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師匠との再会

「弟子よ! 弟子はおるか!?」

急にマティアスの艦内放送から声がした。

「この声は、師匠!?」

急いでマティアスのブリッジまで上がると、モニターがとある人物の顔で埋め尽くされていた。

「おお、弟子よ、来たか」

はっ、と膝を曲げ拝礼するアルーン。

「はっはっは、元気そうで何より、すまんなこの船の艦長よ、どうしても弟子を見つけたかったものでな」

マティアスの通信回路をジャックしたことを侘び、場所をエンペラー機内へと変えて、早々とアルーンと話し始めた。

「随分久しぶりじゃのバカ弟子が! 今までどこほっつき歩いとった! 修行はどうした!? 修行は!?」

アルーンは怒られていることがわかりながら言葉を返す。

「修行は怠っておりませぬ、ただ進捗は芳しくありません、師匠」

「青龍十六掌は!? 朱雀十九剣は!? 玄武功はどうなっておる!?」

「全て身につけてはおりますが完成度は三割にも満たないかと…」

バツが悪そうなアルーン。

「それはお主が修行を抜け出してあちこち放浪しとったからじゃろうが!!!!」

「はっ、おっしゃるとおりでございます」

平謝りしているアルーン。

「しかし、お前がこの一年でやってきたことは知っておる、よくやったともいっておこう」

師匠であるイヴァンはアルーンがこの一年でやってきた人助けなどの行動は自分のネットワークを使って調査済みであった。

実はモニターの前にいる師匠、イヴァンはかつては実在した人間で会ったが、現在はネットの海にいるデジタルな存在である。

かつて自分が天下無双を誇った時、自分の技を破るものがついぞ現れなかったため、未来に至るまで自分の技を破るものが現れないか、調べるために、死の間際に全ての内力を使いデジタル世界に乗り移ったのである。

彼は肉体的な死を迎えてからは、デジタル世界に乗り移り、自分と新しく生まれた武芸者の技などを比べては、技の破綻を見出し自分の技で破ってきた。

過去の文献などもあさっては技などを比べては破りを繰り返している日々であり、自分の技もどうしたら破れるか、常に研鑽は行っているが未だに自分の技は破れずにいるようである。

そして世の中全ての武芸をほぼ網羅したといっても過言ではなくなったときに、アルーンと出会ったのである。

そしてアルーンの武術的才能のなさ、凡庸さに喜び、弟子にしたのである。

なぜそんなものを弟子にしたのか、答えは簡単で、あくまで自分の技を破れる者を探しているのであるからである。

武術的才能のあるものならば様々な手を応用して元ある武芸を更に発展させてしまう、それではイヴァンとしてはよろしくない、あくまで自分が考えた手が本当に人が破れるのかが知りたくてここまでやっているのだ。

だから言われたとおりしかできないくらいの凡庸な者がいいに決まっているのであった。

そんなイヴァンの初弟子でもあるアルーンは自分の武芸の才能のなさに悲しみを覚えてはいるが、やるしかないと思い、一生懸命修行はしていた。

そしてある日修行を抜け出したのでしばらく探していると、このマティアスに乗っていたということだった。

「エンペラーを持ち出すとはな、よほどの敵がいるらしいの」

「えぇ、師匠、敵はブレット大佐ですから」

「あぁ〜 あのときの鉄血掌法の武人か」

思い出したようなイヴァン。

「師匠がいらっしゃるのであれば、力をお借りすることもあるかもしれません」

うむ、とイヴァン。

「だがあれは心身ともに負担が大きいからの、いざというときだけにしておけ」

そう言い終わると、アルーンは、はい、と返事をしていた。

「どれ、修行を怠ってないか見てやる、最初からやってみせよ」

「わかりました」

そう言うとアルーンは青龍一六掌の一手から繰り出し始めた。

見てそうそうイヴァンは

「やはりあまり進歩しとらんな、まぁそれでいいじゃろ、武芸に秀でたものなどこの世にはあふれるほどおるからの」

師匠の意図を知っているアルーンは師匠の態度にはがっかりしなかったが、自分の武芸の進歩のなさには多少なりともがっかりはしていた。

「まぁ武芸のとんと進歩のないお前さんでもあと二十年修行すれば、当代の英雄と相手ができるかもしれぬな、あくまで相手ができるかもしれぬレベルだがな」

がははと自分の武芸の才能のなさを笑われるのにも慣れたアルーンである。

「せめて言われたことはできるよう努めます」

アルーンはいつものごとく最低限師匠の武芸の教えは守ろうと思っている。

「修行も大事だが、お主がここ一年しておった義侠の行いは褒められることである、もう一度言っておこう、よくやったな」

「師匠…、ありがとうございます」

褒められて嬉しくなったアルーン。

「未熟な腕だが、それでも我が技はそうそう負けるものではない、修練不足の点をつかれなければ、我が技自体は天下無敵と言える」

「はい」

「ゆめゆめ言っておくが技に溺れるでないぞ、我が技はなまじ強いゆえに技に溺れやすいと言える、まぁお主に溺れるほどの才はないがな」

笑われるアルーンだが、毎回彼は実直に聞いている。

「それとブレットだったか、前にも教えたが、鉄血掌法を破る手順を学び直させるとするか」

「お願いします」

そういってアルーンはイヴァンに鉄血掌法を破る手ほどきを受け始めた。





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