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あべこべ転生!?~あべこべ世界での僕は新しい出会いに飢えている~  作者: あだち りる
第三章「未来ある小説家に出会いを求めて」
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32「放課後デート」

side灰原 時雨


いつもの朝の電車に揺られながら、僕は今日の事を考えていた。

放課後の椿さんとのデート…休日にしようかとも思ったのだが、何故か椿さんがそれを嫌った。


もしかすれば、休日と言う人がわんさかといる日に出掛ける、と言う行為が嫌だったのかも知れない…今思えば電話越しの彼女の声はそんな気持ちがこもっていた気がする。


「嬉しそうだったな」


電話越しですらわかるほど、彼女の声は浮ついていた。

とても愉快そうに…罪悪感が込み上げてくる…彼女の事を思い出せない僕に、そして僕の事を覚えている彼女に。


その日の学校での出来事はあまり覚えていない。

授業中もお昼休みも、デートの事で頭がいっぱいだったからだ。


みんなにとってやっと迎えた放課後は、僕にとってはまるで数分の出来事の様に感じた。

予め、氷室さんには今日の部活を休む事は伝えてある。


「行くか」


絶対に思い出すんだ、彼女の事を、なにがなんでも!


気合いを入れて、僕は待ち合わせの場所へと。

やばいな、このままじゃ一時間も早く着くな…何処かで暇でも…いや、待つか、なんか今そんな事してもロクな気分転換にならなさそうだ。


そう思って待ち合わせの場所に到着すると、そこにはーー


「…も、もう居る」


椿さんが居た。

一時間も前に到着したのにも関わらず…彼女の姿が見えたのは流石に予想外で、僕は面を喰らわずには居られなかった。


そして、彼女の容姿に目を向けると、僕は思わず唾を飲んだ。

いつもは片目がチラチラと覗く黒髪がヘアピンで留められ、その顔立ちの良さが際立つ。


更に白いワンピースがその黒髪と相見えてその美しさを際立たせている。

不思議と、その姿に何処が見覚えがある気がした。


白のワンピース…それにあのヘアピンはーー


「し、時雨くん!」


「っ!…や、やぁ椿さん」


突然声をかけられ、ぎこちない挨拶をする。


「こ、こんにちわかな!そ、その…制服良く似合ってるのかな!」


「椿さんも似合ってるよ、その服」


「っ!!!あ、ありがと…」


赤面してお礼を言う椿さんの姿につい笑みが零れた。


今…何か思い出せそうだった?

キッカケが必ずある、今ので確信した。

このデートで僕は何かを思い出せるかも知れない…今日は椿さんから目を絶対に離さないぞ!


「え?あ、えっと、そんなに見られるとその…恥ずかしい…のかな…」


「ご、ごめん!」


僕はつい顔を逸らしてしまう、くっ!恥ずかしさのせいで、先程の決意が…!記憶を掘り返すのに必死なせいでなんか空回ってるぞ僕、てか今更だが普通にデートするのって母さんとのを除けば初だよね!?な、なんか緊張してきた。


「それじゃあ!い、行こっか!時雨くん」


そう言って椿さんは僕の方に手を差し出す。

こう言うのは男の役割では…?あ、そっか、あべこべ世界でしたね。


こっちだと女の子が男をエスコートするのが正しいやり方なのか?う〜ん…でもなぁそれは個人的には嫌だからーー


「じゃあ行こう、まずはどうする?映画とかどう?」


「へ!?え…て、手…これ…恋人握り…」


「ん?」


「な、なんでもない…かな…」


「そ?じゃあ行こう」


エスコートは僕がするよ、お姫様?

…心の中でカッコつけるなら羞恥心に悶えないだろうと思ったけど、ダメだ、何か恥ずかしい。


と、とにかく!デートスタートだ!

予め、調べといた恋愛映画があるし、それを見ようと思う、本当は物凄く気になるアニメ映画があったんだけど、今回ばかりは見送ろう…王道なデートにしてみせる!


「じゃあこの恋愛映画をーー」


椿さんの方を見てみると、じ〜っと僕が気になっていたアニメ映画のポスターを眺めている。


も、もしかしてーー


「椿さん、それ見たいの?」


「見たい!凄く!見たいのかな!」


キタァ!!


「よし!見よう!」


「うん!」


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄

結論から言おう、映画は最高の一言だった。

僕達はあまりの興奮にパンフやグッズを買い漁り、ファミレスで語り合っていた。


「あの時の穂乃果の台詞良かったよね!何を犠牲にしてもただ祐介だけを思う気持ち!」


「わかるのかな!そして雛菊が出した答えに手を差し伸べるラストのシーンはもう…!」


「「最高」」


「この余韻に浸るのもいいけど、この後はどうする?」


「リクエストしてもいいのかな!?」


「勿論!」


「じゃあ次はーー」


なんかデートっぽくなってきたな。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄

てな訳で、お次はゲームセンターにやって参りました。

久々に来たなぁ…あべこべ世界と言えど、ゲーセンは特に何か変わった様子はなく、強いて言うならやはりあのプリクラ機を男の写真で囲っている事に慣れないくらいだ。


もうあれには触れないでおくとして…ゲーセンで遊ぶなんて久々だな、なんか楽しくなってきた。


「それじゃ何してーー」


「くっ!取れない!」


いや食い付くの早いね?もうクレーンゲームに釘付けだよ、その百円の束いつ両替してきたのさ。


椿さんの方をみると、既にクレーンゲームで一喜一憂している姿が、どうやら先程見た映画のメインキャラである二人のぬいぐるみを取ろうとしているようだ。


だが、見てるとアームが向かって行く場所は明らかに初心者のそれ…これは、彼女の百円が尽きる前に手解きしてあげた方がよさそうだ。


「椿さん、少し僕にもやらしてもらっていいかな?」


「は、ハイエナ?」


「違うよ?」


ガチのトーンで怪しむのはやめて欲しい…。

椿さんは渋々と言った感じでその場を交換してくれた。

本気でこのぬいぐるみが欲しいようだ。


「椿さん、こう言うのは真ん中を掴むんじゃそう簡単には取れないんだ」


「そ、そうなの?」


「うん、片方のアームをあのタグにうまく引っ掛けてーー」


片方のぬいぐるみはそのままアームに引っ掛かりゴールへと、その瞬間に愉快な音楽が流れ祝福してくれる。


「す、すごいのかな!!」


「それ程でも、椿さんもやってみるといいよ。案外うまく行くよ?」


「頑張ってみる!」


そして、椿さんの再チャレンジ、覚束ないアームさばきでタグにアームを引っ掛けようとする。

アームが下がって行き、緊張の瞬間…アームは上手くタグに引っ掛かりそのままぬいぐるみの足を引っ張る形になった。


ぬいぐるみゲット!


「すごい!一発でいったね!」


「す、すごい…!本当に取れたのかな!!」


「はは、取れるとやっぱり嬉しいもんだよね!はい、さっき取れたぬいぐるみ!これで穂乃果と雛菊揃ったね」


そう言ってぬいぐるみを渡すと、椿さんはもじもじしながら視線を横に移した。


「その…雛菊の方は時雨くんが持ってて欲しいのかな」


「いいの?」


「うん…だってそしたら、この二人みたいに例え世界が変わったとしても一緒に居られる気持ちになるから」


「そ、そっか…うんわかった」


つい毛恥ずかしさが勝って下を向いて顔を赤くささてしまった…なんだよそれぇ…可愛すぎるだろ…。

読んでくださりありがとうございます!

今回は長くなりそうだったので少しキリが悪い所で終わってしまいました。

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