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あべこべ転生!?~あべこべ世界での僕は新しい出会いに飢えている~  作者: あだち りる
第一章「あべこべ世界に出会いを求めて」
7/43

7「愛して行くよ」

その瞬間、僕の頭に一つの記憶が過る。


『た、くと…?』


彼女の…涙ーー


「晴!!」


その涙と重なった瞬間、僕の足は勝手に動く。


「来ないで!!」


晴に近付こうとすると、ばっと顔を逸らして僕を…いや違う、灰原時雨を拒絶した。


「晴…?」


「…わかってる…ここに居るのがお兄ちゃんじゃないって事くらい…お兄ちゃんが昔見たいにまた迎えに来てくれるなんて有り得ないって事くらい…わかってる」


涙で掠れた晴の悲痛にまみれた声が、僕の心をズキズキと、締め上げる。


「それでも私はまだ何処か信じてる…もし、本当にここに居るのがお兄ちゃんならって…でも私は、お兄ちゃんと顔を合わせる事なんて出来ないよ…もう…嫌いって…言われたくないよ…」


…そうか、そう言う事なんだ。

晴は、怖いんだ、また灰原時雨と言う存在に嫌悪されるのが、昔の様な末路を辿るのが。


これから先も、変わらない関係でいるのが、とてつもなく怖いんだ。


僕は、どうすればいいんだ?

晴を抱き締めていいのか?そんな無責任な事をしていいのか?


ダメに決まっている、僕は灰原時雨じゃない。

まだ、高坂拓斗としての記憶が、僕を動かそうとした、晴を抱き締め様としたんだ。


そうか…僕はまだ自分を捨てきれていないんだ。

前世の記憶が、彼女が、まだあの世界を忘れさせてくれない。

そんな今の僕が、晴を抱き締めていいのか?


それは今の晴にしていいことじゃないんだ。

高坂拓斗がやるべき事じゃないのだ、これは灰原時雨がやらなければいけない事なんだ。


尻拭い…?違う…違うだろ!?

僕は灰原時雨なんだ、今を生きているのは高坂拓斗じゃないんだよ、灰原時雨、灰原晴の唯一無二の兄なんだ。


受け入れろよ、もう捨てろよ。


抱き締めろよ、お前は晴の兄なんだから。


お前は、誰だ?




僕はーー




ー灰原時雨だー




「晴ー!!!」




僕は、晴の名前を叫び、そしてーー



「へ…?」



抱き締めた。

強く、その苦しみを、恐怖を、抱き締めた。


「晴」


「離して」


だが、晴はこちらに耳を傾けてくれはしない。

抱き締められた所で、その弱さが緩和される訳がない、その程度で、これまで僕がしてきた苦しみを無くせる訳がない、わかっていた、わかっていた事だ。


だから、ちゃんと話さなければいけない。


「晴!」


「離して!」


「話を聞いてくれ!」


「偽物の癖にやめてよ!!離してよ!?」


晴は、僕の腕の中で暴れ離れようとする。

ここで、離したらきっともう二度と晴との関係は戻らない。


そんなのは…ゴメンなんだよ!!


「いいから聞けよ!!!」


「っ!?」


僕は怒鳴り、無理矢理晴と顔を合わせた。

涙でぐしゃぐしゃになった顔、そしてその目は、悲しみに満ちていた。


これが、これまで僕が積み重ねてきた罪の重さだ。

ちゃんと、受け入れるんだ、晴の悲しみを。


そして、ちゃんと責任をとろう。


「晴」


「やめ…てよ…偽物がそんな風に笑わないでよ…」


「僕は、偽物なんかじゃないよ。

お前の、たった一人の、兄だ」


そうだ、僕はお前の兄なんだよ。


「もう…やめてよ…こんなの聞いて…本当のお兄ちゃんを見たら私は、もう…」


お前の兄だ。

だから、これからはちゃんとお前をーー


「晴、愛してる」


ー愛して行くよー


その瞬間、晴の腕の力が弱まった。


「……嘘…だよ…お兄ちゃんは…」


「嘘じゃない、僕はお前を愛してる。

これから先、お前に何があろうと、お前をずっと愛して行くよ」


「…本当…に?」


「あぁ」


「…嫌いにならない?」


「あぁ」


「また…笑ってくれる…?」


「あぁ」


僕は晴に優しく頬笑み、ゆっくりと抱き締めた。

晴は両手を僕の背中に回し、ぎゅっとゆっくり握り締める。


「お…お兄ちゃん…お兄ちゃん…!」


晴は、これまでの感情を、忘れるかの様にただ泣いた。

僕の胸の中で、何度も僕の名前を呼びながら。


きっと、これからは楽しい日々が待ってる。

幸せで、ただ幸福の続く日々が。


ただ笑って行ける、そんな未来が。

…後書きで何か書こうと思ったんだけど、言うことが、この回に置いての、晴視点いらいなと思って消去した事くらいしかないわ。

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