訓練
マティアスは軍部の判断により、他に潜水艦を監視できる艦がいなかったため、自艦とアルリオス級二隻で監視兼追撃をやることになった。
それゆえに帝国圏内に深く進んでいくこととなる。
ベッドに横になったテリー
「ふぅ~~、テリーいや、アルーン、珍しいじゃないか」声を掛けてくるケネス
「ケネス、誰が聞いてるかわからないんだ、偽名のほうがいい」
そう言うと、「誰も聞いてやしないと思うけどな、まぁそりゃそうと、どう言う風のふきまわしだい? 軍には関わらないんじゃなかったのか?」
ケネスが不思議そうに聞いてくる。
「あぁ、なんとなくさ、気まぐれだよ」
「嘘だな、あの子…気になるんだろ?」との声にむぅっと、なったテリー
「わかったよ、白状するよ、あの子が気になったからだよ」
珍しく素直だなとケネスは思った。
「へぇ、なんで気になったんだ?」
「特にこれといって理由はないさ、気になったから気になった、それだけだよ」
「胸の大きさか!?我が友よ! いや、でも胸はそんな大きくなかったしな…」
そうケネスがぶつぶつ言い始めたが、テリーは放っておくことにした。
「とにかく俺は寝るぞ、戦闘で疲れてるんだ」
「俺も休むかぁ」
二人は休むことに決めた。
リズは悩んでいた、
(なんだいあたしだって、戦えるさ、お爺様や兄様が立派に戦ってるんだ、あたしだってできるさ)
思ってはいるが、戦場を思い出すと、怖くなる。
(とにかく寝よう、訓練すれば私だって戦えるんだ)
そう自分に言い聞かせて寝ることにした。
戦闘が終わって落ち着いた後で気づいたことだが、既にここは帝国の勢力圏内で、
艦を降りるには共和国の勢力圏内に行かなければならないことが避難民のみんなに伝えられた。
様々な文句が生まれたが、そもそもこの中からの志願兵がいなければ船が動かないこと、
帝国に捕まったら全員どうなるかわからないと言うこと、軍部の判断によりしばらく軍事にあたってほしいとのことで、新造艦マティアスとアルリオス級二隻での生活が始まったのであった。
翌日から訓練が始まり、それぞれの管轄の志願兵も慌ただしくなっていた。
そんな中テリーとケネスは割と楽をしていた、ネイオンを乗りこなせることから、志願兵の中でも後回しまたは、訓練が免除されたのである。
一番苦労しているのが、リズのようなタイプである、内功は使えないわけではないが、量が少なく、ネイオン自体もまともに乗りこなせるわけではないので、早急な訓練が必要なのであった。
「リズは随分苦労してるようだな」
テリーは自分のネイオンをメンテナンスしながらリズの訓練を見ていた。
ケネスも同じことをしながら訓練を見ているわけだが、
「ネイオンの訓練なんて、今日明日で乗れるような代物じゃないってのにひどいことをするよな」
ぶつくさ物を言っていた。
「まぁ、余程センスのあるやつじゃないと即座に乗りこなすなんてのは、できないのが事実だな」
テリーもその意見には賛成らしい。
「おいテリー、この新型機も割と良い性能してるぜ? 前の量産機より1.15倍出力が上がってるぜ」
「確かにこの新型ネイオンは出力が上がってるようだな」
うんと頷くテリー。
「それにあの内力波動砲ってやつは大した代物だよ、今までの戦艦の主砲の二倍近く出力がでてやがる、同じ戦艦同士の撃ち合いだと、1.5倍遠い距離から一方的に撃ち勝てるぜ?」
「そうか、だがデメリットもあるんだろう?」
テリーが聞くと、
「そうだな、連射はできねぇからな、慎重に撃たなきゃいけねぇが、アウトレンジで一方的に撃ち勝てることの強さはお前だってわかるだろ?」
「対艦戦ではこの艦に勝てる艦はそういないってことだな」
「そういうことさな、相手は潜水艦できてラッキーだったなこりゃ」
「確かにそうだな」
自分たちの不運より相手の幸運を祝う余裕がある二人であった。
リズは一生懸命だった。
(なかなか自分の思うように動いてくれない…自分じゃ動かせないのだろうか?)
そう弱気になるが、
(いや、自分ならできるって信じるんだ)
と自分を信じて訓練に励んでいた。