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遅刻したら何かが起こった

 今でも、あの光景を夢に見る。

 何かがぶつかる大きな音、吹き飛ばされる友達、地面に広がる赤いシミ。

 助けようと思って伸ばした手は何も掴めず、ただオレの所為だという自責の念だけが残ったあの光景を。

 あの日、オレが遊びに誘わなければアイツは死ななかった筈だ。

 あの日、大丈夫だからと言って遠出しなければアイツは死ななかったはずだ。

 もし、アイツの手を掴んでいたならアイツは死ななくて済んだはずだ。

 場面が変わる、今度は学校だ。

 学校ではアイツが死んだことをみんな悲しんでいたが、誰もオレをせめなかった。

ーーーー何で。

 アイツの親も、オレに何も言わなかった。言ってくれなかった。

ーーーーなんで?

 せめられた方が楽だった。何で、お前が生きているんだとか言われた方が良かった。

 なのに、周りはオレに優しくした。

ーーーーナンデ?

 あの日、オレがアイツを遊びに誘わなければアイツは生きてた。

 あの日、遠出をしなければアイツが死ぬことはなかった。

 あの時、オレが手を掴んでたらアイツは死ななかったんだ。

 全部、オレの所為なのに何で、誰もーーーー。

 場面が再び切り替わる。そこには何もなく、ただ幼い頃のオレが立っているだけだ。


『何で、みんな何も言ってくれないんだ……。

 言ってくれよ、お前のせいだって。お前が全部悪いんだって……、言ってくれよ……っ!』


 その時のオレの心情を幼ない頃のオレが言う。何度も、何度も、何度も言う。

 そして、最後には決まってあの言葉を幼ない頃のオレはーーーーオレ達は言う。


「『本当に、オレなんてーーーー』」


ーーーー消えてなくなればいいのに。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






 ピピピピピと目覚ましの電子音が聞こえて目が覚めた。

 目覚ましを止め、寝巻きから制服に着替えたオレはそのまま脱いだ寝巻きを手に持って洗面所へと向かう。

 洗面所の近くにある洗濯機に寝巻きと昨日の洗濯物を入れてスイッチを入れる。

 ゴウンゴウンという駆動音が鳴り、洗濯機が動いたのを確認してから顔を洗い台所へと移動する。

 その時に携帯電話が光っているのを見つけると、携帯電話を開いて来たものを確認する。


「『ハリネズミと結婚しませんか?』って、ただの迷惑メールか」


 ボタンをパチパチと操作してそのメールを迷惑メールボックスに入れ、携帯電話を閉じてから洗ってある弁当箱を出しながら今日の弁当箱の中身を考えて行く。

 冷蔵庫を開けて中身を確認。

 ベーコンとネギと昨日の余りの白米が一人前。

 次に冷凍庫を開ける。冷凍庫の中には氷とミカンのみが存在していた。


「……冷凍食品買い忘れてたのか。仕方がないから炒飯で良いか」

 

 ベーコンを切ってから熱したフライパンの中に入れる。焦がさないように熱し続けるとベーコンから油が出る。

 次に卵を割ってフライパンの中へ、完全に火が通る前に余りの白米をフライパンの中に入れてから混ぜていく。

 ある程度白米の塊がなくなったら最後にネギを入れて塩と胡椒で味を整えて完成した即席炒飯を弁当箱に詰めていく。

 そして、弁当箱をハンカチで包み、弁当箱に入れてから壁にかけている時計の針を見る。

 長針が八を指し、短針が十二を指していることから今の時間は朝の8時だということが分かーーーー。

 

「あっ、遅刻した」

 

 この家から学校に行くのにかかる時間は約四十五分。ホームルームが始まる時間が八時三十分。

 走ったところで短縮できるのは五分ほど。

 つまりーーーー足掻く余地なく遅刻したということだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 チャイムの音が鳴ったのを聴きながら昇降口で靴を変えて廊下を歩く。もう授業が始まっているのか通り過ぎた教室からはチョークの音と先生の声が聞こえてくる。

 階段を上る。どの教室も授業をやっている音が聞こえてくる。

 階段を上る。自習をしている教室があるのだろうか?大きな話し声が聞こえてくる。

 階段を上る。教室がある階に着いたので階段を上るのをやめて廊下を歩く。

 他のクラスの授業風景などを見ながら目的地である教室に着く。そして、そのまま教室の戸を開ける。


「すみません、遅れーーーー」


 謝りながら教室の中へと入ろうとした時、目の前を白色の光が覆い尽くした。

 何があったのか、そんな事を考えるより先に目を腕で隠す。

 それと同時に、何かに引き寄せられる感覚とともに目の前が真っ暗になる。


ーーーーこんにちは。


 最後に、そんな声を聞いた気がした。

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