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あべこべ転生!?~あべこべ世界での僕は新しい出会いに飢えている~  作者: あだち りる
第三章「未来ある小説家に出会いを求めて」
31/43

28「思い出せない記憶」

てか待って、もしかしてこのまま放置ですか?

えぇ…嘘だと言ってよ、ヤンデレ娘ちゃんよぉ。


うぅ〜…と、僕が唸っていると、扉の向こうから微かに声が聞こえて来た。


「引きこもりのお姉ちゃんが部屋から出てくるなんて珍しいね、どったの?」


「し、仕事場の範囲を広げようと」


「自宅の警備は仕事じゃないからね?」


…とりあえずヤンデレ娘ちゃんはニートと。

まぉこんな情報手に入れた所でどうしようもないのだけれど、どう打破するべきか。


てかこれ押入れだし、こっちから衝撃を与えれば開くんじゃない?


善は急げ、喰らえロケット頭突き!


ガン!!ドン!!


「っ〜〜〜!!」


まぁそりゃ痛いよね…しかも、追い討ちを掛けるかの様に段差のせいで顎を強打した…口の中にパンツがなかったら叫んでる自信があるよ…ありがとうパンツ。


さて、僕の予想が正しければそろそろーー


「何今の音?」


「な、何でもないのかな!きっとポルターガイストかなにかなのかな!」


「それ何でもあるよね…お姉ちゃんの部屋から聞こえた様な」


よし、予想通り!さぁ妹ちゃんカモン!


「気のせいかな!?」


「いや動揺の仕方が凄いんだけど…まぁ深追いはしないで置いてあげる」


「出来る妹を持てて幸せかな」


そんなぁ!?声のボリューム的にかなり近くに居るというのに…あともう少し、何か、何か…ん…?てか…このパンツを吐き出せば済む話じゃないか?


ずっと噛み締めていたものの、これ簡単に吐き出せる気が…。


「……ぺっ」


…別にパンツを口の中に突っ込まれてそれを堪能していた、なんて事実は一切ないのでそこは勘違いしない様に、いやこればっかり本当ただのうっかりだから、時雨くんは嘘をつかないから。


それじゃ見せてやりましょうかね。


秘技!命乞い!


「助けてー!」


その瞬間、扉が開いた。

なんとか状況打破、かな?


「こ、この人…し、しぃ兄!?」


「え?」


何その素敵な呼ばれ方?


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄

「ふぅ…ありがと」


「そんなお礼を言われる筋合いなんてないですよ、うちの馬鹿姉がやらかした事だし」


そう言ってお茶を出してくれたのは、八重垣(やえがき) 香菜(かな)ちゃんだ。

あのヤンデレ娘ちゃんの妹さんである。


黒髪のサイドポニーテールをルンルンと靡かせており、その姿は見ててとても癒される。


さて、それじゃーー


「なんでこんなことをしたのか聞かせて貰ってもいいかな?八重垣(やえがき) 椿(つばき)さん」


「そ、それはその…」


「馬鹿姉、自分がなにしたかわかってる?」


「うぅ…あい」


香奈ちゃんに攻められて、弱々しく返事をしたのはヤンデレ娘ちゃんこと、八重垣(やえがき) 椿(つばき)さんだ。

妹ちゃんと区別がしにくいので椿さんと呼ぶ事にしよう。


「はぁ…しぃ兄本当にごめんね?良く言い聞かせとくから」


「いいって、僕は気にしてないよ」


それに、ある意味ご褒美だったしね。

僕が心の中で謎の愉悦に浸っていると、香奈ちゃんが口を半開きにして、驚いた顔をしながら言う。


「しぃ兄…雰囲気変わった?」


…先程からその素敵な呼ばれ方に僕は疑問を抱いている。

何故なら、椿さんも僕の事を昔馴染みの様な雰囲気で話し掛けていたからだ。


もしかすると、この二人は昔の灰原時雨くんの知り合いなのかも知れない…けど、二人の事を思い出せない。


ここは正直に言うしかないか。


「えっと…もしかして二人は昔僕と何処かで会った事があるのかな?」


少しどう言う反応をされるのか怖かった。

何故なら、この記憶は不安定だからだ。


本当に灰原時雨としての記憶を、全部見たと言う保証など何処にもないのだ。

たまに、記憶がフラッシュバックしたかの様にちょくちょく灰原時雨君の記憶が流れ込んでくる時がある。


だが、今回はそれがない。

二人は僕を知っていて、僕が思い出せないのだ。

時雨君の記憶の一部分が思い出せないなんて言う事はもしかしたらザラなのかも知れない。


だからこそ、不安だった。

けれど、そんな不安は杞憂に終わる。


「…まぁ忘れてるよね…私としぃ兄が会ったのってもう九年も前の事だもん」


九年前…つまり七歳か、確かに本人でさえ覚えているどうかわからない年齢だ。


良かった、無駄に焦った。


安心しきっていたその時だったーー


「嘘だッ!!!」


…ひぐ○し?


と、勘違いさせる程の気迫だった。

余りの声のデカさに、僕と香奈ちゃんは呆然とする。


「お、お姉ちゃん?」


おずおずと香奈ちゃんが椿さんに言葉をかける。

だが、その言葉は耳に届いてないかの様にゆらゆらと僕に近付いてくる。


そして、椿さんは僕の両肩をぎゅっと掴む。


「っ!」


予想外に強くて掴まれた肩に痛みが走る。

痛みに耐えながらも椿さんの方を見た。


その目にはーー


「嘘かな…嘘だ…だって…ぐす…時雨くんはボクと…嘘だよ…そんなの…やだぁ」


涙が。


ポロリ、ポロリと、その一粒が流れる度に、不思議と僕の体は締め付けられる様な感覚になった。


僕はその姿に何も言うことは出来ず、ただ顔を逸らす事しか出来なかった。


「お姉ちゃん、その辺で」


香奈ちゃんは椿さんの肩に手を置く。


「でも…時雨くんとの約束ーー」


「お姉ちゃん」


香奈ちゃん声音が、一つ下がった。


「…ごめん」


「私にじゃないでしょ?」


香奈ちゃんがそういうと、椿さんはこちらを向いて鼻をすすりながら誤る。


「ごめんなさい…」


「…うん」


結局、最後まで言葉が出なかった。

香奈ちゃんが椿さんを部屋に入れた後、香奈ちゃんが隠されていた僕の靴を発見してくれた。


そのまま玄関へと。


「それじゃしぃ兄…またその…しぃ兄が良かったらなんだけど、お姉ちゃんにまた会ってくれないかな?」


「え?」


八重垣家の玄関で自分の靴を履いていると、香奈ちゃんにそんな事を言われた。


「そのさ、お姉ちゃんはあれでも本当にしぃ兄の事が好きなんだ、その少し歪んでるだけで」


「う、うん」


あれを少しと言っていいのだろうか。


「と、とにかく!しぃ兄が来てくれたらきっとお姉ちゃんも喜ぶだろうし…ダメかな?」


「……いいよ」


そう言って、僕は八重垣家を後にした。


なんだろう、この心のもやもやは、胸の辺りがなんか気持ちが悪い…椿さんの涙を見てから、僕の体は何かおかしい気がした。


あの涙に見覚えがある気がする。


ー時雨くん…ぐす…わたじ…ずっと待ってるからー


「うっ!」


またこの痛みだ…また…また?

僕は何処かでこの痛みを経験しているのか?


いったい何処でーー


ーーブーブー!


「ひぇあ!?」


つい驚いて変な声を出してしまう。

ポケットから、ずっと振動音が鳴り響いている。

取り出してみると、スマホの画面に母さんと書かれていた。


ピッと出てみる。


「もしもーー」


「しぃぢああああああああああああああああん!!!」


「わぁ!?」


音割れしている音量のデカさについスマホから耳を遠ざけた。

この後、スマホのマップを使ってなんとか母さんと合流して家へと帰った。


休日とは言えない様な、怒涛の一日だった。

読んでくださりありがとうございます!


なんとレビューを頂きました!グルタミンさんありがとうございます!

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