攻撃力255でも1をかけたところで255にしかならないし、攻撃力10でも100を掛ければ1000!!
伝説の装備がテラチート過ぎてヤバイ世の中としか言いようがない!
生まれてくる世界を明らかに間違えたとしか思えねぇ!
「……何だありゃ」
奥の方、色白ン毛たちがスキップで目指してた場所あたりに白い光の柱が落ちた。
1秒遅れてピンクブスが起こした芭蕉扇の風が比較にならない程の突風に吹っ飛ばされる。
「ぬおおおおお!!」
無様に転がった後、木に貼り付けられた所で風が止んだ。
俺は突き動かされるように爆心地であろう光の柱見えた場所に向かう。
向かってる途中で平原だった場所にドデカいクレーターが見えて、気付く。
「ありゃ、死んだな」
消し飛んだであろう色白ン毛とピンクブスに手を合わせて「ザマァ」と念仏。
終わった奴らの事はさっさと忘れて爆心地。
「思った通りだぜ!」
台座のような不自然なクレーターに捧げられるように刺さっていたのは見るからにモンの凄い七色のオーラに包まれた剣、いや聖剣!
そう。
さっき天に向かって放り投げたドリル!
俺の伝説は地中では無い!
天から降り注ぐ物だったのだ!!
聖剣の柄を握る。
頭の中に流れ込んでくるこの伝説の映像。
泉に沈められ、昇華し、神となった最強の聖剣、エクスカリバー。
ランクはLSR!
「うおおおおおおお!!」
勢いよく引き抜いた際、刀身から剣閃一条。
飛んで行った七色のそれが町の方向へ……
「のおおおおおお!!!」
奇跡的に死人は出なかったが町は壊滅。
俺はLSRのエクスカリバーを没収され、モンスターハンターの資格を失った。






