29「コーヒー」
今回少し短いです!
今回珍しくコメディなしです。
後日、僕はぼーっとしていた。
昨日の休日を取り戻す様に、この日曜と言う時間をひたすらぐーたらしていた。
「…あーもう!」
けど、昨日のモヤモヤが晴れてくれない。
そのせいで、つい頭をかいてしまう…正に僕の心は曇り空の様だった。
「コーヒーでも飲むか」
ベッドから降りて、下に降りて行く。
こう言うもやもやした時、僕はコーヒーを飲む様にしている。
あの苦味が僕の思考を柔らかくしてくれるからだ。
リビングに着くと、そこにはソファに座りながら、悠々とコーヒーを飲んで本を読んでいる曇李姉さんの姿があった。
眼鏡をかけているせいなのか、それともその綺麗な姿勢のせいなのか、いつもの曇李姉さんではない様だった。
その光景につい目を奪われてしまう。
すると、僕に気づいた曇李姉さんはその滑らかな動作でコーヒーカップをゆっくりと起き、微笑んだ。
「コーヒー、時雨も飲むか?」
「え?」
「違ったか?」
「あ、いや、貰うよ」
「では入れてくるから少し待ってろ」
びっくりした。
たまに姉さんは僕の心の中を覗き込んでいるのか疑いたくなるくらい鋭い、それともそんなに僕は顔に出やすいのだろうか?
それとも、姉さんだからなのかな?
「出来たぞ」
そんな疑問を抱いていると、姉さんがコーヒーを入れ終わり、コトっとテーブルの上に置いてくれる。
そのコーヒーを一口。
「っ!美味しい…」
僕が入れたコーヒーとじゃまるで違う…。
「良かった」
姉さんが笑ってそう言うと再びソファにお尻を戻してコーヒーを飲む。
…なんだか、落ち着くな。
これは美味しいコーヒーだけのせいじゃない。
きっと、隣でこうやって家族が笑ってくれているだけで、僕は元気を貰えるのだ。
「ふぅ…」
暖かいコーヒーが僕の喉に通って行く。
先程までの頭の中に広がっていた曇り空は晴れやかな空へと変化していた。
「落ち着いたか?」
「へ?」
「何か悩んでたんじゃないのか?」
「悩んでたと言うか…まぁもやもやはしてたよ、でも今は落ち着いてる」
「そうか…時雨、一ついいことを教えてやる」
「ん?」
「お前には私が居るぞ?」
その言葉に、震えた。
姉さんが何処まで僕の事をわかっているのか、ここまでくると本当に計り知れないな…私が居る、とても心強い言葉だ。
隠せない嬉しさを顔で表していると、姉さんは続ける。
「時雨は気付いていると思うが、私はお前の事が大好きなのだぞ?そんな大好きなお前の悩みや不安を、どうして無視出来ようか、そんなの神が許しても私自身が許さない」
「あ、ありがと…」
恥ずかしげもなく良く言えるね…僕の方が照れちゃうよ。
「時雨、これからはどんな些細な事でもいい、少しもやっとする事があれば私を頼れ、僅かにもイラッとしたら私に当たれ、私はどんな事があろうと時雨の味方だから」
「…うん」
敵わないな…この人いつもはああ見えて、ちゃんとお姉ちゃんしてるんだな。
ほっこりとした気持ちでコーヒーを飲もうとするーー
「あ」
「もう一杯、いるか?」
「貰うよ」
空になったコーヒーカップにまた、暖かいコーヒーが注がれるのだった。
二杯目のコーヒーは、少し甘い気がした。
読んでくださりありがとうございます!
久しぶりの曇李姉さんです!
曇李姉さんが好きな人にはもってこいです(果して好きな人がいるのかはわからんが)