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あべこべ転生!?~あべこべ世界での僕は新しい出会いに飢えている~  作者: あだち りる
第三章「未来ある小説家に出会いを求めて」
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39「白の少女」

今、もしかして合コンと言いましたか?

あの男女で向き合い、一人の女の子を必ず持ち帰りをしなければいけないと言う試練が待ち受けているあの合コンって言った?


※待ち受けていません


「本当に!?本当に来てくれるの!?」


「え!?え、えっとぉ…」


まさかこんな展開になるなんて、流石に予想してない…でも合コンなんて僕にこなせるのか…?こんなキラキラした目をされて今更断るのも悪いし…えぇい、腹を括れ!男だろ!


「う、うん、行くよ」


灰原時雨、初の合コン参加決定でございます。

予定としては明日の放課後、他校の男子二人と僕と後の三人を合わせた計六名、場所は王道であろうカラオケ…てか良く他校の男子二人はこの合コンに了承したな…あまり女の子に対して嫌悪感はないと言うことだろうか?何か仲良くなれる気がするなぁ…っと、そんな考え事しているうちに部室(氷室さんの執筆部屋)に着いてしまった。


「んん…」


何か、昨日の事があって入るのが無性に恥ずかしいな…き、今日はやめとこうかな〜…?おい誰だ今このチキン野郎とか罵った奴、いいよ、いってやんよ。


別に?女の子の前で号泣した挙句弱音まで吐き散らしたからってどうって事ないし、別に普通に入れるし、むしろ洒落たジョークを混ぜながらの会話だって余裕だわ!


勢い任せに扉を開ける。


すると、そこにはーー


「…寝てる?」


眠っている氷室さんの姿が、とても気持ち良さそうに笑みをこぼしながら、いい夢でも見ているのだろうか?


「はは、可愛いな」


ついそんな寝顔を見てそう呟いてしまう。

そして、机の上を見てみると、そこにはまとめてある原稿用紙の束があった。


氷室さんを起こさない様に、そっと持ち上げ目を通す。


タイトル


『白銀』


「うん、いいタイトル」


まだ読んでもいないのにそんな事を思った。

氷室さんの小説を一度読んでいると、その物語のタイトルからですらわかる程にもう輝いている。


彼女が描く世界は、僕なんかでは到底理解の及ばない場所にある…信者である僕だからこそ言える。


「っ〜!」


こんなの、読まずにはいられないよ!


僕は初めて、氷室さんの許可を貰わずに、その小説を読み進めてしまった。

気分としては、ナイショで誰かのおやつを食べた時みたいな…そんな、子供らしい感じだった。


さぁ飛び込もうか、物語の世界へーー


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄

「………なんだこれ」


何も、言えなかった。

最初にでた台詞はこんな物でとても申し訳ないが、決してこの小説が面白くなかった、なんて事は有り得ないから安心して欲しい…ただ僕にはどうとも言い表せなかっただけなのだ。


表現したいのに、口から何も出てこない。

出て来るのは溢れんばかりの喜怒哀楽な感情達…止まらない、僕は今彩りの中にいる。


この小説は、カラフルに、すべてを色づかせる様にただ輝いている。


やはり、氷室さんの小説は凄い…改めてそう感じさせられた。

ん?てか今何時だ?やけに周りが暗いけどーー


「っ!」


その時、目に映ったのは、美しい暗闇の中に教室に照らされた月の光が、彼女の象徴である白の髪を照らしていた。


これは、まるであの物語に登場したーー


「白の…少女?」


「ん?」


僕がそう呟くと、こちらを向いた。

そこでやっと気づくーー


「…あ、氷室さん」


「そう…だけど?」


キョトンとした顔でこちらを見る氷室さん、ヤバイな…あまりに白の少女の登場シーンと被りすぎていて…氷室さんって白の少女と見た目がまったく同じだからか、勘違いをしてしまった。


これも氷室さんがもたらす小説の効果だろうか…恐ろしいな。


「氷室さん、いつから起きてたの?」


「夕方にはもう」


「声かけてくれればいいのに」


「出来ないよ」


「なんで?」


「だって、あまりに私の小説に夢中だったから…」


「あ、あぁ〜それはその…申し訳ない」


「いいよ、そんなに夢中になって読んでくれるなんて嬉しいな」


氷室さんは笑みを浮かべて言う。


「そんなの、こんなに綺麗な小説、夢中に読まずにはいられないよ」


「なんか恥ずかしいね…」


「はは、書いた人からしたらそうなのかも知れないね。けど、他の人が読めばきっと僕と同じ風に思う人しか居ないよ」


「そうかな?」


「そうだよ」


僕が即答すると、氷室さんは頬を染めて下を向く。

もじもじしながら口を結んで、小さく呟いた。


「灰原くんのそういう所…本当に好き」


「ん?今なんてーー」


ブーブー!


「っ!?びっくりしたぁ」


突然スマホが変なタイミングで震えだし、つい驚いでしまう…確認してみるとそれは母さんからだった。


「ごめん、僕のスマホだ。ちょっと電話に出るね?」


「ど、どうぞ!」


「ありがと」


氷室さんにそう言葉を残して電話にでる。


「はい?」


『しいぢぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!』


「っ〜!!」


耳がぶっ壊れる!!


「ど、どうしたのさ母さん?」


「どうしたのっでぇ…しいぢぁんがぁ…全然帰ってこないがらぁ…!」


ん?今何時ーー


「8時過ぎてる…」


「か、帰ろっか?」


「そうだね」


苦笑いを浮かべた僕達は、もう既に鍵が閉まっていた門を天塚先生に開けてもらいそのまま家へと帰った。


その時天塚先生がいらん勘違いをして一悶着あった事は内緒である。

あ、ついでにこの後家に帰った僕が三人から猛追を受けた事も内緒だよ?

読んでくださりありがとうございます!

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