20「拒否権はありません!」
どうも、一ヶ月分のツケを返そうと頑張っている作者です。
三日連続更新…本当、毎日更新してる人達を尊敬せざるをえない…。
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クラスの自己紹介を終えて、この後すること…それは、帰宅です。
…いやまぁ何が言いたいかはわかるよ?
普通この後部活紹介とかさ、先生から説明とか入りそうなんだけどさ、どうやらそう言う行事は全て明日に廻しているらしい。
明日には新入生歓迎会と言うイベントが控えている、との事だ。
まぁつまり、今からすることは、帰宅一つのみ、なんだけどーー
「どうしようかなぁ」
僕は一つの小さな紙に目を向ける。
その紙には一言『校舎裏に来てください』と書いてある。
ちなみに、この紙を渡してきたのは、九重さんである。
例の顔をした後に、鞄からノートを出して、それをちぎり急いで書いてこちらに渡してきた紙がこれである。
正直、あのムッツリスケベちゃんが何を考えているのかわからないし、この世界の男子ならば確実に無視する案件だろう。
けれど、僕自身彼女の事が気にならない訳でもない。
関わらないでおこうと決意はしたものの、彼女から用があると言うなら、駆け寄ってみるのもありだと思うのだ。
「行ってみようかな」
そして僕は校舎裏へと向かった。
皆の視線を潜り抜けて、やっと到着する。
「ここでいいんだよね?」
校舎裏に着き、確認すると、そこには案の定と言うべきだろうか、彼女、九重さんは居た。
声を掛ける前に彼女の様子を伺う。
なんとなく用心をしときたい…。
見てみると、九重さんは俯きながら、ぶつぶつと何かを唱えている。
少し距離がある為、流石に内容までは聞き取れない。
よし、行こう。
「九重さん」
そう声を掛けると、九重さんばっとこちらを振り返りあたふたとする。
「えと、その、わざわざ御足労頂き誠にありがとうございます…この度は貴方様にお話があって呼んだ次第でございます」
うっわ!堅苦しっ!!
つい心の中でそう叫んでしまう。
まぁ今は触れないでおこう、それよりか本題の方が重要だ。
「それで、話って何かな?」
僕は微笑みながら聞く。
僕の人生経験から言わせて貰えば、基本笑っていれば愛想が良く見え、相手への印象もアップするので、相手が緊張とかしているときは微笑むことが重要だ。
これで少しは九重さんの緊張も解れるといいけど。
「その…あの、ですね…貴方に言わなければいけない事がありまして…だから、その…」
そもそもこっちを見てないので、僕の人生経験からの教訓は無駄になりました。
九重さんはただ下を見ながら、もじもじとする。
なんか段々予想がついてきたぞ。
これはあれだな、人生初の『告白イベント』と言う奴だな。
何故そんな確信を持てるのか、自意識過剰なキモオタ童貞がなに言ってたんだ、と、馬鹿にされるかも知れない。
だが考えて見て欲しい。
ここはあべこべ世界で、そして僕の容姿はMP全振り状態…そして、校舎裏に呼ばれ、二人っきりのこの状況。
うん、もう告白イベント以外考えられない。
どうしよう、めちゃくちゃ緊張してきた。
顔では平静を装おう僕だが、心臓はもうドクンドクン、早く脈打っている。
そして、九重さんはゆっくりと地べたに手をついた。
ん?地べたに手?
何だろうこのとても良く知っているポーズ。
あ、これは土下座だ。
よく知ってて当然だ、それにしても九重さんはいい土下座をする。
なかなかな謝罪の圧、そしてそれに加えての綺麗な姿勢、基本は抑えているね。
でも、僕だったらこの倍の圧を余裕で出せるけどね。
僕から言わせれば及第点ではあるけど、磨けばきっといい土下座になる。
彼女の将来に期待しよう。
おっと、つい土下座の感想を語ってしまった。
土下座評論家の血が騒いでしまったよ。
ん?てか何で九重さんは土下座をしてるんだ?
そして次の瞬間、九重さんは地べたに自分の頭を思いっきりぶつけ、叫んだ。
「痴漢してすみませんでしたあああああああああああああ!!!!」
…………痴漢されてた事実より、本当に自意識過剰なキモオタ童貞だった事の方がショックだよ…。
てか、痴漢してすみませんってことは、九重さんはあの羞恥溢れる僕のあの姿を間近で見たと…。
あ、どうしよう、めちゃくちゃ恥ずかしくなってきた。
てか今僕、確実に耳まで顔真っ赤だよ。
落ち着け、落ち着くんだ僕。
今は九重さんのおでこが地面と合体しそうな勢いで下げている頭を上げさせなくては。
「九重さん、とりあえず頭を上げてよ?
そんな状態じゃ話しずらいしさ」
「は、はい…」
九重さんはゆっくりと立ち上る。
やはり九重さんのおでこは土まみれだった。
振り払おうともしない九重さんを見て、僕はポケットからハンカチを出しーー
「動かないでね?」
「ひゃっい!!?」
九重さんのおでこをそっと拭いた。
すると、九重さんは変な声を上げて顔を真っ赤にする。
はは、なんか小動物を愛でてる見たいで可愛いなぁ…。
ついそんな感想を漏らす。
彼女があまりに、びくびくと震えたり、喜怒哀楽がはっきりしていてそんな風に捉えてしまったのだ。
大体この子がどんな子なのかわかってきた気がする。
この子は何処か僕と似ているのかも知れない。
周りとの関係に深入りせず、手前に置く僕と。
まぁ流石に九重さんの極端すぎるかもだけど、なんだか放っておけないな。
「はい、とれた」
「ありがとう…ございます…」
九重さんはおでこを擦りながら、震えた声でお礼を言う。
「どういたしまして」
微笑ましい彼女の姿に、僕の声も何処かふわふわしていた。
「…はっ!!そそそそそれよりかちちちちち痴漢の件についてなのですが!!!」
思い出した九重さんは一気に顔を真っ青にさせ、凄剣幕で迫ってくる。
さて、どうしようかな?
別に、僕は九重さんを怒っている訳じゃない。
むしろ、そう言うリスクがあるとわかっていながら普通車両に乗ってしまった僕の方が悪いだろう。
なにより九重さんはこんなにも勇気を振り絞って謝罪をしてくれたのだ。
それだけで許せると言うもの、けれど、九重さんの性格から言わせて貰えば、ここで僕が許すと言っただけじゃ九重さんは納得しないし、九重さん自身の不安も拭えない。
ん~…なら、この手で行ってみよう。
「九重さんは許されない事をしたよね?」
「っ!…はい」
僕が微笑んでそう言うと、九重さんの肩はビクッと動き、少し涙目になっている。
「加害者は被害者側の要望を絶対に飲むべきだと僕は思うんだ」
僕がそう言うと、九重さんは察したかの様に顔を下に伏せて小さく「その通りです…」と、答えた。
「それじゃ、僕からの要望はたった一つ、けど、これは永遠に続く要望だからね?」
「…はい、覚悟は出来てます」
それじゃ、その覚悟の程を見せてもらおうではないか!
そして、僕は右手を彼女の前に差し出して、言った。
「僕と、友達になってくれないかな?」
「………へ?」
「ん?いや違うか、この場合だと、友達になれ!が正解なのかな?」
「ま、待ってください!!そ、そんな事で…そんな、そんな事で許される様な事じゃーー」
「静粛に!これは命令です!拒否権はありまん!」
僕は途中で九重さんのいい文を一刀両断した。
「で、でもぉ…」
「でも、ではありません、決定事項なのです!なんたって、この要望は『永遠』だからね?」
イタズラ笑顔にそう言うと、九重さんは、大きく目を見開いて、大粒の涙をポタポタと溢した。
「うっ…ありがとうございます…本当に…」
「これからは友達なんだから、敬語も禁止、ちなみに、これも拒否権はないからね?」
「…うん!」
そう強く返事をした九重さんは、僕の手を握ったのだった。
こうして、僕は高校で初めての友達が出来た。
読んでくださいありがとうございます!
明日は更新しないと思います、流石に四日連続とか、執筆スピードが亀並みに遅い作者には無理です。(頑張ります)