番外編「灰原家王様ゲーム」
やっと空いた時間が出来たので書いたのですよ。
そしたらあーら不思議、指が止まらないではありませんか!ヤバイヤバイ!なんだこれ!…まぁつまり何を言いたいかと言うとーー
茶番書くの大好き。
「王様ゲームッ!!!」
「イエーイ、ピースピース」
突然と霰さんがそう叫び、氷菓さんがキメ顔しちゃいそうな感じでノってくる。
僕達は呆然と二人を眺める。
「「………」」
そんな僕達を見てか、二人は一瞬だけ無言になりーー
「それじゃあルールを説明します!!」
「僕はキメ顔でそう言った」
お構いなしに続けるみたいだ。
おい、てかそこのキメ顔しちゃってる奴、僕のオタク魂に火をつけるから物真似はやめていただきたい。
意外にクオリティが高いせいで僕も物真似したくなっちゃったよ。
是非その声で鬼のお兄ちゃんと呼んでほしい。
「さて!ではここで、ざっくりルールを説明しようじゃないか!
ここに、私が用意した六本の箸があります。
それを皆で引いて、箸の先が赤色だった人が王様!一~五番までの数字を指定して命令する。命令内容はなんでもok!そして、王様の命令はーー」
「「「「「絶対!!!!」」」」」
僕以外の全員の目がギラつき、雄叫びを上げると、王様ゲームが始まった。
この時の僕は知らなかった。
あべこべ世界の王様ゲームが僕にとって、どんなものかを。
「それじゃ不正のないように、手の中で混ぜ混ぜ…さっ!引いておくれ!せーのっ!ーー」
霰さんが、拝むように箸を手の中で混ぜると、それを前に差し出し、皆同時に引いた。
「「「「「「王様だーれだ!」」」」」」
「私」
「クソ!一番手は氷菓姉かっ!」
どうやら氷菓さんが一番目の王様みたいだ。
さて、どんな命令をしてくるのか…正直、この人が何を考えているのかまったくと言っていい程わからない。
表情筋がちゃんと機能しているのはわかるのだが、その変化が小さいため、掴めないのだ。
正しくミステリアスガール。
なんか段々とこの人がどんな命令をするのかワクワクしてきたぞ!霰さんほど危険ではないだろうし。
すると、氷菓さんの口が開く。
「一番は今すぐコンビニに行ってコンドームとエロ本を買ってくる」
「「「「「ッ!!!?」」」」」
皆即座に自分の箸を確認する。
「…………………一番」
そう静かに呟いたのは…僕だった。
「氷菓!!これはあんまりよ!!しぃちゃんにこんな事させられる訳ないじゃない!!」
「そうだ!時雨にこんな事させられる訳がないだろう!それならわたしが変わりに行く!」
「そうだよ!こんなのお兄ちゃんがかわいそうだよ!」
三人は必死に僕を守ろうとしてくれている。
あぁ…これが家族の愛なんだ、素晴らしい…。
だがーー
「お姉ちゃん、晴、曇李、王様の命令は?」
氷菓さんがそう問うと、三人はガクンと肩を落とした。
「「「絶対…」」」
王様に、家族の愛は通じなかった。
チクショウ!て言うかよくもまぁそんな恥ずかしげもなく言えるもんだね!?あんた女の子でしょ!
……いやそうでした、ここあべこべ世界でしたね。
それにしてもこの人こんな清ました顔して相当な鬼畜だぞ…クソ…もう仕方ない、ここは覚悟を決めようじゃありませんか。
「…行ってくるよ」
「しぃちゃん…」
「お兄ちゃん…」
「すまない時雨…姉として不甲斐ない…」
僕は、愛する家族達を横目にコンビニへ向かうのだった。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄
 ̄
「買ってきたよ…」
「ん、お疲れ様」
どの口が…この人、いつか泣かす。
はぁ…もう嫌だ、いつも行ってるコンビニ、今日は佐々木さん(唯一仲のいい店員さん)はシフトを入れてないはずなのに、まさかのヘルプで入ってるとか…もうこれから行く度にあのときの羞恥心が芽生える気がする。
えぇい!もう気にするな!
「それじゃあ次行こう!!」
「おぉすごいねしぃくんは!先程エロ本とコンドームを買ったばかりの男の子とは思えないくらいいい顔付きをしているね!!」
「もう開き直ってますからね!」
あ、先に言っとくと、勿論この世界でのエロ本は野郎共の裸しか写ってないよ。
地獄だね!この世界エロ関連に関しては最悪だよ!
チクショウ!こうなったら絶対王様を引いてやる!そして氷菓さんをヒーヒー言わす様な命令をしてやる!!
「「「「「「王様だーれだ!」」」」」」
「あ、私ね」
お次に王様を引き当てたのは母さん。
…チッ…僕じゃないか。
まぁいいか、母さんなら安心出来る…。
「そ、それじゃあ三番が王様に告白!」
ま、まぁ許容できる範囲ではある。
それにしても母さんは可愛い命令をするなぁ…んで、僕の番号はーー
「さ、三番、僕だね」
僕でした。
「え!?本当に!?」
「う、うん…」
母さんは顔を赤くしながら頬を両手で抑える。
な、なんだろうか…すごく恥ずかしい…いやでもまぁ先程の命令に比べれば一億倍ましだ。
コホン、と咳を挟んで僕は母さんの前へ。
「そ、それじゃあお願いします」
母さんは緊張しながらこちらに顔を向けた。
さぁ行くぞ…僕の演技力に刮目せよ!!
「ズットマエカラスキダッタンダー」
「「「「………」」」」
やめて…そんな冷たい目で見ないで… もう私のライフはゼロよ…!
だってしょうがないじゃん!演技なんて学校のお遊戯会でしかしたことないんだもん!
ま、まぁ演技って言っても木の役ばっかだったけど…。
何か母さんに申し訳なーー
「はふぅ…しぃちゃんが私に好きって…好きって…ふへへ…ふへ…幸せ死すりゅぅ…♡」
くはないか、すごく嬉しそうだし。
さて、気を取り直して次に行こう。
そして、再び王様だーれだ!の合図で皆がくじを引く。
お次の王様はーー
「私だな!」
曇李姉さんである。
…姉さんの命令か、たぶんだけどね?
姉さんの今の脳内はーー
(とうとう私の番が来た!ふふふ…この時をどれだけ待ち望んでいたか…時雨にどんな命令をしてやろう…ふふふ…)
こんな感じだと思われる。
弟歴はまだ浅いけど、わかる。
だってこの人部屋に僕のポスターとか貼っちゃってるからね?勿論剥がしたけど。
「さぁ!それでは行くぞ!王様と四番が情熱的に抱き合う!!!」
姉さん結構妥協したな。
さて四番はーー
「ん、私」
まさかの氷菓さん。
「なっ!この流れならば確実に時雨だろう!?何故だっ!!?」
いやそんな事言われましても…引き運ですし…。
「さぁ曇李、こっちに来るがよろし」
「い、嫌だ!何故女同士でそんな情熱的に抱き合わなければならんのだ!!」
「一度下した王命に市民は絶対に従う、それが私達下々の役目」
「撤回だ!この王命をなかった事にする!」
「却下」
「いーーーーやーーーーー!」
そして、姉さんと氷菓さんは情熱的なホールドを見せた。
素晴らしきかな、百合の花が咲いたよ。
て言うか氷菓さんは何の抵抗もないのか、無表情でその場を切り抜けた。
果たしてあの人が嫌がる様な命令を下せるのだろうか。
さて、次行こうか。
目の保養もすんだ所で次の王様が決定。
「私だね!」
晴だ。
晴は、ん~、と唸りながら何を命令するか考えている。
考えている晴も可愛いなぁ…あぁ愛でたい、全力で愛でてやりたい。
ん、おい誰だ!今シスコンとか言った奴、当たり前でしょ?
すると、晴がようやく閃いたと言わんばかりの顔をして、言う。
「三番がこの王様ゲームが終わるまで語尾を『にゅ』にする!」
待って、これ地味に辛い奴。
さてこの羞恥心に耐え抜くのは一体誰なんだーー
「……僕が三番だにゅ」
「「「「「きゃわわ♡」」」」」
もはや誰得だにゅ…。
まさか晴がこんな的確に地味に嫌な命令をしてくるとは…Sの才能がありそうだにゅ。
てか皆さん僕への指名率高くない!?
実は裏で組んでたりしないよね!?
そんな疑惑を抱きながらも王様ゲームを続ける。
そして、とうとうあの人の元へ渡ってしまう。
王と言う、絶対なる強者の座が。
「お、私だねー」
霰さんがその玉座に座った。
そう、それはまるでさも当然かの様に。
そして、この瞬間、灰原霰と言う人間の細胞がフル稼働した。
全細胞が、喝采を上げている。
(さぁーー解放せよ…私のリミッター。
リミッター解除!!!
晴ちゃんが戻した箸の位置、そしてその瞬間に渡される箸達の一つ一つの揺らぎ、そこに加えられる私の手による重圧、軽く混ぜた箸があるのはこの左にあるこいつ。
つまり、今までの引く確率を計算すれば、この位置は断トツに引かれない。
もうこの時点から私の王様は決定していたのだよ。
更に、そこにしぃくんの番号、あれは確実に二番と見て間違いがない。
しぃくんがこれまでに引いている箸の位置の確率を炙り出すなど容易に可能なのだよ!
ふっーーエンディングが見えた!)
霰は、勝利を確信し、雄叫びを上げる。
「二番が!王様とぉおおおおおお!!
あっついディープキッス!!!!!!」
(ごめんねしぃくん!君のファーストキスの相手が私なのは嫌だろうけど、こうでもしないとお姉さん一生キスも出来ずに死んじゃうの!ふふふ…)
「さぁ二番は誰かな誰かな!?私とあっついディープキッスを交わそうじゃないかっ!」
(さぁしぃくん、大人しく手を上げなさい!)
その瞬間、手が上がった。
そう、上がったのだーー
ー氷菓の手がー
「……はあああぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!?!?」
霰は、驚愕した。
何故なら、それは上がるはずのない手だからだ。
霰の計算に置いて、何一つ狂いなどなかった。
全ての段取りが完璧だったと言えよう…だかしかし、その先に、その思考に追い付いた人物がたった一人居ることを忘れていたのだ。
灰原氷菓、自分の実の姉の恐ろしさに。
彼女程、灰原霰と言う人間の側に居たものは居ないのだ。
つまり、霰が何を考えているかなど全てお見通し…けれど、氷菓でも予想外なのはーー
「…うぷっ」
氷菓は口を抑えて吐き気を押さえ込む。
そう、まさかここまで強烈な命令をしてくるのは、我が妹ながら予想外だったのだ。
だが、まだわからないことがある。
そう、一体どうやってその二番の箸を手に入れたのか…霰は考え、そして辿り着いた。
(…っ!あの時、氷菓姉はすり替えたんだ…しぃくんの箸の位置を、氷菓姉もまた、しぃくんの箸を把握していた一人の人物…そして、氷菓姉ならば、誰にも、この私にもバレずにすり替えることなど容易…クッ…見事にしてやられた!)
「流石だよ、氷菓姉、今回は私の負け」
「霰こそ、よくここまで成長した」
二人は握手を交わす。
「さて、それじゃあそろそろ終わりにしよっか!もういい時間だしね」
「ん、またお腹が減ってきた」
と、二人は言い出してテーブルへと行こうとする。
勿論、そんなの容認される訳もなくーー
「「「「待て(にゅ)」」」」
「「…」」
四人に止められる。
「まだ、終わってないわよね?」
「そうだぞ、二人とも」
「まさか、逃げるわけないよね?お兄ちゃんにあんなことさせておいて」
「逃げるなんて、させないにゅ」
四人が二人を追い詰めて行く。
「ま、待って欲しいよ!流石にこんな命令は鬼畜すぎーー」
霰がこの反論をすれば、お決まりのあの台詞が返ってくる。
「「「「王様の命令は?」」」」
「「絶…対」」
この後、二人は濃厚なディープキスを交わした。
それはもう情熱的に、舌を絡ませ、唾液が伸び、吐息がその熱の暑さを増させた。
そして、それを続けること一分…二人は洗面所へ走って行き、口をキラキラさせたのだった。
…えっと…何て言うか…御馳走様です。
あべこべ世界の王様ゲームが、まさかこんなにも素晴らしい百合の花を咲かせるとは…えぇ本当にもう、自分満足です。
けど、一つだけ言わせて欲しい。
「一回も王様になれてないにゅ…」
自分の引き運の悪さに、とほほ、と嘆くしかない時雨だった。
ふぅ…調子に乗りすぎて、長くなってしまった。
もうこれ完全に自己満だな、うん…楽しめて頂けてればよいのですが…それでは、また次回!
次回は番外編「高坂拓斗が居なくなった世界」です!




