延瑛との馴れ初め
「延瑛をどう思いですかな?」
急に楊業に聞かれ、
「なんですか!? 急に!」
飲んでいたお茶を吹き出しそうになっていたところを、
なんとか堪えるアルーン
「延瑛は我が子ですが、嫁がせるなら英雄に嫁がせたいと思っていました」
楊業らしからぬ落ち着かぬ態度で、
「器量が良くないのは重々承知です、我が子たちの中で紅一点、わがまま放題に育ちました、それ故に兄弟を私戦に巻き込み死なせた…、私は楊家の当主として、延瑛を勘当せざるをなかった、もっともそれにより元帥、あなたが帝国の手から助かったのは唯一の救いでしたが…、そして何よりアルーン元帥、あなたをずっと慕っているようだ」
「そんな! 娘さんにはもっといい相手が、私にはすでに2人妻がおりますし、一番にかまってやれません」
そういったところで手で制してきた揚業、
「良いのです、アルーン元帥あなたはまさに当代の英雄と言える、その方に嫁げるなら娘も本望でしょう、行く当てのない我が娘をどうか娶ってやってくれませんか」
頭を下げた楊業に、
「おやめください…、わかりました、延瑛本人に聞いてみましょう、彼女が本当に私の妻にと望むなら、私も覚悟を決めます」
そう言って延瑛に本心を聞きに行くアルーン。
アルーンが延瑛に会いに行くと、えい!やあ!と声が聞こえ出した。
どうやら延瑛は楊家槍法を訓練しているようだ、途中で足音と気配を消してアルーンは近づいた。
一通りの訓練が終わると延瑛はお茶を飲みに外の机に向かう、その時にアルーンに気づいた。
「アルーン元帥! 来てたんですか!?」
急なことで顔を真っ赤にした延瑛を、やはり可愛いなと思いながら、
「あぁ、実は話があってね」
コホンと咳払いをしてどう切り出そうか迷うアルーン。
「わざわざ足音と気配を消して、来るなんてろくな話じゃないんじゃないですか?」
冷静になった延瑛がジト目で聞いてくる。
「すまない、それは君の驚く顔がみたかっただけなんだよ! 他意はない」
そういうと、
「じゃあそういうことにしておきます」
お茶をぐいっとあおる延瑛、アルーンもお茶を一口飲んで
「君は花のように可愛いね、初めて会った時からそう思っていたよ」
「なんですか! 急に! 褒めても何も出ませんよ?」
照れる延瑛、
「私はみなが言うほどの英雄でもなんでもないんだよ、俗っぽいし、武芸だって天下無双の師匠に教わっても、まだ天下の達人たちには足元にも及ばない」
そんなことないです、と延瑛が言っていたがお構いなく、
「ただせっかく私は男として生まれたからね、男として、王国軍人として恥じない生き方をするようには心がけてはいるものの…、まだまだだよ」
「私はそんな元帥が好きですよ、俗っぽいところも、人に恥じない生き方を心がけている元帥が」
そうかい?と照れるアルーン
「まぁそんな私だが、縁に恵まれて二人も妻がいる、もしも私と一緒になっても君は一番にもなれずに苦労するだけだ」
暗い顔をするアルーン。
「私はどんな時でも元帥の側にいれるだけで満足です、側にいれるだけでいいんです、それではダメですか?」
今にも泣き出しそうな声で延瑛は訴えた。
「ダメじゃない、ダメじゃないけど、本当にそれでいいのかが気になるんだ」
何故か顔が明るくなった延瑛が、
「それでいいんです! それがいいんです!」
顔をずいっと近づけて、アルーンに言ってきた。
しかしまたすぐに泣きそうになり、
「でも私は楊家を勘当された身ですから…、元帥とは釣り合いません」
「そんなことはないよ」
延瑛の頭に手を置きアルーンは首を振る。
「私はもう一人です、父上にも兄弟にも公式には会えない身です」
延瑛は泣いた。
「あぁ、そうだね…、だがそのおかげで私の命は君や君の兄弟に助けられた、大きな恩だ、だけどそれとは別に君を初めて見た時から好意は持っていたんだ」
アルーンは延瑛の頭をぽんぽんと叩き、
「私と結婚してくれるだろうか?」
「私でいいんですか?」
「君さえよければね」
「私には断ることはできません…、一人はもう辛すぎて…」
泣きじゃくる延瑛の頬を撫でるアルーン。
「そうか…、わかった、私にできる限り君を大事にするよ」
アルーンは延瑛を抱き寄せた。




